第6話 魔獣博士
「グスプだ。始めてからまだ数年、長期にわたって魔獣を調べているわけではないから博士と呼ばれるのは恥ずかしいがな」
羊の獣人、元冒険者の男性。魔獣を調べれば戦いやすくなったり、素材が得られるのではと魔獣について研究するようになった人。竜人の国は多種多様、多数の魔獣が出現する。ここで研究するようになり様々なものを発見して博士と呼ばれるようになった。それにしてもモコモコの毛が生えている。今すぐもふもふしたいという衝動に駆られるが、相手は初対面の成人男性、色々とアウトだから我慢した。
「魔獣を仲間に? そういったクラスは聞いたことがないね。ただ一部の人達が魔獣を狩りに使ったりしているという噂は聞いたことがある」
一応使役している人はいそうだな。だがかなりレアなことのようだ。もし使役できる魔獣を捕らえたら送ってくれというグスプ。街の外にある研究施設で飼うとのこと。
「僕も独自に探してみよう。敵の魔獣を仲間にする視点は面白いな。たまに寄ってくれ、もしかしたら魔獣の仲間が増えているかも」
話しを終え、城に戻る。王に玉の制作を依頼。これで戦闘準備は終わりか。一回国に帰って旅用のキャンプ用品を用意しないとな。王と王女と俺、三人集まり話をする。
「まずはこの大陸を一周してくるといい。それと私が知っている人達にこの大陸に強力な力を持った種族がいる。仲が良いというわけではないが協力してもらえるよう手紙を書いておく」
「わかりました」
竜人国はこの大陸の南西側にある。俺が住んでいる人間が多く住む国グアナタは南東。グアナタから大陸の北東、北側、北西を経由してぐるりと一周してこいとのこと。王に帰って旅の準備をすることを伝える。玉が完成したら王女にもたせそちらに送ると王。
「それから王都襲撃の件なのだが」
竜人達が見張っていたが急に巨大魔獣達が城近くに現れた。出現付近を調べると巨大な魔法陣を発見。この魔法陣から魔獣が現れたと思われるが、魔獣を魔法陣を使って召喚という技術は世界のどこにも存在しないという。しかも巨大魔獣の召喚。対策としては地上も警戒するようにすれば済む話ではあるが、犯人はもちろんその目的も現在わかっていない。特に仲の悪い国はなし。攻撃的な国は存在するが襲った後に動きがまったくなかったことから今回は彼らではなさそう。国を襲うような奴らが野に放たれているというのは怖いが現状はどうしようもないか。バーストツリーはたまたま鉢合わせただけのようだ。付近に魔法陣は存在しなかった。こちらは運がなかったな。
「では王様、グアナタに帰ります」
翌日帰宅。帰りも竜人達が送ってくれた。さて、準備するか。俺は道具屋の息子。道具屋はキャンプ屋といっていいほどキャンプ用品を多数取り扱っている。こちらに関してはプロだ。さあ王女をもてなす準備をするぞ。こうして用意をしながら日にちが経過。
「そろそろかな」
王女がこちらに来る頃。旅に出る前に能力についての情報をまとめておこう。
・戦闘は縦、横、3Dの三画面を選べる
・ボムが使える
・かすることでボムゲージを溜められる
・契約した仲間、魔獣を収納できる
・HP制、HP0になると死亡
・レベル制、上がると能力が開放されることがある
こんなところか。それから二日。空に見覚えがあるドラゴンの姿が。
「来た来た」
王女が街に到着。王達一行も来ているがお忍びのため目立たない格好をしている。街に一泊して翌日必要な物資の買い足し、旅の打ち合わせをする。そして昼食を食べてから出発した。いよいよ旅が始まった。街を少し出たところに王がいた。会釈をして街道を進む。二人共多めの荷物を持っている。俺はキャンプ用、王女は食事用の荷物。とはいえ彼女は俺よりも力持ちだ。軽々と運んでいる。
「そうだ、長く旅をする仲間になったんだ、これからは敬語はなしだ。テラと呼んでくれ」
「わかったよテラ」
にこやかに笑うテラ。会話をしながら街道を歩いていると、森に囲まれた道が見えてきた。ここは少々魔獣が出やすい。そう考えていると伸びた草から魔獣が飛び出してきた。早速お出ましか。任せろと荷物を下ろし構えるテラ。飛び上がり彼女に噛みつこうとする魔獣、その口の中めがけて拳を放つ。頭部が吹き飛び絶命。それはそうか、レベルカンストだからな。付近に生息するの魔獣は弱い。それでも俺は勝てないけど。
「あの時死なせはしないと私を守ってくれたな。今度は私がシンを守る番だ」
「はは、心強いよ」
先程まで複数の魔獣の気配がしていたのだがそれがすべて無くなっていた。この凄惨な死体を見ればどんな魔獣も襲いたくはなくなる。倒した魔獣を解体する。手慣れたナイフさばきで魔獣を切り刻む。専門ではないが魔獣から取れる道具はかなり多い。そのため解体の練習は欠かさずやってきた。近場の魔獣の解体なら問題なくできる。うまそうな肉だ、今晩のご飯だな、袋に入れ運ぶ。森の街道を抜け大きな街道に出る。ここからはかなり安全な場所。
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