第6.5話 由良からみた葵
みなさんこんにちは。双葉由良と申します。
突然ですが百合というものをご存知ですか?
いわゆる女の子と女の子がイチャイチャするものなんですけれども、私はそれが大好きです!
ですが、実際に私がイチャイチャするわけではなくて、そのイチャイチャしているところを眺めたいというのが、願望です。
なぜこんなことを言うかというと、私が入学した高校で、実際にその百合の花が咲こうとしているからであります!
私のクラスには、目立っている人が2人ほどいます。もちろん悪い意味ではなくて、いい意味でです。片側は見た目から見て取れるギャル。もう片側は清楚なお嬢様です。
どうしてこのお二人が目立っているのか。
それはこの2人が日頃から、百合百合しているからです。
あー、もう眼福です!高校生活最高!!
フンスフンスと鼻息を鳴らしながら、親友である麻美に語る。
「もう、その話何回目?今日だけで3回は聞いたよ」
「だって語り尽くせないほどあるんだもん!」
親友である田中麻美(たなかまみ)は幼少期からの幼馴染だ。私と同じくらいの身長で、髪は長い。眼鏡をかけていて少し地味に見える。
「そう、まぁ気持ちはわからなくはないけど」
このようにいつもクールぶっているが、毎回しっかりと話を聞いている。今でも会話の主役であったお二人を眺めている。
「でしょでしょ?昨日なんて、熱があるんじゃないっておでこくっつけあってたし!」
あー思い出すだけで悶えそうだ。
しかもあの様子だと無意識でやってそうなのがまたいいんだよなぁ。
私の印象的に、無自覚に百合百合するのが白凪葵さん。そして自覚しているのが佐藤英理さんだと思う。あのお二人ビジュアルから強いから見ていて、飽きることは絶対にない!
あの方々は2人合わせて天然記念物にするべきだろう。そのくらい強い。
佐藤英理さんは入学してすぐの、自己紹介からすでに目立ってはいた。とても可愛いと言える容姿に、ギャルだと思わせる格好、先生に物怖じせず質問していたこと。正直私は少し怖かった。ギャルって本当にいるんだ、と思ったし、ギャルってパシリとかさせてくる人だよねとか考えちゃったから。
だけれどその印象は1日も続かなかった。
続かなかったというよりも衝撃が大きかったから。
白凪葵さんはなんというか、言葉で表せないくらい美しい人だなと思った。黒髪がたくさんいる中、1人だけ美しい白髪を靡かせて壇上に立った時、女神様って存在したんだなと思うくらい。この際だから白凪様と呼ぼう。そんな女神様がまさかのギャルと話すなんて思ってもみなかった。
清楚なお嬢様…いや女神様とギャル。一体誰が予想つくだろうか。普通に会話するだけならわかる。クラスメイトだから。だけれど、1日目から2人で遊びにいったり、昨日は教室でイチャイチャしてたり、もうそういうことだよね。
「わたしはもっと近くで見たい!!」
「ちょっと目が本気で怖いよ」
「でも百合の間に入るのはなー、私が絶対に許せないし。なんなら渡辺くんを少し警戒しなきゃ」
「この子聞いてないし」
「私が百合の間を守ればいいのでは?そうすれば合法的に百合を眺められるし、2人の間を守れる。winwinだ!」
「ちょっと静かにして」
おっと熱くなりすぎたようだ。
最近百合成分が足りなくて、摂取できるところを見つけてしまったから、少し盛り上がってしまった。
「ごめん。それでどうしたらあの2人に近づけると思う?」
「手紙でも書いて見たら?2人の邪魔はしたくないんでしょ。手紙なら片方だけに渡せばいいし、一対一で話すことができるでしょう?」
「おお、さすが麻美ちゃん」
こういう時は頼りになる親友である。
麻美ちゃんは恋愛小説を読むのを好むので、こう言った基本の知識が豊富なのかもしれない。
私が麻美ちゃんと仲良くなったきっかけでもあるからね。
「さっそく帰ったら書いてみる!」
⭐︎
次の日の放課後私は教室で人を待っていた。
「おまたせ」
そういって教室に入ってきたのは女神様である。そう、私は白凪様に手紙を書いたのだ。
佐藤さんにしなかったのは、まだちょっと怖い意識が抜けきっていなかったからかもしれないけれど、白凪様と話して見たかったというのもある。
私は窓辺から白凪様のいる位置まで少し急いで駆け寄る。ふー、なんだか緊張してきた。
「来ていただきありがとうございます!」
ぺこりとお辞儀をする。
「あの!私応援してます!!」
「え?」
「あ、申し遅れました双葉由良と申します。」
改めて近くでみると本当に綺麗だな、この人。
私もこんな綺麗な人になってみたいものだ。
さて、肝心な要件を言わなければならない。私がお二人を守ります!と。
「混じらないので近くに居させてください!」
あーちょっと間違えちゃったー!
でも今から撤回はできないし、なんというかこの状況は告白みたいだし、うー、お願いします。白凪様どうかわかってください。
「うん、でも友達として仲良くしようよ」
どうやら少し考えたそぶりを見せた後、そう言ってくれた。どうやらわかってもらえたらしい。私が守ると。それにそんな私にも慈悲をくれるかのように、友達になろうと言ってくれた。この人は本当に女神様なのかなぁ。
「はぁ、いいんですか!願ってもないです!」
「ありがとう。それじゃあ名前呼びでいい?双葉さん」
あぁ、特別扱いされているみたいでとても胸がキュンキュンする。こんなに美しい人に名前を呼ばれるのは、本当に感激レベルである。
「もちろんです白凪さま」
「ふふっ、これからよろしくね。ゆらちゃん」
ぐはっ!!その笑顔は心臓がなくなります。
私の中で幸福のドーパミンが人生一でた気がします。あー、最高…
「はい!葵さま!」
⭐︎
そして今日から、私は重役出勤である。
百合警察出動します!!
「えり紹介するね。昨日手紙をくれて私たちと友達になりたいって言ってくれた双葉由良さん。ゆらちゃんって呼んでいいって」
葵さまから紹介してくれるなんて…本当に私はこの仕事について良かった!!(1日目)
「はわわ、葵さまから紹介していただけるとはとても嬉しいです!」
「かわいーねゆらちゃん。私のこともえりでいいよー」
そう言ってくれる佐藤さん。あーこの人もいい人だ。ギャルだけど話しやすくしてくれるのが見て取れる。
「はい!英理さんよろしくお願いします!」
「膝の上乗せてあげよっか?」
英理さんがなにやらニヤニヤしながら私にそう言ってきます。出勤中の私に優しくしてくださるとは…でも私は百合の間を守るために派遣されたのであって、決して百合の邪魔をしたいわけではないんです。本当ですから、迷ってませんから!
「の、のりま、のりません!」
「ちょっと迷ってるじゃん」
動揺が少しでてしまったようだ。(いつも)
うむむと我慢していると、まるで我慢しなくてもいいよと語りかけてくるように、葵さまのお声が耳に入ってきます。
「それじゃあゆらちゃん、おいで」
はわわ、女神様が手を広げて待ってらっしゃる。これに抗える人はいないだろう。それに拒否したら葵さまが悲しみそうでそれは嫌だ。つまり私は行くしかないのだ。この楽園に。
「はぅ、葵ママさま」
はぁ、気持ちいい…ママ…
とても柔らかい身体が私を包み込んでくれます。顔はもちろん幸せなのですが、私はこの状況がとても幸せに感じています。今は、百合の間に挟まってもいいよね。とか思うくらい。
そんなことを考えていると、後ろからなにやらゴゴゴと音が聞こえた気がして振り返った。
「ぴぃ!」
英理さんがまるで私の場所だぞと言わんばかりの目を私に向けていました。私としたことが、少し気が緩んでいたようです。ちょっと怖いです。本当にごめんなさい。
「あおちー、私も抱きついていい?」
「え?うんいいけど」
?!?!?!
私はこのために生きていた!
きっと英理さんは私が抱きついたのを見て、それに嫉妬したのでしょう。私も抱きつきたいと。はー、可愛すぎる。そして、自然にそれを迎え入れる葵さん、手慣れすぎじゃないですか?みんな落ちますよ。
「えり、ちょっと恥ずかしいよ」
「すーはー これはクセになりそー」
葵さまの胸に顔を埋めて頬擦りする英理さん。
美少女×美少女のハグ!!最高だぁ…
「はい、お詫びにわたしにも抱きついていいよ」
「ん、これは落ち着く」
今度は英理さんの胸に飛び込んだ葵さま。
少し躊躇いながらも、嬉しそうにしているお二人の顔をみるだけで、こちらもニヤけてしまいます。口角が天井に突き刺さるくらい。
「かみさまありがとうございます」
私は膝をついて、神に祈りを捧げた。
⭐︎
次の日の朝、葵さまにLOINを送った。
内容は部活動についてのことだったが、私と同じ部活動を選んだらしいと麻美が言っていた。
私より葵さまのこと見てない?
「今日の朝ランニングしてたら渡辺くんと会ってね、少し話をしたんだ」
そういって話始めた休み時間。私は今日も出勤している。今は葵さまの髪を梳かしているところだ。それよりなにか聞き捨てならないことを聞いた気がする。
「ふーん渡辺くんと会ったんだ、てかそれよりもあおちー朝ランしてるの?!」
英理さんが聞いてくれたようだ。朝ランの方に興味を持ったみたいだが。はっ、これは葵さまのことしか興味がないってコト?!
「うん、朝のランニング気持ちいいよ」
ふぅ、危うく限界化するところだった。
今は会話に集中しなくては。
「葵様は運動がお好きなんですか?」
「そうだね、それなりには好きだよ。だから体育も楽しみにしてたんだけど、来週からなのは少し残念」
残念そうに眉をひそめている葵さまも可愛い。
「…あおちーのそれ大きいのに揺れて痛くないの?」
英理さんは胸を見つめながら、そう言います。
確かにあんなに大きいと走る時に揺れて痛そうである。それに男子からの視線を感じそうだ。
決して羨ましいなんてことではないよ?
「痛いけど固定力強いのつけるから大丈夫」
痛いんですか?!私が支えましょうか?!
いや、それは葵さまに失礼だな。
それにあんなに柔らかいものを私が支えたら、英理さんに何されるかわかったものではない。
「ふーん、そういうもんなんだ」
「うん。ゆらちゃんありがとう」
髪を梳かし終わって、少し横にずれると葵さまから頭を撫でられる。はわわ、気持ち良すぎます…このために生きてきたのか…
英理さんの視線が怖いからちょっとこの辺で…
「えりどうしたの?」
「いいや別にー?あおちーに撫でられてうらやましーなーとか思ってないしー?」
「撫でてあげようか?」
私は百合の波動を感じたので、即座に持ち場を離れた。だが少し遅かったようだ。
「…撫でて」
いつもの雰囲気とは変わって、頬を染めながら葵さまにおねだりする英理さん。可愛すぎないか?葵さまはやっぱり女神様だ…
「今日は甘えん坊だね、えり」
「ん…」
ぐはっ…尊すぎて、ムリ…
私は地面に打ち付けられた。
百合の波動、恐るべし。
⭐︎
部活の時間、先輩方と自己紹介をした。
そして、部活の活動内容について聞いていた。
「最後にこの茶道部では、活動風景をSNSにアップするよ。理由は知名度を上げるためとか学校PRになるからっていうのもあるけど、写真に残すことで部員の向上心をあげる狙いがあるよ」
…ん?これは葵さまが世間に発信されて…
バズってしまう?
「もちろんプライバシーを侵害するつもりはないからNGの人は言ってほしいかな。」
私たちの葵さまが世界に発信されたらもう、バズるのが確定だよ。どうしよう。
「葵さま、いいのですか?」
「うん、大丈夫だよ」
葵さまは気にしてないようだけど、自分の容姿を自覚していらっしゃらないのだろうか。
私は今まで会ってきた中でも一番美しいと思ったし、この目で見なかったら私と同じ世界で生きているのか、疑うレベルの美貌ですよ。
まぁ、葵さまがいいなら別に気にする必要はないか。私だけが気にしても、葵さまに迷惑だしね。なにかあったら私が全力で守ろう。
百合を守るために…そして葵さまと英理さんの幸せのために…
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