第3章 第1話-2

転生g@me

第3章(STAGE3) 仮想の生活


1.異界カオス


 大学卒業後、藤雄は水帆と結ばれたが順風満帆ではなかった。主が甲斐性なしのため、家計が安定しない日々が続いた。さらに子供を授かったことでさらなる危機的状況に追い込まれるが…


 藤雄たちの前に救世主が現れた。藤雄の親友、晃司こうじの助けで、<CB>にする運びとなった。

 別世界の藤雄は、ゲーム好きの才能が活かせず、親友に深く頭を下げて、地道に働いて家族を養っていた。


「…あ!」

 水帆は雑談中、何かに気づきだした。

「どうしたの?」

が起きたみたい…」

「…うわーん」

 耳を澄ますと、子供の泣き声が聴こえた。鳴き声は徐々に大きくなってきている。

「助けを呼んでいるわ、よ」

「え…僕?」

「子供たちは、ずっとパパが帰ってくるのを待っていたのよ、責任取りなさいよ」

「…分かったよ」

 藤雄は仕方なく、我が子の様子を見るために重い足取りで寝室のある二階へと向かった。


「うわ~ん!!!」

 藤雄の息子は騒音に近い鳴き声で何かを訴えているが、長女むすめ美帆みほは可愛い寝顔でぐっすりと眠っていた。

 藤雄の長男むすこの名は雅俊まさとし。一歳六カ月の甘えん坊である。


「駄目なパパが帰って来たぞ、姉さんは夢の中か…」

 藤雄は錯乱状態の息子を優しく抱き抱えてあやそうとするが…


「うえ~ん!!」

 雅俊は、全く泣き止みそうになかった。

「眠りが浅いのはか…まいったな~」

 藤雄は息子のあやし方が分からず、独り困り果てた様子だった。その一方で…


「…うわ~懐かしいね~」

 水帆は、中学の卒業アルバムや当時の記念写真を忍に見せていた。彼女たちは、軽く酒を飲みながら思い出話で盛り上がっていた。

「ほんと、皆でよく遊んだね、私たちの結婚も祝ってくれたし…」

「また集まらない?同窓会の幹事は私がするからさ~」

「そうね、旦那にも伝えてやるか」

「…ねえ、水帆」

「何?」

 その時、忍は神妙な面持ちで水帆に質問を投げかけた。


「今の生活に後悔してない?」

「何よ、急に…どうしたの?」

「藤雄君には悪いけど…あなたと全く釣り合ってないわ、学生時代、あなたはモテたから…運命の人の選択肢はあったはずよ」

 忍は冗談抜きの辛口発言をして、水帆の返答を待った。


「…まあ、あの人と一緒になったのも運命さだめなんでしょうね、確かに頼りないかもしれないけど、何か放っておけないのよね…」

「私も彼のこと嫌いじゃないわ、悪い人じゃないけど、でもね…」

「付き合い長いけど、知っていることはあるけど、知らないこともある…不思議な人だわ、そこが魅力的かも…」

「水帆…」

 忍は屈託のない水帆しんゆうの表情を見て、返す言葉が見当たらなかった。


「あ…もう」「え?」

 水帆たちは話を止めて、二階の様子を見に行こうとした。すると…


 寝室をそっと覗くと、藤雄は胡坐あぐらを掻きながら専用の携帯端末を操作していた。雅俊は父親を椅子代わりにして、じっとスマホ画面を見ている。

 藤雄は勤め先しょくばで開発したアクションゲームをプレイしており、それを我が息子に披露していた。雅俊はいつの間にか泣き止んで、父親のゲームプレイに熱中していた。まさに父子が触れ合う光景であった。

「ふ…」

 水帆は旦那と息子の姿を見て、温かい笑みを浮かべていた。

「成程ね…」

 忍は水帆が何故、藤雄を選んだか分かったようだった。そして…


「…彼女、うちに泊まるのか?」

「だって、もう電車ないでしょ、タクシーだと遠いしね…」

「仕事はどうするんだ?」

「午後から出勤だって…フレ…何とかで…」

「フレックスタイム制か?」

「そう、それよ…今、彼女あのこはお風呂入っているから、あなたの番は最後ね」

「彼女は何処で寝るんだ?」

一階ソファーで寝るって、私ももう寝るけど…」

「僕はまだ起きてる…やらないといけない仕事が残っていてね」

「珍しいわね、家にを持ち込むなんて…」

「急にやる気が出てきたんだ、お休み~」

 こうして、別世界での藤雄の長い一日が終わった。彼は現実世界に戻る糸口を発見したようであった。

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