第6話 部活が始まったけど…


リアルが少し落ち着いたので、投稿開始します。

誤字報告、たくさんのコメントありがとうございます。励みになります。

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おはようございます。

まだ眠たいと主張する身体を起こして伸びをする。んー今日もがんばろう。

カーテンを開けるとまだ薄暗いが、雲ひとつ見えないことから、今日は晴天だろうと予測できる。絶好の外出日和だね。

といっても今日も学校なのだが。


私の朝は早い。

朝5時30分に目を覚まして、まずランニングにいく。この時間は人がまだ少ないから走りやすいのと、日の出とともに身体が起きてくる感じがして良い。前まではもう少し遅い時間に起きて走っていたのだが、髪色が目立ってしまい近所の人たちに話しかけられるので、時間を早めることにした。話しかけるのは別に良いのだが、私も話し込んでしまい学校に遅れかけた経験がある。繰り返さないようにしないとね。

軽くストレッチをしてコップ一杯分の水を飲んでから走り始める。


「はっ、はっ」


さて、今日はこのルートで行ってみよう。

いつもいく道だけだと面白くないからね。私は走りながら景色をじっくりと眺めるのだ。1日の始まりを目にするのは新鮮だから。



⭐︎



少し公園のベンチで水分補給している時、前方に見覚えのある顔を見かけた。

あの顔…イケメン君か?

あ、こっちみた。気付いたみたい。

休憩している私の元へ走ってきたのは渡辺くんだった。


「おはよう白凪さん」


「おはよう渡辺くん。朝早いんだね。そっちもランニング中?」


「うん、そうなんだ。いつもこの辺を走っているんだけど、なんだか見覚えのある顔が見えたからね。来てみたら白凪さんだった。びっくりしたよ」


「ふふっ、私もびっくりしたよ。この時間合う人は滅多にいないからね。それにクラスメイトと会うとは思わなかった。ちょっと休憩していく?」


そうさせてもらうよ。と言った彼は私の隣に腰掛けた。私はちょっと待ってて、と言って一度席を立ち目の前にある自動販売機で飲み物を購入する。水でいいよね。


「はい、あげる」


「え?えと、ありがとう」


飲み物を渡し終えたので再び彼の隣へ戻る。

今のなんかオタクに優しいギャルっぽくね?

これから話すのに今まで走ってたから疲れてるのをさりげなく思って飲み物渡す感じ。

いや、ムーブはそうかもだけど渡辺くんはオタクじゃなさそうだわ。


「白凪さんはどうしてランニングを?」


「うーん、1日の始まりを実感したくて」


私は前世、遅寝早起きが習慣だったが、今世に生まれ変わってからは自然と生活習慣が治っていった。赤ちゃんからの影響があるね。

そうして朝早く起きるようになり、この時間は学校とかあっても余裕があるため走っている。

毎日走っているうちに、自分の走り以外にも意識が行くようになった。太陽に照らされる前の街の景色、静寂が包み込む道、光を与えられ、今日の1日が始まることを示唆するこの景色が、とてもおもしろくて。前世では絶対に縁のなかったことだから、余計にしみじみと感じる。


そういえば渡辺くんはどうしてこの時間ランニングをしているのだろう。鍛えるためかな。


「渡辺くんこそどうしてランニングを?」


「僕は走ることが好きなんだ。それに学校の体育で体力テストが迫ってるから、少しでも体力をつけたくてね。部活も運動部だから、帰ってからだと流石に疲れて走る気が起きないから」


といって笑う渡辺くん。

やっぱり鍛えるためだったわ。それにしても意識高すぎだろこのイケメン君。

イケメンは苦労しないとか言われてたが、陰で努力してるところを見れて、なんだかホッとした。


「そうなんだ。それに部活はサッカー部だったっけ。大変じゃない?」


「うんそうだよ。昨日初めて参加したんだけど、練習メニューは結構大変でね。実は少し筋肉痛なんだ」


そう足をさすりながら水を飲む彼。

運動部で走るなら、今走るのはオーバーワークではないだろうか。大丈夫かな。


「マッサージしてあげようか?」


「え?」


「いや、なんでもない」


おっと素で間違えてしまった。

今私は女であっちは男。久しぶりに男の人と一対一で話したから、男同士の会話みたいな感覚になってしまった。私は無自覚ではないからね。(どの口が)それにクラスメイトにマッサージされるのは流石に恥ずかしいだろう。 


「今日はいい天気だね」


ちょっと誤魔化しが適当すぎるけど、天気デッキって以外と強いからね。雲とかで語れるよ。今日雲ないけど。


「そうだね。雲一つ見えないよ。…さてそろそろお暇しようかな。ありがとう飲み物に時間をくれて」


「うん、大丈夫だよ」


「今日は話せてよかったよ。それじゃあ、また学校で」


「うん、またね」


私も飲み物を全て流し込んで空のペットボトルをゴミ箱に入れた。さて、家に帰りますか。

私はまた足に力を込めた。



⭐︎



シャワーを浴びて朝食を取る。

ちょうど七時くらいである。今日の朝食は、パンにイチゴジャムを乗せたものと、トマトとレタスのサラダにカボチャのスープである。

朝食は1日の気合いを入れるためにたくさん食べないとね。


私は朝食ご飯派なのだがパン派の気持ちもわかる。どちらも好んでたべるから。パンは乗せたりする物がたくさん選べるから好きだ。お気に入りはシンプルなジャム。パンそのものの味とマッチするからね。ご飯が好きな理由は単純に好きな物であるからだが、腹持ちがいいというのもあったりする。


「ごちそうさまでした」


部屋に戻り今日の日程を確認する。

今日は部活か…カレンダーに部活の日程が書かれている。うん、めっちゃシンプル。

私は茶道部に入部したので火曜日と金曜日に部活と書いた。やっと部活にいけるね。

今日が楽しみになってきた。


「ん?LOINだ。これはゆらちゃん?」


ポケットに入れていたスマホに通知が届く。

どうやらゆらちゃんからメッセージが来たようだ。


-LOIN-


連絡先 双葉由良


[由良]あおい様おはようございます!

あおい様は確か茶道部に入部されましたよね。


[葵]うん、そうだよ 

(おはようスタンプ)


[由良]はわ、スタンプまで可愛い

えーと実は私も茶道に興味がありまして、茶道部に入部することになりました。


[葵]そっか、来てくれて嬉しいよ。ありがとう


[由良]ありがとうございます(泣)



この子LOINでも元気だな。感情表現が大きくて喜怒哀楽がはっきりしている。こういう人と話すととても楽しくなるよね。


それにそっか。ゆらちゃんも茶道部に入るんだ。知っている人がいるというのは心強い。

これからやりやすくなるかもしれない。

私は茶道の経験がまだ一度もないのでワクワクしているが、先輩方とも関わるから、同級生がいるというのはコミュニケーションを円滑に進めやすい。話題を一緒に考えたり、それぞれの考えを出すことが出来るからね。


「ゆらちゃんともっと仲良くしないとね」



⭐︎



学校の休み時間、えりとゆらちゃんと話していた。ゆらちゃんのポジションは私の後ろである。髪を梳かしてくれてるみたい。


「今日の朝ランニングしてたら渡辺くんと会ってね、少し話をしたんだ」


「ふーん渡辺くんと会ったんだ、てかそれよりもあおちー朝ランしてるの?!」


「うん、朝のランニング気持ちいいよ」


「葵様は運動がお好きなんですか?」


「そうだね、それなりには好きだよ。だから体育も楽しみにしてたんだけど、来週からなのは少し残念」


「…あおちーのそれ大きいのに揺れて痛くないの?」


それと言って私の胸を凝視するえり。

そんなに見ないでください。恥ずかしいです。


「痛いけど固定力強いのつけるから大丈夫」


私は運動するとき海外製のスポーツブラを使っている。お値段は安くないが固定力は流石のものである。自国産のスポーツブラは可愛らしいものだったり、透けるのを防止するものだったりするものがあるが、固定力が足りない。胸は揺れると結構痛いので、ガッチリと固定できるものがあると揺れが抑えられて、全力で走っても痛みを感じにくい。


「ふーん、そういうもんなんだ」


「うん。ゆらちゃんありがとう」


ゆらちゃんにありがとうと言い頭を撫でてあげる。もじもじしてるの可愛い。えりはこっち見てどうした。


「えりどうしたの?」


「いいや別にー?あおちーに撫でられてうらやましーなーとか思ってないしー?」


「撫でてあげようか?」


えりは冗談を言っているのだろう。だから私も冗談で返してみた。その間ゆらちゃんはなにやら思ったらしく、私の後ろ側に戻った。

髪いじるの好きなのかな、ゆらちゃん。


「…撫でて」


顔を赤く染めて目を閉じているえり。

は?これは可愛すぎないだろうか。母性が溢れ出してくるのを抑えられず、衝動的にえりの頭上に腕が伸びた。


「今日は甘えん坊だね、えり」


「ん…」


なでなでー、手を止める。名残惜しそうにこちらを見る顔。可愛すぎてやばい。なでなでー、手を止める。これは永久機関ができちゃったね。えりが以前一生撫でられるって言ってたのも納得かもしれない。


ゆらちゃん大丈夫そう?急に床にうずくまってるけど…



⭐︎



放課後部活の時間になった。

ゆらちゃんを連れた私は茶道室と書かれた部屋の前に立っていた。


「ここで合ってるよね?」


「はい、間違いないかと」


コンコンコンとノックをする。

すると中からはいと声が聞こえてくる。


「いらっしゃい貴方達が最後だね」


「初めまして一年の白凪葵と申します」


「双葉ゆらです。よろしくお願いします」


いらっしゃいと中から出て来たのは、部活動紹介でも前に出て発表していた女の人だ。


「うん、よろしくね。私は茶道部部長の高橋菫。気軽にすみれって呼んでね」


彼女の名前は高橋菫(たかはしすみれ)先輩。

セミロングの黒髪に凛とした顔立ち。それにスタイル抜群。人の胸ってこんなに大きく見えるんですね。本当に茶道部ですか。


「よろしくお願いします、すみれ先輩」


「うん、ここじゃあなんだし、中に入ろうか」


失礼しますと言って部屋に踏み入れる。

これは…和風な雰囲気でいいですね。

8畳のスペースが設けられた茶道室、必要最低限の道具が備え付けられていることからお茶を嗜むための部屋であることが伺える。先に部屋にいるのは、おそらく先輩方に、私たちと同じ新入部員と講師の方だろう。室内に入ると視線が注目するが、気にしないようにする。さてそろそろ講師の方の説明が始まるみたいだ。


「この茶道部では、私が教える表千家という流派についての作法と、基本的な流れを説明します。もちろん初めての方も多いでしょうから、ゆっくりやっていきましょうね。まず初めに自己紹介をする前に…座りましょうか」


私たちは立ったまま説明を聞いていたので、座るように促された。

靴を脱いで、揃える。畳の上に足を踏み入れると、なんとも懐かしい気持ちになった。おばあちゃんの家みたいな気持ちだ。

少し感動しているとゆらちゃんに袖を引っ張られた気がしたので、意識を戻す。えっと、畳の端から12段目くらいに膝を揃えますと。こういうのも決まってるんだなぁ。


「みなさん定位置につきましたね。それでは部長さん、自己紹介を始めましょうか」


「はい。それでは部長の私から自己紹介させてもらうね。私が終わったら3年生から順番に自己紹介していこう」


改めてすみれ先輩の自己紹介を聞く。彼女はどうやらお茶が好きで一年生の頃から茶道部に入部しているらしい。一年生から続けているのはすみれ先輩とその隣に座っている、眼鏡が特徴的な女の人だけらしい。男の人も一年生の頃には何人かいたらしいが、何かを諦めて辞めていったそう。一体なにが。


一通り自己紹介が終わり、これからの活動予定について説明が入った。ちなみに眼鏡をかけている人は、すみれ先輩の同級生である樋口真衣(ひぐちまい)という名前らしい。彼女の特徴としては、少し大きめな丸眼鏡にぱっつんめな前髪で、いかにも勉強できますといった外見だ。そして自己紹介で、すみれとずっと一緒にやってますと何故か強調してた。その間すみれ先輩は耳が赤くなっていた。なんだ…これは…


「えっと部活は基本火曜日と金曜日にあるよ。講師の先生は金曜日に来てくれます。なので火曜日はお茶とお菓子を楽しむ感じで、金曜日はそれプラス礼儀作法があるよ」


なるほど、講師の方は金曜日のみ来るのか。

そこで礼儀作法の練習をすると。


「それで茶道部は年間でも少ない活動だけど、文化祭で披露したり、お茶会に参加したりするよ」


文化祭か、着物着てやれるならめちゃくちゃ楽しみだな。お茶会でも着ることなるだろうし。

着付けの練習とかもあるのかな?あとで聞いてみよう。


「最後にこの茶道部では、活動風景をSNSにアップするよ。理由は知名度を上げるためとか学校PRになるからっていうのもあるけど、写真に残すことで部員の向上心をあげる狙いがあるよ」


SNS?!大丈夫かな

プライバシーとかしっかり守られているのだろうか。それに私は結構目立つ髪とかしてるので顔を映されると、身バレのリスクが少しあるんだよなぁ。有名人じゃないけどね。


「もちろんプライバシーを侵害するつもりはないからNGの人は言ってほしいかな。」


私は、多分大丈夫かな。

それに学校紹介のための写真なら、学校探しとかする人の目ぐらいにしか入らないだろう。実際私も大学の部活PRぐらいしか見たことがないし。知名度が低いというわけではないだろうが、バズったりしない限りこの茶道部にはこんな子達がいるんだなーくらいで終わるだろう。

ん、ゆらちゃんどうしたの?写真大丈夫かって?多分大丈夫だよっと。


「みんな大丈夫ということで。なにか質問はある?」


「着物の着付けとかの練習はしますか?」


「うん、写真撮影するために基本着物着るからね。毎回出来ると思っていいと思うよ」


「わかりました。ありがとうございます」


着物毎回着れるんだ。楽しみだな。

こうして高校生活の部活動が始まったのであった。そして初日からタイトル:新入生部員というもので投稿された。


この投稿がバズることを葵はまだ知らない…

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