第4話 神の眼
お婆さんはどういった方なのだろうと考えていると、王が人払いを兵士に命じた。兵士たちは外に出て王とお婆さんと俺だけに。
「よくぞ来てくれた。娘を救ってくれてありがとう。それともう一つ話があってな」
「話とは?」
「シン殿、お主のことじゃよ」
彼女は語り部の長。言い伝えを守り続けてきた者だという。そしてその言い伝えとは。
「神の眼を持つ者が現れしとき世界は混沌に包まれいずれ滅びるだろう。この言い伝えは王と語り部の長だけが語り継いできたものだ」
娘を救ってもらってありがたいが、あの状態から助かるのは正直おかしい、それこそ神がかり的な力を得た者でないと乗り越えられない状況だったはず、心当たりはないかと王に尋ねられる。心当たりがありすぎる。この神の眼ってのはSTG画面のことだろうな。普通はこんな見方はできない。それにしてもなんて言い伝えだ。これでは俺が世界を崩壊へ導く者みたいじゃないか。しかし言い逃れは難しそうだ。結果王女を救ったときに普通では考えられないおかしな動きをしてしまったからな。仕方がない、ここは正直に話すか。転生者なのはまだ秘密にするけど。彼女に乗ったときに能力が発現したこと、俺の頭の中で起こったことを話した。王とお婆さんが顔を見合わせる。悟ったように頷くお婆さん。
「なるほど、上空から見る視点か。まさに神の眼だな」
これからどうなるのだろうと心配していると、大丈夫といった様子で身振り手振りをする王。
「悪人ならわざわざ自分の身を危険に置いてまでテラを助けないだろう」
どうやら俺が首謀者というよりも、現れたときに世界に異変が起きるといった捉え方をしているようだ。最近は魔獣が増え討伐が大変、世界がすでにおかしくなってきていると言う王。
「そこでだ、その力世界を救うために使ってみないか」
そう提案する王。力をつけいずれ来る世界の脅威と戦ってもらいたい、世界を旅し見聞を広げながら仲間を集め力をつけていってくれ、とのこと。そのために協力は惜しまない、ただ組織が巨大になる可能性も考え最終的に自分達で運営、維持できるように作り上げていってもらいたい。話が大きくなってきた。世界を救えとはね。そうだな、もし力があるのなら指を咥えて世界の崩壊を見ているよりはあらがいたい。俺には戦う力がありそうだ。王の提案を飲んだ。まず手始めに急すぎて前回試せなかったことを訓練しながら試していきたいな。王に戦闘訓練の場所と今後一緒に戦ってもらえる竜の戦士1人を所望する。
「わかった、用意しよう」
それから冒険者ギルドを使えるように冒険者カードを作ってもらえないか聞く。能力が無くても特例があり作れたはず。可能だと答える王。カードがあると金策がしやすい。他何かあったら言って来いと、驚かすようなことをしてすまなかったと詫びをし場所を移動。俺は兵士の人の後についていく。
「オババ、どう見る」
「隠し事をしているのは間違いないじゃろうな」
「やはり」
「神の眼の説明がうますぎるのぉ。あれではまるで経験がある言い方じゃ。しかし悪人ではなさそうだ、神が遣わした者と考えるのが妥当じゃろうて」
部屋では王女が待っていた。もう怪我は癒えているようだ。竜族秘伝の温泉があるのだとか。
「あのときは助かった。好きなだけ食べて飲んでくれ」
「遠慮せずいただきます!」
こうして宴が始まる。料理とお酒が本当に美味しい。今後これ以上はないかもと調子に乗って完全に飲みすぎた、酔いつぶれてその場に寝てしまう。
「もう飲めない……、あれ?」
翌日、頭痛とともに目が覚める。ここはベッドの上、誰かが運んでくれたのだろう。やってしまったな、後で謝らなくては。頭をおさえながら手紙を書く。帰宅が遅くなると家に報告しなくてはね。弟が成長して手伝いをしているから問題はないだろう。書き終えると、扉をノックする音が聞こえた。
「シン様、体調はいかがですか、お入りしてもよろしいですか?」
中に入っていいか確認してきた。どうぞと返事をする。メイドらしき人が食事を運んできてくれた。飲み過ぎに効くという食べ物を出してくれた。食後着替えて街に出る。この日は竜の街を観光。城に戻り食事をし、寝て一日が終わる。翌日も観光。帰ってくると戦士の準備が整ったとメイドさんが知らせてくれた。明日の朝から訓練をすると伝えてもらう。すぐに連絡が来て発着場で待ち合わせということに決まる。次の日、発着場へ。おや、王女様がいるな、これから公務だろうか。挨拶をし人を待つ。そういえば相手を知らない。見つけてくれるだろうから問題ないか。
「何をぼけっとしている、いくぞシン」
王女に話しかけられる。ええっ、お相手は王女様!? 変身して待っている。一緒に戦ってくれる戦士が来るかと思っていたけど。頼んでからそんなに日が経っていないからね、今調整中なのかも。まあ今日は訓練だから誰であろうと問題はない。わかりましたと彼女に乗り込む。そして飛び立った。
「シン殿ー、いらっしゃいますか。あれ、まだお城かな?」
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