第41話 悪魔の証明
「だが、それだとリサ嬢がどうして鉱山を見つけることが出来たのか?ということになるのではないか?
まだ採掘を始めていなかったのであれば、リサ嬢が見つけることは不可能ではないか?」
「私がホープス鉱山を初めて見た時にはどこにも掘られたような形跡はございませんでした」
「おそらくではありますが、アルカディア子爵は私どもがあの場所を調査していた事を知っていたのでしょう」
なんでやねん!
そんなん知るはずないやろ!
「……どういう意味でしょうか?」
「アルカディア子爵はフィッツジェラルド公爵家のご令嬢です。その権力をもってすれば、これくらいの情報を集める事など容易いでしょう」
いや、貴方の言っている調査時期にはまだ私は追放が決まってないんですけど?
なんならまだ学生生活を送っていましたが?
断罪されて追放が決まって、それからそんな都合の良い情報のある土地を探して選んだと?
「アルカディア子爵は望んであの地に来られたと聞いております。つまり、まだ魔石の採掘が始まっていないことを知り、自ら王にアルカディアを希望したのではないでしょうか?そうでなければあのような辺境の地を望むとは考えられません」
「リサ嬢よ、今の話について反論はあるか?」
「ございます。大前提として私は子爵があの地を調査していたことを知りませんでした」
「口でだけなら何とでも言えるでしょう。知らなかったという証拠はありますか?」
「それはそちらも同じでしょう?私が知っていたという証拠を出せますか?」
「私のような地方の一子爵が公爵家から情報を掴むなど不可能というものです。しかし状況がそうであると物語っているのではないでしょうか?」
「状況、ですか?」
「ええ。アルカディア子爵が着任したのは六月。魔石が市場に回り始めたのは秋ごろ。これはあまりにも早すぎませんか?まるで最初から魔石が採れることを知っていたとしか思えません。それに貴女は採掘する以外で魔石を見つける方法を知らないと先ほどおっしゃっておりました。もし知らなかったのであれば、どうやってそれ程早くに見つけることが出来たのか説明出来ますか?闇雲に探して見つかるほど狭い土地ではないでしょう?」
確かにそう。
普通ならあの短期間で見つけるのは無理だし、そんな適当な方法で探していたらどれだけの費用が掛かるか知れたもんじゃない。
だからネルソンの言い分は正しい。
でも、ここまでは予想の範疇。
「白状いたしますと、私はあの場所から魔石が採れるのではないかと王都にいた頃より考えておりました」
「やはり――」
「いえ、それはネルソン子爵が調査をしていたのを知っていたという事とは別の話です」
私はリサの考えていた魔力暴走の起こった地で魔結晶が生まれるのではないかという推測と、アルカディアの地がその魔力暴走によって切り取られた場所ではないかとという話をした。
ただ一点。
魔力放出による探知方法の部分だけを伏せて。
「つまり、そういう推測の下、あの地で魔石が採れるのではないかと考えたのです。そして鉱夫たちを集めて採掘を開始いたしました。これほど早くに見つかったのは単純に運が良かったのでしょう」
「なんと……そのような考え方があるのか……」
話を聞き終わったダウントンは大きな目を更に刮目して驚き、ネルソンは口をポカンと開けたまま私を見ていた。
「そのような話聞いたことも無い!言い逃れするならばもっとマシな嘘をつくことだ!!」
我に返ったネルソンだったが、それまでとは口調が全く変わっている。多分こっちが地なんだろう。
「これを聞いたことが無いというのでしたら、子爵のおっしゃる掘らずに見つける方法は私の考えているのとは違うという事ですね?
少なくとも私は自身の潔白を証明するために情報を開示いたしました。
これにつきましては検証していただければ答えが出るかと思いますが、子爵は自身の見つけられた方法を教えられないとおっしゃいます。
それでは今度は子爵の証言を証明する事が出来なくなるのではないですか?」
「ちょ、調査方法は書いていないが、そこにきちんとした報告書があるではないか!」
「こんなものは後からいくらでも作れます。それにきちんとした、というのであれば、どのように調査したのかも記載するべきでしょう?
こんな日時と結果だけの記されたものを報告書だなどとはとても言えませんね」
それでもこれを見たダウントンが私を召喚したということは、こちらの世界では貴族が書けばこの程度のものでも一定の価値があるんだろうけども。
今回助かっているのは相手のネルソンと私の爵位が同格の子爵だということ。
もし向こうの方が上だった場合、問答無用でこちらが悪者にされている可能性が高いだろう。
「確かに今の話を聞く限りでは、リサ嬢はネルソンの調査の件を知らなくても魔石を見つけることは出来そうだな」
「お待ちください!もし仮にそうだったとしても、先に見つけたのは我々の方でございます!鉱山における所有権は発見した領の領主にあると定められている以上、あの鉱山はダウントン侯爵家のものではありませんか!」
「だがお前はそれを証明出来ないのだろう?どうやって見つけたのかという事を明らかにせねば、お前の言っている事が真実だと認めることは出来ぬ。それとも気が変わって言えるようになったのか?」
「――っ!……それだけは申し上げられません」
だって嘘なんだから言えるわけないよね。
もし適当な事を言ってごまかそうとしても、私のは検証すれば確実に答えが出る。
逆にネルソンがそんな都合よく正しい方法を思いつくはずがない。
それにどうやらダウントンも平等に話を聞いてくれているみたいだし、これで勝負あったかな?
さて、これまで楽な方法で利益だけを求めてきた子爵様。
だからって誰もが同じとは限りませんよ?
お金で動かせないものもあるって事をその身に刻んでもらいましょうか。
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