第3話 復活
声は遅れる可能性がある、もっと直接動かせる方法をお互い考える。それならと背びれの骨を上げるテラ。普段は使わない退化してしまった羽のようだ。形状は操縦桿に似ている。見る画面を選ぶ。ほぼ同じ高度に袋がある。高低差を考える必要はなさそうだ、縦画面にしよう、この画面は前後左右を見やすい。ブレス攻撃は敵の種弾を破壊できる。壊せるタイプの敵弾だな。それからブレス攻撃の射程は短い。ここから敵本体には届かない。先程攻撃したとき射程は把握した。攻撃持続時間も覚えた。最大三発放つことができる、一発撃ったから残り二発。攻撃力が高く、一撃でバーストツリーを倒せるようだ。敵弾をかいくぐり、接近してブレス攻撃。勝機が見えてきた。
「いくぞ!」
「ああ」
種が入った袋が多数あるところへ突っ込んでいく。袋が少ない場所があるからそこを攻めないのかと聞かれたが、左右に多数の袋があり、それが破裂した場合、左右からの激しい攻撃をかわすのは俺でも難しいとテラに説明、多数の袋がある場所に近づくと袋の破裂が始まる。連鎖するように多数の袋が破裂、種子の弾丸が俺達を襲う。後方に飛びながらかわす。この状況、よくあったな。教えてくれる先生達は復活後の弱い状態からでも攻略出来て一人前と語っていた。この言葉には余すこと無くSTGを楽しめという意味が含まれている。まさか実際似た場面に遭遇するとは思わなかったけど。先生達ならそうだな、羨ましがりそうだ。
(この男、こんな状況なのに笑っている。狂っているのか。しかしあれから一撃も被弾してしない。一体何が起こっているのだ)
種弾が雨のように降り注ぐが余裕をもって回避できている。感度は良好、完全に彼女と同期している。STGをやり続けて、ある日機体に乗ったかの様な感覚があったあの時のように。俺は今テラだと言っていいほど。そう、今俺はドラゴンになって飛んでいる。
「ここからが勝負どころ」
袋の3分の2ほどの弾をかわした。この先は密度がさらに濃い。しかしここまできたのなら。転じて前進、前に飛びながら氷のブレスを放つ。一転攻勢、種子弾をかき消しながら進み、ついに奴の懐まで近づいた。危機を感じ逃げようとするバーストツリー。だがもう遅い、射程圏内だ。
「もらった!」
ブレスを放つテラ。体の半分が凍り動きが止まる。そして目の光が消えその場に倒れた。こうしてバーストツリーを倒すことに成功。勝利した俺達は地上に降り立つ。変身が解けてその場に倒れるテラ。ひどい怪我だ。患部に軟膏を塗る。ポーションのような即効性の物はないが当然怪我に効く薬はある。
「まさか生き残れるとは思わなかった」
「もう大丈夫ですよ」
「恐ろしくもあり頼もしくもある、よくわからんやつだ」
言葉の意味はいまいちわからなかったが2人とも生き残った、それでいいじゃないか。竜人王がこちらへ飛んできた。とても心配している様子だ。生きているのを確認すると安堵の息をついた。
「感謝する。いずれ改めてお礼をさせてくれ」
テラを抱えると城に向かって飛んでいった。俺も後から来た竜人に乗せてもらい街に帰った。空から王都を見る、崩れたのは王城だけ、街はほぼ無傷。翌日からはまた普通の生活に戻る。
「あれから結構経ったな、王女様は元気だろうか」
王都襲撃から15日。城は原型をとどめていないが、街はもう元通りになっていた。テラから降りた後はいつもどおりの一般人、STGの画面が表示されることがなかった。いわゆる乗り物、機体に乗らないと発動しないようだ。他、試しに馬に乗ったが表示はされなかった。攻撃能力を持つ乗り物だけ能力が使えるのだろう。
「野宿用品見せてくれ」
「奥にあります」
俺は現在店で仕事中。接客を済ませ、商品を陳列する。並べ終え伝票を確認していると武装した竜人族の男が店に入ってきた。
「シン様、竜人王様がぜひテラ王女の命を救ったあなたに感謝の宴を催したいとのことです。竜人の国に来ていただけませんか」
人数は三人、王、王女、俺で飲んで食べようとの話だった。人が多いほど気を使うからな。とても気が利く王様だ。
「わかりました、行きましょう」
親に話をして出かけることにした。王様と飲み会なのは伝えていない。驚かせてしまうからね。ここから竜人の国へはかなりの距離がある。移動に関しては竜人が乗せていってくれるようだ。しかもリレー形式で俺を運ぶ。各街まで移動、交代して俺を乗せ飛ぶ、それを繰り返す。準備を終え、翌日の朝、街を出る。
「お忘れ物はございませんね? では出発します」
ドラゴン化した竜人に乗り空の旅へ。頭の中にSTGの画面が浮かぶ。聞くと炎のブレスを吐き出せるとか。やはり能力発動は戦闘能力を有していることが条件だな。旅は順調、途中何度か街に泊まりあっという間に竜人国の王都に到着。
「お手数ですがここからは徒歩になります」
街に入り城へ向かう。人間の国とは違う街並み、見ていて楽しい。そして竜人の国だけあって多数の竜人達が空を飛んでいる。城に到着。高い位置に城があり、街を一望できる。いい景色だ。初めて来たけど人間の国にはない幻想的な雰囲気を味わえた。城の内部に入る。大きな城だ、変身時は人間よりも大きいからこの巨大な城になっているのかな。緊急時に変身し飛んで移動しても渋滞を起こしそうにない。
「こちらでお待ち下さい」
客間に通され待つことに。少しすると王とかなり歳のいった竜人のお婆さんが入ってきた。
「竜人王レギスだ」
「バダですじゃ」
「シンです、ご招待いただきありがとうございます」
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