第2章 第3話-1
転生g@me
第2章(STAGE2) 愛しき夢路
3.
藤雄はザゼルの不思議な力によって、
現在の藤雄の住居は、都内の摩天楼ではなく、関東地方の中古借家だった。都会の喧騒から離れた古き良き日本の光景が残る土地、桜や紅葉見物、グルメスポット、海水浴、温泉、神社仏閣巡りなど、観光名所や娯楽はいくつもあり、彼らはそんな環境の物件に憧れていた。ただ、経済面の事情から新築に住めず、かなり生活苦のようだ。
「はあ~」
藤雄は、自宅のトイレに閉じ籠って独り深い溜息をついていた。さっきまでいたザゼルは一切現れることなく、彼は不安感に駆られるわけだが…
「コンコン…」
突如、トイレ扉にノック音が響き、藤雄は心臓が止まりそうになった。鬼のように恐い
「お父さん~まだ~?漏れそうだよ~」
藤雄はトイレの扉越しで、実娘の声を耳にした。彼女は困り果てた顔で自身の体をもじもじさせていた。
「…あっごめんごめん」
藤雄はひとまず実娘に謝って、トイレから出た。
藤雄の実娘の名は
「用意できたから、さっさと食べといてね…」
藤雄がダイニングルームに向かうと、卓上には炊立てのご飯に味噌汁、卵焼き、漬物など馴染みの日本の朝食が並べられていた。ちなみに時折、トースト、ハムエッグ、コーヒーの場合がある。
「…子供たちをちゃんと見ててね…さてと…」
水帆はきつめの口調で夫の藤雄に話し掛けて、洗濯物が積まれた籠を持って、作業を続けようとした。
朝から
藤雄は、我が子とぎこちなく朝食を取った。彼は妻の味付けを知り、出勤の準備に取り掛かるのだが…
「…あれ?スーツ何処かな~」
藤雄は仕事で着ていく服が見つからず、仕方なく妻に訊ねた。
「スーツ?あなたの職場って
「え?」
どうやら、藤雄の会社は役員だけがスーツで、その他の社員(派遣・バイト・インターン含む)は
「僕は社長じゃないのか…成程」
ようやく、藤雄は現状を把握していき、季節に合ったカジュアルジャケットを着用した。おまけに別世界では、藤雄は眼鏡をかけている。冴えない雰囲気が一層映えていた。
「行ってきま~す」
藤雄は覇気のない顔で自宅を出ようとしたが…
「…ちょっと待って、忘れものよ」
藤雄は水帆に呼び止められた。彼はドラマのような出勤前のキスを期待したが…
「これって…」
「ごみ捨てといて、まだ間に合うはずよ」
藤雄は水帆にごみ袋を渡されて、しみじみと現実を味わった。
本来ならお抱え運転手の送迎車、または高級車で出勤するのだが、今は公共交通機関を利用しなければならない。
「わう!」
玄関に一匹の雑種犬がいた。名はノビ(雄)。彼も家族の一員で、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます