第3章 第3話-1

転生g@me

第3章(STAGE3) 仮想の生活


3.攻略クリア


 藤雄が別世界に住みだしてから、一週間経とうとしていた。その日は日曜日で、藤雄たち家族は、駅付近にあるショッピングモールで買い物をしているわけだが…


「…では、に行ってまいります!」

 水帆は気合を入れて、バーゲンセール会場の前に立っていた。夫と子供たちは、これから起こることに関与しなかった。

「ママは、パパと一緒にこの辺をブラブラしようか…」

 藤雄は我が子たちのお守りを任されて、適当にショッピングモールを歩き回った。すると…


 藤雄は紳士服売り場の前で足を止めた。彼は自然と商品スーツを物色し始めていき…


「いらっしゃいませ、手にされているスーツはお買い得ですよ」

 藤雄は愛想が良い店員に勧められて、いつの間にか試着していた。

「…どうだ、パパ格好いいか?」

 藤雄は我が子たちにスーツを身に纏った父親の姿を披露するが、彼らの反応は薄かった。


「お客様、とてもお似合いですよ、どうされますか?」

「あの…すみません、気に入ったんですが…今は買えなくて…」

 藤雄はそう言って、スーツを静かに脱いで、子供たちと紳士服売り場を後にした。

「お父しゃん、お服買わないの?」

「うん、ママに怒られちゃうからね、ここに来たことは内緒シーだよ」

 藤雄は子供たちと取引しようと、フードコートで人気のクレープやアイスクリームをご馳走した。そして…


「ありがとう、面倒を見てくれて…」

 水帆は藤雄たちと合流した。彼女の手にはいくつものがあった。

「随分買い込んだな、お目当てのものはあったかい?」

「まあね~忘れていないわよ」

 水帆はそう言って、藤雄に購入したものを見せた。


「これって…!」

「仕事着だいぶ草臥くたびれているから…買っておいたわ、カジュアルスーツやすものだけどね…もう少し上等なもの着たかったら、お仕事頑張って~」

 藤雄は思いがけない贈り物プレゼントを受け取り、嬉しさのあまり絶句していた。

「よし、晩御飯は奢ろう、皆、好きな物食べていいぞ!」

 藤雄はそれなりに家族サービスして、休日を満喫していた。彼は分かっているのか、現実世界では味わえない体験である。そして…


 ある朝、毎度おなじみの慌ただしい時間が始まるが…


 藤雄は起きて、顔を洗いに行くのだが様子がおかしかった。彼はじっと洗面所の鏡を見ていた。

「お早う~…あれ、どうしたの?」

 水帆は藤雄と顔を合わすが、夫の異変に気づいた。

「…眼鏡の度が合わなくなってきたんで、コンタクトレンズにしたんだけど…変かな?」

「うーん、何だか別人みたいね」

 藤雄は確かに内面だけでなく、外見にも変化が起き始めていた。彼の子供たちは、他所よそのおじさんを見るような目で見送るのであった。


「お早う…おいおい、見違えたぞ、男前が上がったな」

「イメチェンってやつでしょうか、はは」

 幸作には高評価で、藤雄は眼鏡なしニュースタイルで出社するのであった。そして…


 藤雄はいつものように<CB>本社に足を踏み入れるのだが…


「部長、お早うございます」

「お早う…!」

 藤雄は浩人と顔を合わすが、会社のエントランスで、もう一人の存在に気づいた。


「お早うございます」

 藤雄たちは社長の伸郎に、深々と頭を下げて挨拶した。その場は重い空気に包まれるが、意外なことが起ころうとした。


「…企画プロジェクトは順調か?」

「え…はい、今のところ問題ないかと思います」

「そうか、良い報告を待っている」

 伸郎はそう言った後、秘書や側近を引き連れて、藤雄たちと別れた。

「ふう…」

 藤雄たちはとてつもない緊張感から解放されて、持ち場へと向かった。このまま何事もなく時間が過ぎていけばいいが、今日は<CB>にとって、特別な日であった。


「…クリエイター募集の方はどうかな?」

「広告業界との連携で、応募者数は増えていっています」

「第一次審査の準備は整っている、楽しみだな」

 藤雄は任された仕事を成功させようと真剣に取り組んでいた。だが…


 突然、藤雄のいる異世界に衝撃的事件が舞い込んできた。

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