第1章 第1話ー1

転生g@me

第1章/ ステージ1 運命の悪戯


1.前兆メール


 藤雄は大学卒業後、IT系の会社に就職したが、わずか一年で退職。その後、彼は定職に就かず、引き籠り生活を満喫していたのだが、友人の一声で転機が訪れた。

 藤雄は依存に近いゲーム好きなのだが、高校時代の友人に誘われて、ゲーム開発会社の経営者を務めた。

彼は経営の他、ゲームの企画にも携わり、関連事業が軌道に乗るのであった。

 それから、藤雄の会社は大手企業に成長、彼は高所得者セレブの仲間入りを果たしていき…

 

 藤雄は元々、富や名誉などに関心がない方だったが、生活環境が変わった事で、彼の価値観に影響した。

 藤雄は眼鏡をやめてコンタクトレンズにしたことから、冴えない男から逞しい男へと生まれ変わった。外見イメチェンだけでなく、中身も全くの別人だ。

 藤雄は都心部の高級マンションに住み、優雅な生活を送っていた。彼は仕事が終われば、夜遊びに明け暮れて夢のような時間に浸っていた。

 

 藤雄は何不自由しない日々を満喫していて、順風満帆のように思われたが…


 時折、不満げな表情を浮かべる時がある。現在、藤雄は独身で何人もの恋人がいるが、その中に本命はいない。


 ある夜、藤雄は恋人の一人を自宅に招いていた。

「味の方はどう?」

「美味いよ、また上達したんじゃないの?」

「でしょ?付き合い始めた時は全然料理できなかったのにね~」

 藤雄は恋人Aの手料理を味わって上機嫌だった。

「…来月、誕生日だったな、お返しはちゃんとするよ」

「ありがとう、ところで…」

 恋人Aは食器の後片付けをしながら、藤雄に別の話を持ち掛けた。どうやら、二人にとって重要なことのようだ。


「…何だよ、真面目な顔をして…」

「私たち、付き合って結構長いわよね?先のことを考えてくれてる?」

「先のことって?」

「とぼけないで…私たちは子供じゃないのよ、結婚する気あるの?」

「結婚…それは……」

 藤雄は恋人Aに迫られて、動揺が隠せなかった。


「すぐに答えられないってことは…他に女がいるってことね?」

「それは…違うよ」

 藤雄は恋人Aの質問責めで、次第に顔色を悪くして口数が減っていった。彼には複数の深い関係を持った女性が存在するが、は器用にこなしている。ただ、結婚の話に乗れないのは他に理由があった。


「…時には喧嘩するけど、気が合う方だし…あなたに尽くしているつもりよ、何か不満があるの?」

「不満はないよ、でも、すぐに返事できない」

「一応…真剣に考えてくれているのね?それなら良いわ」

「もう少し待ってくれ、今扱っている案件が落ち着いたら、ちゃんと話す」

「そう、ひとまず休戦ね、今日は帰るわ」

 恋人Aは藤雄の返事に期待感を抱き、晩餐の片付けを済ませると、彼の家から去って行くのであった。


「ふう…」

 藤雄は恋人Aがいなくなると、体の力が抜けて、思わず深い溜息を洩らした。彼は安堵した様子で、自分の部屋のベッドに寝転ぶのだが…


「………」

 藤雄は天井をじっと見て、何やら考えていた。彼はふと、過去のことを思い出した。


 幼馴染で恋人だった女性、水帆の姿が藤雄の頭の中に浮かんだ。彼は水帆と喧嘩別れしたことを今でも悔やんでいた。

 まさか、一生会えないなんて夢にも思わず、自然と藤雄の瞳から涙が出る時がある。女遊びをしている彼にも、一途な気持ちが残っていることが明白であった。

何かと疲れた藤雄は、泥のように眠った。そして…


 藤雄は出勤日になると気持ちを切り替えて、まずはシャワーを浴びた。クローゼットにはクリーニングされた純白のワイシャツ、

高級ブランドスーツ一式が店のように陳列・収納されている。

 藤雄は自慢のオーダースーツに着替えて、出勤の準備をした。普段は自分でコーヒーを淹れて、軽く朝食を取るが、今朝はそんな余裕はなかった。


「社長、お早うございます」「お早う」

 藤雄の自宅マンションのエントランスには、彼のお抱え運転手の姿があり、送迎車でわが社へと向かうのであった。


 藤雄はわが社に着くまで、お抱え運転手が用意した朝刊に目を通して、専用の携帯端末で社会・経済、自社の株価の動きを調べていた。そして…


「…朝食は取られてないんですか?」

「ああ、別に構わないよ」

「それはいけません、行きつけのカフェでテイクアウトしましょう」

「相変わらず、気が利くね…以前、紹介してくれた割烹料理屋、評判良かったよ、クライアントも大喜びだった」

「そうですか、それは良かった」

 藤雄とお抱え運転手との雑談も、日課の一つだった。

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