第十八話 ふたりの道士
あれから二年の月日が流れた。
そんな中、ある噂を耳にする。それは、十年ほど前から
閉関とは簡単に言ってしまえば、他者との交流を断って己の修行に専念することである。この山には閉関に適した龍脈があり、その太く大きな気の流れを取り込むことで、より強い力を得ることができるとかなんとか。
「
「そんなすごい御方が合流するとなれば、この
俺も、私も、と道士たちが頷きながら期待を胸に声も自然と大きくなる。
「は? 馬鹿な夢は抱かない方がいい。お前たちみたいな底辺の道士や魔物の一匹も倒せない門下弟が、そんなすごい御方に指導などしてもらえるわけがないだろう!」
「
道士たちが盛り上がっている中、そのひと言で場の空気が一気に不穏になる。正直な話、皆が皆、本気にしていたわけではなく、夢を語るように面白がっていただけだったからだ。そこに現実的でしかも嫌な言い方をしてきたふたりに、周囲はかなり引いていた。
(あれ? ····あの道士たちって確か、)
あれはひと月ほど前だったか。珍しく
山を下りるには門を通らないといけないため、どうしても他の道士たちと顔を合わせることになる。丁度、門の前まで来た時に、外から戻って来た討伐隊と鉢合わせをしたのだった。
「呑気なもんだな、劣等生のくせに。修練もせずに、金魚の
「それは流石に失礼でしょう。一応、首席道士である
わざわざ言葉を選んで嫌なことを言ってくるこの道士は、
どちらも可もなく不可もない容姿で、その実力も
討伐隊はこのふたりを中心に集められた者たちのようで、くすくすと笑い声が起こった。おそらく、
見た目の年齢的には二十代半ばくらいか、もう少し上だろうか。もしかしたら同期とかなのかもしれない。
「こんな細腕で、この
その発言に対して、
それとなく自分の横に立つ
「首席道士というのは、あなたに認められてなるものではなく、皆が受ける試験を受けた結果、数年間首席になっているだけの話です。つまり、私ごときに勝てないあなたが、認めようが認めなかろうが、これに関してなにも影響がないということ」
左手に持った大扇を扇ぎながら、目も合わせずに面倒くさそうに呟く
正論を言われて、逆に腹が立ったのだろう。掴んだ手首を掲げるように持ち上げ、
「首席道士なら、俺から逃げることくらい簡単だろう? 自力で抜け出して見ろよ」
「····どうでもいいんですが、あなた誰ですか? 年上のように見えますが、だったとしても初対面のひとに対して、この行為は失礼なのでは?」
え? とその場にいた全員の頭に「?」が浮かぶ。明らかに
色んな意味でこの門派における腫瘍のようなふたりだ。
「つ、強がりも大概にしてくださいよ。この前も討伐で一緒だったじゃないですか! 私たちの道士としての優秀さはその目で見ていたでしょう? あなたはいつも通りなにもしていなかったとしても!」
「ああ、あの討伐部隊にいたんです? すみません、あの時は考え事をしていたのでまったく憶えてません。先日はお疲れさまでした。大きな怪我もなく、無事に帰還できて良かったですね」
大扇の奥でにっこりと微笑んで、
余裕の笑みを浮かべていた
「まさか····本当に憶えてないのか······お前がここに来た時から、俺たちはずっと知ってるって言うのに? 師としての地位を与えられるまで、毎回顔を合わせる度にお前に絡んでいたのに?」
「すみません、ひとの顔や名前を憶えることほど無駄なことはなくて。興味があれば憶えれられたかもしれないのですが。おそらく、あなた方はそれに値しない、私にとって特に得るもののない存在だったのでしょう」
自分の好敵手と思い込んでいた
気になってちらっと後ろの様子を見てみると、
どちらにしても、よく
「
どうしても気になったので
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