第5話 ボム
練習場付近に到着。一旦降りてステータス画面を確認。レベルが表示されている。STGとしては珍しいタイプだ。現在レベル1、経験値が表示されているな。経験値が0ではなくそこそこ入っている、バーストツリーを倒したからか。頑張ればレベルが上がりそうだ。旅立前に上げておきたいところ。圧縮玉が一つ使えると書かれている。ゴルフボール位の大きさ、宝石がついていて中は空洞の金属球。契約した者は中に収納する事ができる。便利だが契約が必要なのか。えーっと契約の方法は。手を取り文章を読んで誓わせるだけ。難しくはないな。圧縮玉は作る必要がある。金属と宝石が必要。どちらも高価だが一般に出回っている物だ。王に頼んでみるか。
「やはりあるか、STGならこいつがなくちゃな」
ゲージを溜め、溜まりきったら広範囲魔法攻撃と無敵の魔法障壁を同時に使用する魔法結界を使用可能。いわゆるボム。ゲージは時間経過で貯まる。もう一つやり方があり敵の弾からエネルギーをかすめ取る方法がある。薄い魔法の膜を張り、その膜に敵の弾をかすらせる。試してみたい、しかしこれも契約が必要。契約数の上限はなさそうだ、王女様に頼んでみるか。
「王女様、試してみたいことがあるんですが、それには契約が必要なんですよ」
「構わんぞ」
人間形態に戻ってもらい王女の手を取り文章を読み誓わせる。お互いの手が発光、契約成立。ドラゴン化して乗り魔法の膜を張ってみる。幅はこぶし一つ分くらい。ここに敵弾をかすらせるわけか、結構難かしいな。無理のない範囲で試すそう。ゲージはすでに限界まで溜まっている。そうか、竜人族に乗って移動したからか。試し打ちをしてから、今度はかすりゲージ溜めに挑戦かな。
「準備が整いました、向かってください」
魔獣が生息するところへ向かう。弱い魔獣が生息する場所。付近を飛行していると魔獣が多数発生しこちらに向かってくる。ボムを試してみよう。
「魔法結界」
魔法障壁が周りに展開、同時に光の魔法が広範囲に広がるように発射、魔獣達を一掃した。ほー、すごいと王女。続けてかすりの練習。王女に説明、了承してもらった。魔獣から弾丸が発射された。これを翼の先端の膜にかすらせる。すると微妙にゲージが増える。意外と余裕はありそうだ。ただ、かすりをしたとしてもゲージを貯めるのには時間がかかりそう。主力武器ではなくあくまで緊急回避用、STGのボムと同じ使い方だな。
「そうだ、獣化中は冒険者のクラスの技の使用出来ないですよね」
「出来ない」
使えたとしても獣化して殴ったほうが強いとか。獣化してもらっての運用が主になるから、クラスのことは忘れてもよさそう。後はブレスを3発放ち今日は終了。発着所へ戻る。
「王女様!」
発着場ではちょっとした騒ぎになっていた。なんとなく察しはついた。王、王女、俺の三人で話の場が持たれた。
「旅は危険なんだ。強ければ大丈夫というわけではない」
「嫌だ、ついていく」
どこからか俺が旅に出るという情報を入手し、同行しようと画策していたようだ。ちなみに彼女は冒険者でもありレベルはカンスト、クラスは格闘家。レベル上げはこの国だけでおこなったようだ。この世界ではカンストが早い。5年も戦い続ければカンストする。強さは問題ないが世の中悪いやつも多いし、搦手で攻撃を仕掛けてくる相手もいる。そこを心配しているのだろう。個人的にはどちらでもいいが、彼女は王女様だ。旅に同行させるのはね。それにしても何故ここまでして旅に出たいのだろう。ふと催し物中の態度を思い出す。そうか、退屈に嫌気が差して冒険をしたくなったのか。と、そこへお婆さんやってきた。
「テラも成人したんじゃ、好きなようにやらせよ」
「しかし」
婆さんはテラの味方か。そして王に近寄り耳元でささやく。
(世界が滅びるくらいの危機が訪れるのならば、我々の近くにいるよりも彼の近くにいたほうが安全じゃろうて)
「……わかった、行って来いテラ」
「やった!」
王が陥落、説得完了。色々問題はあるけど本人が行きたがっているのならいいか。こちらに確認を取ってくる。大丈夫だと返事をする。
(ほっほっほ、鈍い男だねぇ。テラ頑張んな)
圧縮玉の件を伝えた。すぐに作ってくれるようだ。もう少し訓練を続けることを王に話す。こうして明日からも王女と一緒に訓練をすることになった。余った時間は王女が好きな料理を覚えたり、街をぶらついたり、王女と話をしたり。数日戦闘を繰り返し、レベルが2に上った。契約した魔獣を小さな玉にいれ持ち運びができる魔獣玉が使えるようになった。いやそもそも魔獣って使役できるのか? 王女に聞くと私にはわからないが魔獣博士という人が魔獣に詳しいからなにか知っているかもとのこと。後で聞いてみよう。圧縮玉が二つ使えるようになった。レベルが上がると使用できる個数が増えるわけか。なら旅立つ前に複数作ってもらおう。ついでに魔獣玉も。訓練を終え城に帰る。街に住むという魔獣博士の元へと向かった。
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