第12話 モデルデビュー

お久しぶりです。投稿かなり遅くなりました。

8月中に一本上げる予定でしたが、手をつけられなかったので、9月に投稿した次第です。私の投稿頻度は本当にナメクジ以下なのであまり期待しないでください。一月に一個以上は投稿したいな。(切実な思い)


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 現在私はファッションモデルの写真撮影を行うために、楽屋でメイクアップされているのだが、メイクさんやスタイリストさんに可愛がられていた。


「あの店長さんが急にモデルを連れてくるって話になった時は驚いたけど、改めて納得ですね」


「だねぇ、達成感やばいわぁ、この仕事着いてよかったぁ」


 鏡越しにキャーキャー言っているスタイリストのサキさんと、やり切ったと言う表情で汗を拭うメイクのミコさん。どちらも綺麗なお姉さん方だった。なおこの2人は店長さんの古い付き合いらしい。


 私はまじまじと鏡を眺めるが、相変わらず今日も可愛い。私の特徴を活かせる服装にメイクを施すことで、いつもよりも大人っぽく見える。今世の趣味で自らメイクをすることがあるが、やっぱり本業の人は一味違うね。いい勉強になった。


 あ、こちらこそありがとうございます。名刺受け取っておきます。またあとでお話ししましょう。




 さてこの後撮影があるのだが、移動の合間に今日の回想をしておこうと思う。


 店長に事前に呼び出されたのは、撮影スタジオが設置されているビルの最上階であった。


 いや、すごい高いビルだな。こんな見上げるビル入るの初めてかも。登っていくエレベーターに感心しながら、そんなこと思ってた。


 扉が開くまでの間鏡と睨めっこしながら到着を待つ。こんなとこ前世でも入る経験なかったから、緊張するなぁ。


「いらっしゃい葵ちゃん…っと、今日は一段とかっこいいねぇ。とりあえず来てくれてありがとう。これ今日の流れだから、軽く読んでおいてね」


 到着するや否や店長が出迎えてくれた。店長が褒めてくれた私の今日の格好は、ゆるめのパーカーにダメージデニムパンツを履いた、ストリートスタイルである。そして髪型をポニテにして帽子に入れることで、身バレを防いでいる。(防げてない)この格好自分でも結構好きな部類なんだよね、体のラインとか分かりづらくなって。なにかと外出ると声かけられることあるから、こう言った格好だと大丈夫だったりする。


 まぁ、今は事務所に所属しているようなものだから断れるんだけど。


 店長から今日のスケジュールを渡されたので軽く読んでみる。んー、これお昼またぐっぽいな。結構時間かかるみたい。


「撮影って思ってるより時間かかるんですね」


「そうだねー、着替えとかメイク直し、あとは写真のチェックとかすると案外長くなっちゃうんだよね。だから今日はたくさん頑張ってもらうよ葵ちゃん」


 ガッツポーズを決めながら、私の肩に手を置いてきた。その瞳には私への期待が伺える。…ちょっと顔がニヤけてるけど。


「あ、そうだ。お昼ご飯注文とかできるけど何かご要望はある?近くのレストランとかでもいいけど」


 おー!なんか役者っぽいのきたな。この場合楽屋でお弁当を食べるか、レストランでひっそり食べるかみたいな展開だよね。でも私はまだ有名人ってわけではないし、レストラン行ってもバレるようなことはないけどね。有名なったらそう言うのも気をつけなきゃないんだなー。ちょっと面倒ではあるけど、なんだかスパイみたいで面白そう。でもそうだなぁ、今回はお弁当でいいかな。楽屋でお弁当食べてみたいし。



葵も夢を語る1人の少女なのであった。



「そういえば葵ちゃんってSNSのアカウント持ってる?」


二つあるんだよね。私自身が高校で使うかもしれないと思って作ったアカウントと、完全に趣味を投稿しているアカウントが。


「はい、一応持ってますけど使ってないです」


 流石に趣味のアカウントは見せれないかな。や、別にやましいわけではないよ。ただ、格好上げてるだけだし。


「了解、どうしようかなープライベートアカウントと分けるべきか…」


 正直そこは私も悩んでたんだよね。もし私個人のアカウントなら今後の生活に支障でないかなって。でも芸能人の人が普通に高校生してたりするくらいだから、大丈夫かなと至った。


「プライベートアカウントでいいですよ。実は今度学校に私当てで取材が来るらしいんですけど、そこで宣伝しようと思ってましたので」


「え、学校に取材くるの…なにしたのさ…」


唖然となる店長だった。


「まぁ、いろいろありまして…」


「…うん、とりあえず事情はわかった。いや、わかってないけど!…そうだなぁ、じゃあそこは任せるとして一応プロデューサー兼店長ってことで、私にも共有してね」


「わかりました」


 アカウント教えてちょ、とスマホ持ちながら私の隣まで顔が近づいた。店長普通に顔面偏差値高いから、ちょっとドキドキする。なんの香水だろ、いい匂いする。あれ、アカウントが違う…


「え、これは?」


「あー」


 スマホを立ち上げて、アプリを開いたところアカウントを押し間違えて趣味のアカウントを開いてしまった。今朝開いていたから、いつもと順番が逆になってたみたい。急いで戻したけど、店長は隣にいたからガッツリみられてしまった。


「見なかったことにしてください…」


「…うん(見間違えかな、最近よく見る人だと思ったんだけど)」


「これです」


「おっけーそれじゃあフォローしてと。あらこのアイコン可愛いね。でもそっか、これも撮らなきゃないから、プロフィール写真とかは後で撮影するからその時に変更よろしく」


「わかりました」


「それじゃあ今日はよろしくね」


「はい、よろしくお願いします」




 ってなわけで回想してる間に撮影のスタジオについた。正直店長さんに趣味アカウントバレそうになった時はものすごく焦ったけど、バレてなさそうで一安心である。(本当にそれで大丈夫か)


「モデルさん到着しました」


「本日はよろしくお願いしたします」


「よろしくお願いします」


 そこから撮影はトントン拍子で進んで行った。初めての撮影ということもあって、最初は的確な指示のもと撮影を行ったが、だんだん私もコツを掴み、求められているポーズや表情を自然に出せるようになっていた。カメラマンさんに撮影慣れてるね、撮影経験あるの?と聞かれたので、初めてですと答えると、もの凄くびっくりした表情をしていた。絶対経験あると思っていたらしい。実際初めてと言うわけではないのだけれど、その撮影は自分自身でおこなっているため、人から撮られると言う意味では初めてである。だから決して嘘をついているわけではない。


「お疲れ様でした、では一旦休憩入りましょー」


 カメラマンさんからグットサインをもらった店長は、よく通る声でみんなに一声かけた。


 私は一人一人ありがとうございました、と挨拶してから楽屋に戻る。途中店長に昼休憩一緒にしよと誘われたので承諾した。これからも一緒に撮影することになるかもしれない仲だからね、挨拶は基本だよ。おかげで撮影の人たちはみんな優しくしてくれた。


 それにしても結構疲れるなぁこの仕事。家でやるのとは全然違って、ペースとか合わせなきゃないし、こうしてゆっくりできる時に疲れが一気に来るよねぇ。


 楽屋に入って直ぐ伸びをして、椅子にぐったりと座る。


 椅子から何気なく楽屋を見回す。すると先ほど見かけなかったものが、机に置かれているのに気がついた。気になった私は根付いた腰を上げ、見てみるとお弁当が4つ置かれていた。


「これ食べていいのかな?」


 部屋に私の声だけが木霊する。間違ってスタッフさんたちのだったら怖いからとりあえず店長が来るまで待つことにする。


 午後のスケジュールを見始めてから数分たった頃、ノックが聞こえた。返事を返すと店長以外の気配も伺えた。どうやらミコさんとサキさんも連れて来られたみたいだ。


…待って、そういえば店長の名前ってなんだっけ?教えてもらってないよな、LOINですら店長って名前だからな。後で聞いてみよ。


「お疲れー葵ちゃん」


「お疲れ様です」


「この2人も一緒でいい?」


「はい、問題ないです。むしろ誘おうと思ってました」


「よかったーお邪魔するね葵ちゃん」


「ありがとね葵さん」


 さっき仲良くなった2人だから、名前呼びを許している。きれいなお姉さん方なら全然問題ないよ。むしろ呼んでくれ。


「皆さんお弁当は持ってないんですか?」


「あーそうそう、それはねこっちで食べるかなーって思って4人分置いといてもらったんだ」


 だからお弁当積み重なってたのか。店長の采配だったらしい。


「とりあえず食べちゃいましょうか」


 サキさんの合図でみんな席につきお弁当を広げる。お弁当の中身はハンバーグ定食だった。おお、結構ボリューミーで美味しそう。


「いただきます」


 んんー!疲れてたから箸が進むなぁ。それにホカホカのお弁当だから、体に染みるなあ。ちょーうまい。


 その後もパクパク箸を進めていたが、3つの視線を感じたので手を休める。するとみんなニコニコしてこちらを眺めていた。なんだか視線が猫とか眺めるのと一緒なんだよな。


「美味しそうに食べるね葵ちゃん」


「やっぱ可愛い人って何しても可愛いよね」


「「うん」」


 そっちで勝手に納得しないでください。美人な人たちに可愛いって言われるとちょっと照れる。私は誤魔化すように話題を振った。


「そういえば店長の名前ってなんて言うんですか?」


「私の名前?恋だよ。桜木恋。言わなかったっけ?」


 桜木 恋(さくらぎ れん)というらしい。多分初めて聞いたと思う。


「お、店長が名乗ってるの久しぶりに聞いた」


「うそー私名乗ったことなかったっけ」


「少なくともここ数年は聞いてないですね。私たちも店長って呼んでますからちょっと懐かしく感じましたもん」


 どうやらミコさんとサキさんは久しぶりに聞いたらしい。そんなに名乗らないもんなの?


「私も店長って呼んだ方がいいですか?それとも恋さんって呼んでも?」


「ぜひ恋さんでよろしく」


 なんか食い気味に言われた。ちょっと目がガン開きになってて怖かったけれど、サキさんが制してくれた。


「ふふっ、わかりました」


「ねーこの子持ち帰っていい?」


「ダメに決まってるでしょ」


軽く頭を叩かれていた。




⭐︎




 午後の撮影も無事終わり、長いエレベーターを降りながら深呼吸をする。ふわぁー疲れたぁ。あんなに着替えとかするもんなんだね。私に似合う服もあったけれど、えりに似合いそうだと思うのが結構あったんだよね。つい声出ちゃったし。


「これえりに似合いそう」ボソッ

「え?…なるほどね」


 こんな具合で。なんか店長その場にいたんだけど頷いてた。同感だったのかな。


 まあそれは置いといて、終了後この後打ち上げでもやる?と聞かれたけど、今日の夜は予定がありますのでと答えると、じゃあ別の機会でやろうねと言われた。打ち上げはどうしてもしたいらしい。多分集まる口実なんじゃないだろうか。かくいう私もなんだかんだ楽しみにはしているが。


 だってお姉さん方(3名)と飲めるんだよ?私はまだ飲めないけど…それは気分じゃん?ちょっとしたバーに行くような気分だよ。お茶かジュースしか飲めないけど。


 次の機会は果たしていつになることやら、不安もあるが期待の方が大きい。なんだかんだ今日も楽しかったしね。あと給料の話があったのだが、私の契約金と初回撮影費ということで、かなりの額が出るらしい。私の口座はもう伝えてあるので、これからどれだけ増えているのか楽しみだ。恋さん言うには高校生には大金らしいねん、ほな大金とちゃうかーらしい。


 さてさて、今はもう夕方であるがまだ帰るには名残惜しいので、このままどこかのショッピングモールでも行こうかな。


 とてとて歩き始めたけど、なんか視線多いなぁ、髪結構隠してるはずなんだけど。あ、マスクしろって言われてたの忘れてた。今のうちにしとこう。


 ん?なんか見覚えのある人いる気が…あ、あの姿は!


 金髪ボブのつり目といえば、えりしかいない!さっそく話しかけてみようかな?休日でも会えるなんて嬉しいなぁ。


 お、こっちに歩いてきた。友達と遊んでたんだね。私もそっち側に歩いていくけど気づくかな。


 すれ違う距離まできた、あっちはどうやら話し込んでいて気づいていない模様。おーいえり気づいてー。


「えり…」


 手を軽く伸ばすが、話していて気づかなかった。まぁ、話してたらこっち見ないよね。そうだよね、ならしょうがない。ちょっとだけ寂しい気持ちがあるけど、別に無視された訳ではないと思うし、大丈夫。大丈夫…


 でも今日はやっぱり帰ろうかな、疲れたし。

歩みを止めていた足を再び動かす。



一方その頃


「なんかさっき通った人、芸能人っぽい人に呼ばれてなかった?えりりん」


「うそ、見てなかった!どんな人だった?」


「えっとね女の人なんだけど、髪が白かったよ。顔はマスクしてて見えなかったけど」


「それってもしかして」


「ちょっとえりりん?!」


 えりは走り出していた。まだ後ろ姿が見える位置にいたためすぐに駆け出す。


「(白い髪とかこの辺だとあおちーしかいないでしょ。なんで気づかなかったんだわたし!多分今頃傷ついてるよね、無視されたと思ってるかも。急がなきゃ)」


 心配もあったが、ただ少しのイタズラ心が芽生えたので、走っている足音をなるべく立てないようにして、こっそり近づいてみることにする。もうタッチできる距離まできたけど気づいていないみたいだから、ちょっと驚かせようかな。


 知らない人だったらどうするんだとか全く気にしていない英理であった。


「ばぁ!」


「……」


「え、どうしたのあおちー。そんな泣きそうな顔して」


「いや、ごめんねなんでもないよ。それよりえり会えてよかった」


 マスクをしていたので目元しか見えなかったけど、確かに悲しそうな顔をしてた。だけどわたしと会うと少し笑顔に戻った。やっぱり悲しい思いさせてたな、これ。


「うん、わたしも会えてよかった。ごめんねさっきは気づかなくて」


「大丈夫だよ、友達と遊んでたんでしょ?友達は大丈夫なの?」


 なんかちょっとトゲがあるような言い方だけど、怒らせたかな。


「あーいいよいいよ、あの子あそこで手振ってるし」


「ほんとだ」


「今はあおちーが優先順位一番高いからね」


 おい!とツッコミが聞こえてくるような気がしたけど、気にしないでおく。


「今日撮影してきたの?」


「うん、そう」


「どうだった?楽しめた?」


「うん、みんないい人だったし続けたいなって思えたよ」


「よかった、楽しめて何よりだよ。なんかあったらわたしが店長にガツンと言ってあげるからね」


「ふふっ、大丈夫だよ。ありがとね」


「よし、それじゃあわたしはこれから夜ご飯でも行こうかなと思ってたんだけど、あおちーも一緒に来る?」


「いいの?邪魔じゃない?」


「ぜんっぜん邪魔じゃないよ、むしろ来て欲しいくらい。あそこにいる子も一緒だけど大丈夫?」


「うん、大丈夫」


「よかった、それじゃあ行こっか」


 とりあえず元気出せたみたいでよかった。…今ならこっそり手を繋いでも大丈夫だよね?よし、繋げた。あおちーも握り返してくれたしいいってことだよね。えへへ、夜ご飯まで一緒に繋いじゃお。



この後一緒に夜ご飯を食べた。

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