第2章 第2話-2

転生g@me

第2章(STAGE2) 愛しき夢路


2.使者ホスト



 夜が明けて、朝日が顔を出す。また新たな一日が始まろうとするが…


 本日は出勤日、藤雄はそろそろ起きなければならない。

「♪!!!!!」

 その時、目覚まし時計のアラームが鳴りだしたが、とても煩く、実に耳障りだった。それは大音量に設定されていた。そこにおかしな点があった。藤雄の目覚まし時計は録音された小鳥のさえずりのアラームのはずだが…


 違和感は他にもあった。いつものベッドと感触が違う。藤雄は高級ベッドではなく、何故か安物の平べったい布団で寝ていた。


「え…これは……いて」

 藤雄はゆっくり現状を確認すると、信じられない光景が広がっていた。彼の腹部あたりには、女児の可愛らしい足が乗っかっている。足癖が悪い彼女は誰なのか、理解できないことはいくつもあった。


「もう朝か…お早う~」

 その時、藤雄の耳に一人の女性の声が届いた。彼の眼前にいる女性は、パジャマ姿の水帆だった。

「え…?」

「どうしたの?私の顔に何かついてる?」

 藤雄は衝撃を受けて愕然としていたが、水帆は平然と振舞っていた。

「ここって、僕の家…?」

「何馬鹿なこと言ってんの?まだ寝ぼけてんの?飲みすぎよ」

「飲みすぎって?」

「忘れたの?あんた、ベロベロに酔っ払って帰って来たのよ、パジャマに着替えさせたり、布団に寝かしたり…が大変だったわ」

「あっそう、それは申し訳ない…」

「何よ?かしこまっちゃって…それより先にお風呂入ってよ、臭うわよ…」

「うん、分かった…そうか、昨日入ってないからな…」

 藤雄は今の環境に馴染めず、独り混迷していた。


「こんなの夢に決まっている、いつ目が覚めるんだ?」

「夢じゃないよ」「!」

 藤雄が風呂場でぼやいていると、突然、男の声が聞こえた。それは聞き慣れた声だった。

「急に出てくるなよ!どういうことか説明しろ!」

 藤雄の前には、ザゼルの姿があった。


「…ちょっと、何で怒鳴っているの?」

「何でもない…足を滑らしたんだ…大丈夫だ」

 藤雄は心配する水帆に対して、どうにか凌いでいったが…


「俺の姿は君にしか見えないよ」

「…確か夢じゃないと言ったな、元の世界に戻せ」

「それは無理だ、してもらわないと…」

「クリアだと?ゲームみたいに言うな」

「ゲームみたいなもんだ、現実的リアルな…不服か?」

「当たり前だ…何故、彼女が…水帆がいるんだ?」

だけじゃないぞ、君には子供が二人いるんだ」

 藤雄は、さっき一緒に寝ていた女児を思い出した。


「僕の子供むすめ…なのか?」

「正真正銘、君と彼女の娘だ」

「僕は水帆と結婚しているのか?」

「ああ…入籍して、ちゃんと結婚式も挙げたよ…指を見てみな」

 藤雄の左手薬指には、結婚指輪がしっかり装着されていた。

「水帆が僕の妻に…」

「別に驚くことじゃない、彼女が生きていれば、結婚する運命よていだった、その世界で君は生きているわけさ…」

「こんな〝もしも〟シリーズの世界で生きていけるわけないだろ、どうやったらクリアになるんだ?」

「それは君次第だ、選択を誤れば、ゴールが遠のくけど…心配することはない、をやろう…」

 ザゼルは藤雄に分厚い書物のようなものを授けた。


「この本は何だ?」

「〝チュートリアル〟だ…困った時に導いてくれる、用が済めば、勝手に消えて、必要な時に現れる」

「本当にクリアすれば、元の世界に戻れるんだろうな?」

「ああ、保証するよ…」

 藤雄はザゼルの目をじっと見て、疑心暗鬼になっていたが…


「ちょっと、いつまで入ってんのよ!遅刻するわよ!!」

「わっごめんなさい!もう出ます」

 藤雄は水帆の怒号で、慌てて浴槽から出ようとした。気づけば、ザゼルの姿はなかった。

 かくして、藤雄のリアルゲームの幕が開くのであった。

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