第1章 第1話ー2

転生g@me

第1章(ステージ1) 運命の悪戯


1.前兆メール


 ビジネス街に聳え立つ高層オフィスビル。それは藤雄の会社である。

 社名は<Curiosity Box 通称CB>

 起業したばかりの頃は、都内の中古マンション一室を借りて、藤雄は親しい友人たち数人と共にせっせと働いていた。それから規模が拡大していき、いまや1200人以上の社員・従業員が勤務している。


「それでは後程…」

 藤雄は送迎車から降りて、社内に向かった。


「…社長、お早うございます」

 藤雄は偶然、エレベーターホールで部下と顔を合わせた。

 部下の名は浦迫浩人うらさこひろと。<CB>の優秀な若手社員で、企画担当に所属している。藤雄が可愛がっている部下の一人でもある。


「お早う、今日は企画会議があったな?」

「はい、社長も出席されるんですか?」

「その予定だったが…別の案件があってね」

「そうですか…残念です」

 藤雄は浩人と雑談して、オフィスフロアで別れた。そして、社長室の前には人影があり…


「お早う、どうかしたのか?」

「今日、例の顧客ゲストに会いに行くんだろ?」

 藤雄を待っていたのは、<CB>の副社長、竹下晃司たけしたこうじであった。藤雄の親友兼相棒だが、実のところ、藤雄は社長の器ではないと自覚していたが、晃司しんゆうの薦めで就任を決意した。


「ああ、何か問題が?」

「業務提携を持ち掛けている…どんな会社ところか把握しているのか?」

「仮想空間事業にサービスビジネスを取り入れたIT事業だろう」

「ウチみたいな急成長した企業かいしゃだ、やっぱりついて行こうか?」

「子ども扱いするなよ、大丈夫だ」

 藤雄がそう言うと、晃司は軽く笑みを浮かべて、彼の気持ちを受けとった。彼らの信頼関係はとてつもなく厚い。

 

 藤雄は晃司と別れた後、自分の部屋オフィスで朝食を取ろうとした。彼は人気チェーン店のコーヒーをすすりながら、専用PCパソコンの受信メールをチェックしていくが…


「…?」

 送信されるメールの内容は、藤雄のスケジュール、顧客や同僚とのやり取りだが、何か様子がおかしかった。


「今の人生に満足しているか?」


 藤雄のPCに送られてきた一通の謎メール、彼の会社はウイルス対策やサイバーセキュリティーが万全のため、不審なメールデータは遮るはずである。だが…


「あれ?」

 藤雄は不審メールを削除しようとするが、何故か不可能だった。彼が困り果てていると…


「…社長、そろそろ、お出かけの準備を…」

「あ…分かった、支度するよ」

 藤雄は秘書に呼ばれて、ひとまず奇妙なメールのことを忘れようとしたが…


「ふ…」

 藤雄の会社<CB>をじっと見ている謎の黒ずくめは何者なのか、その者は何か見透かしているようで不気味だった。

 藤雄は知らぬ間に一歩ずつ、魔訶不思議・奇想天外な世界に立ち入っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る