第13話 雷馬
雨の中、慌ただしく動く人達がいる。
「しっかりと水を回収しろ!」
広く薄い木の板をソーラーパネルのように斜めに設置し、その下に壺を置き雨水を回収している。雨水回収用の壺がいくつも並ぶ。飲料水としては使わず、作物の水やりや家畜などに使うとか。そういえばこの国は水が有料だったな。国外から水を購入している。井戸もないし川も湖もない。水は非常に貴重、下に落ちていってしまうからね。そのため保存も効くお酒を飲む人が多い。魔物の中には水を蓄えていて、その水を飲料水とすることもできるが生息数は少数だそうだ。他と比べると不便な場所だが、魚はいつでも大量に捕る事ができる。食糧難とは無縁の国。この国が栄えたのは重気の海に大量にいる泳いでいる魚のおかげだ。特殊な狩りを堪能し旅を続ける。いくつもの浮島を乗り移り次は大きな浮島へ。
「見えてきた、王都だ」
大きな街だ、他の浮島と違い井戸まであるぞ、陸地が分厚いから水も貯まるのかな。宿を取り観光していると、狩り場にいる魚人の男が多数の同じく魚人の子どもたちの前で話をしているところに出会う。体が人間の体、ヒレや鱗があり、頭が魚の魚人。この国では魚人族の人をよく見る。重気は泳げるからね、風土的に合うのだろう。魚人族の男が重気の海に飛び込む。察するに彼は先生かな。見事な泳ぎで魚の後ろを取り、銛を突き刺す。襲ってくる魔獣も退治していった。陸に上がり魚人族の男は生徒たちに語りかける。
「行って来い。危険を感じたらすぐ陸に上がるんだぞ。では始め!」
生徒たちは一斉に海に飛び込んでいった。男は俺たちの近くへ来て休憩を。
「見事な泳ぎですね」
「よせやい、照れるぜ」
予想通り彼は先生をしているとのこと。ここは水中戦の練習に向いている。ここなら先生や魚、魔獣の動きを直接見ることができ、より詳しく教えることができるからだ。しかも安全。海の近くに住んでいるお金持ちの魚人の子はここへ習いに来るそう。重気の海で慣らしてからから地元の海へ。王都に大きな学園がある。観光を終え、ギルドのテーブルの上に地図を広げ、今後の予定を話し合う。現在地はこの国の真中付近。竜人王が言っていた強いという種族はここから南下した浮島に生息する。いくつか浮島を乗り継いでいくと目的地までに乗っていける浮島がないことがわかる。情報収集をすると、どうやら後は飛んでいくか、乗り物を調達して移動するしかない。
「秘境に住んでいる粗野で短気な奴ら」
散々な言われよう。彼らは他の人達との交流は避けてきたようだ。ここからは近い。幸い二人共飛べるから問題はなさそうだ。更に細かい地図をもらうが正直役に立たなかった。作られた時期が古く、浮島が流れてしまっていた。彼らの居場所の浮島は山脈にくっついているためそれだけはわかる。地図としては十分だな。適当な浮島に寄り休憩を挟みつつ乗り換えながら目的地を目指す。陸地が見えてきた、目的地の入り口付近。そこに槍を持った羽と角を持つ男二人が槍を交差し我々の侵入を防ぐ。門番かな。
「ここから先は雷馬人族の居住地だ。用のない者は去れ」
歓迎ムードではないな。預かってきた手紙を取り出す。
「様々な事情がありまして、あなた方の力をおかしいただきたく。これは竜人王からの紹介状です」
「ふむ、ここで待っていろ」
手紙を持ち奥へ飛んでいく門番の人。もう一人は相変わらずこちらを警戒している。少しして門番が帰ってきた。
「通っていいぞ。しかし余計な行動はするな」
こうして彼らの村に入ることを許され村へ。村の中には人がおらず、皆家の中に入って警戒しているようだった。徹底しているな。大きな建物に到着。奥には歳のいったおじいさんがいた。
「長老のアジボだ。ふん、面倒なことを押し付けおって」
髭を触りながら不機嫌な長老。どうしたものかと考えているようだ。
「今厄介な魔獣がいてな。お前さん方、退治してもらえんか」
「わかりました」
今日はもう遅いと長老の家で一泊。翌日、魔獣が現れる場所を教えられ出発。向かいながらおそらくは力を試すためだろうとテラ。STG画面にすると後方に雷馬人がついてきているのがわかった。魔獣は簡単に倒せた。そのまま長老宅へ帰宅。少々驚いた様子の長老、明日まで待機していてくれと一日待つことになった。翌日長老に呼び出される。
「この子を託そう」
「アイエスです、よろしくお願いします」
物腰柔らかな女の子が長老の隣りにいた。冒険者でもあり、魔法使い、レベルはカンスト。外に出てみたいという願望があったため彼女が選ばれたとか。人払いをしてもらい俺の力を説明する。髭をこすりながら頷く長老。
「力を見せてもらえるかな」
「わかりました」
アイエスを連れ外に出て獣化してもらう、天馬の姿に変身。角から電撃を放つ、空を駆ける生物が彼らの正体。乗り込み飛び立つ。角に電気をまとわせ、放出。一直線に伸び、幅は狭いがそこそこの射程がある。威力は弱め、持続時間はそこそこ。球数は何百発も撃てるようで実質無限。一度地上に降り契約をする。
「力が溢れてきます!」
電撃の威力が上がった。喜んでいるアイエス。彼女だけは他の人達と違ってこちらに嫌悪の感情をぶつけてこない。やりやすくて助かる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます