第十九話 守りたいもの
師としては最年少であり、しかも外部から連れて来たある意味部外者である
とはいえ、道士としての実力は言わずもがな。他の道士や門下弟たちは気付いていないが、師という肩書を持つ者たちはさすがに気付いていた。
そうやって表向きは下手に関わってこない他の師たちだが、言いたいことは溜まりに溜まっているだろう。なにせ、相手はあの
ついこの前も、あの素行の悪い師兄として有名な、
もちろん、あのふたりに対しては
(はあ······寝るなら寝台で寝ろってあれほど······)
(そもそも、この量の資料を収めるには、この部屋は狭すぎるだろう?ここの真下に秘密の書庫があるとしても、だ)
元々この建物自体がそういう構造で、門派の倉庫のような役割をしていたらしい。今は新たな場所に別に造られている為、地下に保管されているものは全部、
本人曰く。
「これは全部必要なもので、すぐに手に取れるように置いているだけです」
だそうだ。
片付けられない者の典型的な言い訳である。
それはさておき、水を汲みに行ったきりなかなか帰って来ない
(······最近、ますます様子がおかしい気がする)
特に
時々、油断しているのか可愛らしい笑みを見せることがある。それは同年代の青年が見せるようなものではなく、彼の中性的な美しい容姿がそうさせるのかもしれないが、
あの夢の続きはもう見れなくなった。その代わり、少女との些細なやり取りを夢で見るようになる。それは決まって、
薄々だが、
俯瞰で見ている幼い頃の自分の思考は、目の前の少女を『少女』としか思っていないのだ。
(けど仮にあの夢が俺の記憶の一部だとして、俺と
やっとのことで
すーすーと呑気に眠っている
「······間抜けな顔」
この部屋に差し込む唯一の光が、天窓から注がれている。その下で先程まで眠っていた
そんな中、カタンとなにかを床に置くような音がし、足音が近づいてきた。足音の主は、部屋に入って来るなり視界に入った状況に対して、怪訝そうに眼を細める。
「戻りましたーって、またですか?
「お前が知らないなら俺が知るわけないだろう?」
そもそも、朝から晩まで監視しているわけではないのだ。
「あ、そうだ。どうやら、
「弟? 確か、何年も閉関しているって聞いたことがあるが」
「
「さあ。特に興味もないし、この先関わることもないだろう」
「本当、
は?と
「だってそうでしょう? いっつも
この前だって、道士たちが
「あ、俺にはその睨みは効きませんからね。もう見慣れましたし、その気持ちを察すれば、寧ろ微笑ましくさえ思います」
十五歳の
「もしかして気付いてないんですか? あ、すみません。じゃあ聞かなかったことにしてください」
おい、と
最初はただ利用しようとした。
夢の中の少女がもういないと絶望した時、それを見せた
あの少女が彼であればいいと願うほどに。
あの時、
これは、一方通行で報われないものだと知っている。だからこそ、傍にいられるならそれだけで十分だった。
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