第2章 第1話-2

転生g@me

第2章(STAGE2) 愛しき夢路


1.遭遇アポなし


「………」

 藤雄たちの会話を盗み聞きしている者が一人いた。その一方で…


 いつの間にか吹雪は止んでいて、嘘みたいに空が晴れていった。藤雄たちはマイカーで下山して、それぞれ帰路に就いた。


 藤雄が自宅に着いた時は、すっかり日が落ちていた。懐かしき友人たちとの交流は楽しかったが、さすがに疲れた様子で…


 藤雄はようやく自宅に着き、住居室の鍵を開けたが…


「あれ?」

 藤雄は何か違和感を覚えていた。彼の住居室は何故か明るかった。半同棲中の恋人が来ているかと思っていたが、藤雄の予想は外れた。


「おう、お帰り~」

 藤雄の眼前にいるのは、彼と面識がない男性だった。

「…だ、誰だ、お前は?」

〝謎の青年〟は藤雄の家のリビングルームでソファーに腰かけて、住人ふじおの酒を飲みながらテレビを観ていた。彼に悪びれた様子はなく、堂々としていた。

「勝手に上がらせてもらってるよ、あっ…酒とも頂いているんで…」

 謎の青年の特徴は、金長髪で褐色の肌、漆黒のスーツで身を包み、長身の痩せ型、欧州系の顔立ちだが、彼は流暢に日本語を話していた。


「どうして、僕の家に?泥棒…なのか?」

「コソ泥なら、金目のものを盗んで、とっくにトンズラしているだろう、君を待っていたんだ」

「何者だ?お前なんかと会ったことないはずだが…」

「まあ座りなよ、君も飲むかい?良い酒を揃えているね」

 謎の青年は図々しく、藤雄は彼と仲良くなれそうになかった。

「場合によっては(警察に)通報するぞ」

「そう熱くなるなよ、一つ訊きたいんだけど…は読んでくれた?」

「メール……!」


「今の人生に満足しているか?」


藤雄は、謎の青年が言ったことに心当たりがあった。


「返事がないもんだから、こうやってお邪魔しているわけさ…」

「もしかして…会社のPCに届いた変なメールのことか?」

「そう…君のあらゆる通信機器ツールに送っといたんだが…ずっと無視スルーされた」

「…本当だ、何故こんな真似を?目的は?」

 藤雄は自身の携帯スマホのメール記録を確認して、真相に興味を持ち始めた。


「招待したかったんだ、君はそのがある」

「さっぱり分からんね」

「強引に案内させてもらったよ…最近、を見たはずだ」

「…まさか、あの夢は…お前の仕業か?」

 その時、藤雄は水帆と過ごした雪山での出来事、妙な夢を思い出した。


「意外に現実的リアルだっただろ?あれはでね…」

「まるで仮想現実うちのゲームみたいだな、同業者の宣伝マンかな?それとも詐欺師?」

 藤雄は謎の青年との会話が馬鹿馬鹿しくなり、つい笑みをこぼした。


「話を聞く気はないか?」

「生憎、があるんでね…間に合ってるよ」

「まあ良いさ、考える余地じかんはある」

「いい加減にしろ、早く帰って……!」

 その時、藤雄の形相が大きく変わった。

「そんなに?特技の一つでね…」

 藤雄の隣に座っているのは、死んだはずの水帆だった。

さらに、謎の青年は藤雄の友人・同僚・知人と、藤雄かれと縁がある人物に姿を変えていった。


「お前…人間なのか?」

「いいや、俺はの住人じゃない」

「何処から来た?何者だ?」

「俺の名は〝ザゼル〟…万物を管理する役目を担っている者なんだが…」

 藤雄は、不可解なことを告げる青年と遭遇して、その後の自分の人生に影響を与える存在だと知るのであった。

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