第3章 第3話-2

転生g@me

第3章(STAGE3) 仮想の生活


3.攻略クリア


<CB>本社 副社長オフィス

「た…大変です、社長が…」

 晃司の部屋に、一人の社員が慌てて入室してきた。

「社長がどうしたんだ?」

「とにかく、テレビかネットニュースを見て下さい!」

 晃司は険しい表情のまま、部屋に設置されたテレビを点けた。すると…


[…VR技術を扱うIT企業 <VERS>の代表取締役が脱税・横領容疑で逮捕されました…]

 晃司はニュース速報を目にして、さすがに冷静さを保つことができなかった。<VERS>は<CB>と業務提携を結ぶ予定の企業である。

 偶然にも、<CB>社長を務める伸郎は、代表取締役の崇文たかふみと商談中で、逮捕現場にいた。


<CB>の社員や関係者は、各フロアに設置されたテレビ画面に釘付け状態で、社内全体に異様な空気が流れていた。

 ただ、<VERS>の悪行は脱税だけではない。当社の出資者の告発で不正取引が発覚、取引先、関連企業とのトラブルも多かった。

 また、崇文は社内での評判も悪く、部下に対するハラスメント行為は頻繁で、業績悪化を隠す暗黒ブラック企業だった。

〝叩けば埃が出る〟実は、<CB>との業務提携にも裏があり、崇文の本来の目的は、<CB>を吸収することだった。彼は〝乗っ取り屋〟として恐れられていたが、終止符が打たれるのであった。


 なお、伸郎は検察の事情聴取を受けるなどして、無事に解放された。

<CB>は、晃司の嫌な予感が的中して、ひとまず危機を免れたが、まだ安心はできなかった。


<CB>は一大プロジェクトが白紙になったことで、意欲を失いつつあった。そして、さらに当社は窮地に追い込まれる。

<CB>が開発、販売されたゲームコンテンツの売れ行きが悪くなっていったのだ。

 原因はゲーム内容のマンネリ化、商品制作の停滞など。次第に会社側と作り手側との間に深い溝が生じて、<CB>は行き詰っていた。よって、当社は低迷期を迎える結果になって…


「お疲れ様でした~、部長、今夜どうします?」

「悪い、今夜はまっすぐ帰るよ」

 藤雄は博行の誘いを断って、独り退社した。


「………」

 藤雄は思い詰めた表情を浮かべて、帰りの電車に乗り込んで帰路に就くのだが…


「よう、久しぶりだな~」

「わ……急に出てくるな、びっくりするだろが!」

 藤雄は自宅最寄り駅近くで、ばったりザゼルと出会った。


「この世界には慣れた?よくできているだろう?」

「ああ、まるで現実みたいだ、今日もいろいろあって疲れたよ」

作られたゲームの世界でも波あり谷ありってことさ…実感したようだね」

「何で今頃になって出てきた?僕はどうなる?」

「そのことなんだけど…」

 藤雄が質問すると、ザゼルはらしくない表情を浮かべた。二人は近くの公園で話の続きをした。


「…で、何時いつ、この世界から出られる?クリアできそうか?」

「結論を言うと、クリアできる可能性が高い、君は着実に成長レベルアップしているよ」

「そうか、もう戻れるんだな?」

 ザゼルは藤雄の質問に対して、首を縦に振らなかった。


「話はちゃんと聞いた方が良いよ、君は勤め先の救世主になるよ」

「僕がそんな立場ポジションに?」

「先の話だ…人を育てるのは大変だからね」

「…ゲームクリエイター発掘の企画か、もう気が遠くなるよ」

「実は…最短でクリアする方法があるんだけど…」

 その時、ザゼルは意味深な発言をして、藤雄は聞き逃さなかった。


「…早く教えろ、嘘じゃないだろうな?」

「勿論、冗談は言うが嘘はつかないよ、ただ、今までと違い…特殊で相当の覚悟が必要だ、引き受けるかい?」

 藤雄は静かに頷いて、ザゼルの話を聞く体勢を取った。

「…まさか、死ぬ恐れがあるとか?」

「命の保証はあるけど…決断に時間が要るか?」

「いや、現実の世界に戻れるなら、何でもやるよ」

 ザゼルは藤雄の返事を耳にすると、様子が一変して、何かの力を発動させた。すると、二人の周りの風景が消えていき…


「ここは…?」

 気づけば、藤雄たちは別の場所に移動していた。ザゼルは何を企んでいるのか、藤雄の大きな選択ラストゲームが迫っていた。


転生g@me 第3章 完

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