第8話 エマの力

仲間を増やし旅を再開。近くに街があるようなので寄っていく。街がある場合はできるだけ寄っていく。面白い情報があるかもしれない。宿を取り観光。平和な街なようだ。そういえばまだ冒険者ギルドで仕事を受けたことがなかった。テラも王の配下達と狩りをしてレベルを上げていて冒険者ギルドを使ったことがない。エマが詳しいからギルドを利用してお金を稼ごうという話になった。


「冒険者なのにギルド使ったことないとか変わった人達だなー」

「金持ちのお嬢様とその友達といったところだ。世間を知るための旅をしている」


一応嘘はついていない。もう少し仲良くなったら少しずつ情報を出していく予定。テラが王女様、俺が特殊な能力を持っていることについては慎重に。


「なるほど訳ありの旅か。妙に仲が良いし。いいんじゃないかな。ンフフ」


エマが面白い顔をしている。これは勘違いをしているな。まあいずれわかることだ、放っておこう。ギルドの中へ、内部にはたくさんの冒険者がいた。大きな掲示板があるところまで移動。ここに貼ってある紙に仕事の依頼が書かれている。これを受付へ運んで仕事を受ける、依頼が完了したら受付に行き報酬を受け取る、という流れ。探しものから魔獣退治まで依頼内容は様々。この付近は強い魔獣がいないから魔獣退治は安めだなとつぶやくエマ。


「私も冒険者家業を知り尽くしているわけじゃないけどね。この大陸の東側、人間の領地で主に活動していたぐらいだから」


一人でも余裕の強さと報酬が高い順に魔獣退治の張り紙を剥がしていく。五枚持って受付に出す。我々三人は冒険者カード出し依頼を受ける。魔獣がいる場所へと向かう。さっさと片付けようと魔獣がいる場場所まで飛んでいくことにする。狩り場に到着。目当ての魔獣を見つけ出した。俺は後ろに下がり、テラは拳、エマは剣を構える。エマに飛びかかっていく魔獣。角による突き刺し攻撃をかわしながら凄まじい早さで斬りつける。


「ギャワッ!」


魔獣が着地する頃には解体がほぼ終わっている状態だった。剣の腕も立つのか。狩りは順調に進む。だが一種、遠くから飛び道具による攻撃、近づくと逃げるという面倒な魔獣が出現。エマが燃え上がる炎の羽を取り出し投げつける。心臓に命中、倒すことに成功。魔獣達を短時間で片付けた。この厄介な相手も見事対処。狩りが終わり街に帰って精算。多額の報酬を得ることが出来た。うおお、一般人の給金の数カ月分はあるか? やっぱり冒険者って儲かるんだな。命がけだから当然かも知れないけど。しばらく金策は魔獣退治をしておけばいいな。ある程度稼いでいこうということになりこの街にかとどまることにする。こうして何日か経ったある日。ギルドのテーブルに着き休憩していると、職員たちが慌ただしく動き出す姿を目撃。見ていると掲示板に魔獣退治の依頼紙を貼り出した。退治対象はゴブリン。話を聞くと街の近くの廃村に集落を作り出したとのこと。彼らは人間を襲い食べる。すでに犠牲者が何人か出てしまったようだ。一体一体は強くないが数が多い。早めに片付けないと規模が拡大し、強力な個体が現れることもある難敵。冒険者達が仲間を募りだしている。ここは我々も協力しようかと話しをする。


「ああ、私一人で片付けられる。無理のないやり方でね」


もし一体ずつ戦うことになるとゴブリンが逃げ出さないかなと聞く。ゴブリンは数が多い。逃げ出したゴブリンが他の場所に村を作り出したらほぼ意味ないからね。獣化して一気に倒すから問題ないとエマ。そこまで言うなら任せてみよう。ゴブリン退治を受け、獣化し俺を乗せゴブリンの村へ。村の上空に到着。


「そこから見てて」


攻撃を開始するエマ。炎の羽を多数発射、爆撃していく。ゴブリン達も槍や弓を持ち反撃するが攻撃がぬるく簡単に回避できる。そしてまた爆撃。それにしても攻撃が尽きない。いつまで羽の攻撃ができるのだろう。


「それなら無限に攻撃できるよ」


そうか無限か。あの余裕の発言の意味がわかった。弾切れを起こしてゴブリンを逃がすことを心配していたが杞憂に終わったようだ。攻撃は低空飛行の地面に近い高度から。射程はそこまで長くない。それでも無限弾なら楽勝か。普通のゴブリンよりも二周りは大きなゴブリンが家屋から出てくる。大きな槍を持ちこちらに投げつけてきた。だがそんな遅い攻撃では撃ち落とすことは不可能。羽を撃っては離れを三度繰り返し、大型ゴブリンを倒すことに成功。他ゴブリン達はすでに全滅。余裕の勝利だった。こっそりテラについてきてもらっていた。念の為にね。能力的には射程が短かく威力は弱め、無限の火羽を発射できる。ふむ、ここまで力を見せてもらったし、人柄的にも問題はない。我々の事情を話そう。街に戻り話しの場を設ける。エマにテラは竜の王女、俺は特殊な力を持っているため竜人王の加護を得て現在修行中、見聞を広めるための旅をしていると説明。納得している様子の彼女。


「高貴な出の人だとは思ってたけど王女様だったか。かけお、いやなんでもない」

「今まで通りでいいからな」

「わかった」


彼女と契約をする。こうして力を見せ合い真なる意味で仲間になったエマ。彼女とは仲良く出来そうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る