第5話 百合の間に挟まる女
おはようございます、と
やたらと朝からLOINに通知が届く。
交換した渡辺くんをはじめ、他にも交換した人達から同じメッセージがくる。
そういう文化があるのだろうか。とりあえず返しておこう。最近買った猫のスタンプを使って返していく。
そういえばみんなグループがあるのに私個人に送ってくるだなーと思いながら通学路を歩いている。今日もえりと待ち合わせしているから。
「えりおはよう」
「おはよーあおちー。今日も相変わらずかわいいね」
「ありがとう。えりも可愛いよ」
容姿に自信あるからねぇ、否定することはしない。またえりも可愛いと思ったのでそう返す。
今はえりと仲良くなることができたので、ギャル第一段階であるカースト上位には食い込むということが達成できているだろう。係で学級委員になったのも結果的にはよかったのかもしれない。クラス中と仲よくなっていると思われる渡辺くんと、関わる機会が増えたからね。
「春なのにまだ寒いねー」
と言うえりはブルブルと震えるそぶりを見せる。うちの高校はスカートが短めになっているがそれを更に折っているようだ。そりゃ寒いよ
。ほらほら手貸しなさい(おばあちゃん)
「手あたためてあげる」
手を握って私のポケットに一緒に入れる。ほう、えりの手めちゃくちゃすべすべだな。それに冷たい。冷え性なのかな。私は手が温かい方なのでこんなに冷たくなるのは少し心配だ。
…それにしてもえり静かだな。少し気になったので顔を覗いてみる。うん、なんだかリンゴみたいに真っ赤になってる。そんなに冷えちゃったのかな。
「…あおちーそれやっぱり無意識?」
「え?」
「いや、なんでもない」
無意識…あぁ、そういうことか。
えりが冷えると思いそれはいやだなと思ったから温めてあげようと手を握ってポケットに入れたんだけど、ちょっといやだったかな。
これは申し訳ないことをした。
「えっと、ごめん」
「いや、大丈夫だよ。それにあったかいから助かってるよーありがとう」
よかった。えりには嫌われたくないからこれからは気をつけるようにしよう。
玄関に着いた頃今日の予定について話していた。
「今日は身体測定あるみたいだよー」
「そうなんだ」
「うん!わたしはそこであおちーの秘密を暴いてやるんだ その夢を掴むために」
ぎくっ、私の夢がバレている?と一瞬焦ったけれど、よく見たら私の胸に凝視していたため違うようだ。まだ高校生だからね、えりもこれから成長していくよ。大丈夫。
靴を履き替えようと下駄箱を開けると、パラパラと紙のようなものが落ちてきた。
「手紙?」
「はっ、これはラブレターでは?」
と、えりがのぞいてくる。
ラブレターか。見たところ3枚ほどあるようだ。こんなイベントもあるもんだな。前世ではもちろん未経験であるし、今世では告白されることはあっても手紙をもらうのは初めてかもしれない。うむ、開いてみると放課後〜にきてくださいというものが書いてある。他二つも同じようだ。
「えり、複数きた時ってどうすればいいの?」
「えー、そうだなーこれメアド書いてあるし、時間指定してみれば?」
どうやらどれもメールアドレスが書いてあるみたい。じゃあ追加してと。
んー見た順でいいか。何時に向かいます、と
「それよりあおちーは誰かと付き合う気はあるの?」
「いまのところその予定はないかな。私にはえりがいるし」
「もーからかわないでよー」
といいつつ嬉しそうにするえり。かわいい
「でも、あおちーにカレピとかできるってなったら私がチェックするからね!」
「できないよ」
彼氏はいりません。今世女の子だから男が好きなるわけではない。
むしろ、私は彼女が欲しいです。
⭐︎
身体測定の時間だ。
私は体操着に着替えるために、更衣室にいた。
さて、どうしよう。目のやり場に困る。
そこにはキャッキャッうふふと女の子同士が密集しているではないか。
私は改めて女の子に生まれたことに歓喜した。 と同時に緊張していた。
「あおちーどうしたのー固まって」
「己と戦ってるだけ」
できればあまり近寄らないでください。みなさんどうして下着姿でいるのですか。早く着替えてください。
「それにしてもあおちーやっぱでかいねー。なにが詰まってるのこれ」
「白凪さんすごいよね ちょっと触りたいかも」
「それをよこせー!」
確かに私の胸の発育は大変素晴らしいものだと思うけど、その発展途上なものも素晴らしいですよ。だから目をギラつかせて近寄らないで!
身の危険を感じたためすぐに着替える。
「ちえー残念」
「でも体操着姿もなんかえっち」
「「それね」」
この人たち怖い。
女の子の怖さを改めて実感するのだった。
身体測定が終わった後、体育の授業があったのだが今日はオリエンテーションだったため、特に授業という授業はしなかった。
次の授業から本格的に始めていくらしい。
ちなみに次の授業から体力テストをやるみたい。いきなりすぎない?みんな休みで体力落ちてると思うんだけど。
私も少し体力が落ちているかもしれない。
高校に入ってからしっかり運動してないからね。朝のランニングくらい?(5キロほど)
私は運動するのが好きである。
だから体育は全力でやるつもりだ。中学の時はある程度抑えていたが、男子とタメを張る強さだったと思う。だから女子グループで運動するのはちょっと卑怯になってしまうかも知れないけど、ギャルは強いのだ。これに限る。
だって体育祭とか活躍するのギャルとかじゃん?応援だってすごい声だすし、実は足めっちゃ早いですみたいなの。かっこいいよね
私の印象づけにもなるし私自信楽しめる。
やるしかないよね。
来週の体育が楽しみになってきた。
そんなこんなで今日はもう放課後。
あとは帰るだけ、ではなく呼び出しをどうにかしないとね。1人目は空き教室みたいだ、向かうか。その前に挨拶してと。
「えり部活頑張ってね」
「そっちも頑張ってねー。でもくれぐれも気をつけて! 変な人について行っちゃダメだからね!」
「大丈夫だよ」
君は私の保護者か、とか思いながら心配してくれたことに感謝して手を振る。
よし、行くか。
それにしても1人で学校を歩き回るのは初めてかも知れない。えりと会ってからはずっと行動を共にしてるし。あれ、えり友達できてるかな?私とずっと一緒にいる気がするんだけど。
と考えながら歩く。
それにしてもやけに視線を感じるな。
私を物色するような視線だったり、顔を見て、なにやらひそひそ話してる人をちらほら見かける。まぁ、特に話しかけたりしてくるわけでもないからいいか。
〜少女歩き中〜
見てあの人!かわいいー!
お人形さんみたい!
〜少女歩き中〜
着きました!いや、遠いわ。
この学校こんな教室いっぱいあるんだなー。
さて、時間もちょうど良いし行きますか。
「こんにちは」
⭐︎
はい、2人ほどお話ししてきました。1人目は背が高い男の子、2人目は私と同じくらいの身長をした子だった。結果は知っての通り告白でした。もちろん振りましたよ。
私には伝家の宝刀があるからね。
その名も"私は女の子が好きです"である。
これなら男の子はみんな一度、は?ってなるけど多様性なので良いですよね的なこと言って、去っていく。強いねこれ。
まぁ、男の娘とか女の子がきたらちょっと困るけれど、その時はまた別の方法で回避する。いや、女の子は嬉しいけどね。
私にも好きな人くらいは選ばせて欲しいからね。
「さて、最後の1人は…私の教室か」
最後の子はどんな人だろうか。手紙の字を見た感じ、丸みを帯びていて可愛らしいものだった。これは女の子なんだろうか。
そしたら私の伝家の宝刀通用しなくない?
あれちょっとマズイ、なにも考えてないや。
考えているうちについてしまったようだ。
うん、流れでいこう。
ガラガラガラ
扉を開ける。そこには可愛らしい姿をした女の子が窓辺に立っていた。
その子は私に気がつくと、顔をパァと明るくしてこちらに小走りで近寄ってくる。
ほんとに女の子だったんだけど、どうしよう。
というかこの子同じクラスの子だな。
「来ていただきありがとうございます!」
ぺこりとお辞儀をする。
姿勢正しいな。
「あの!私応援してます!!」
「え?」
「あ、申し遅れました双葉由良と申します。」
彼女の名前は双葉由良(ふたばゆら)さん。
背が小さくてセーターで萌え袖を作っている。髪はショートヘアで彼女の幼さを引き立たせていて似合っている。
「混じらないので近くに居させてください!」
さっきからこの子はいったい何を言っているのだろうか。てっきり告白かと思ったけど。
だけどおそらくこの子は、私達と仲良くなりたいのだろう。だけど言うタイミングがなかったからこうして時間を作った。言葉が少しおかしいのも緊張しているからだろう。それならもっと普通に話してくれていいのに。
「うん、でも友達として仲良くしようよ」
「はぁ、いいんですか!願ってもないです!」
「ありがとう。それじゃあ名前呼びでいい?双葉さん」
「もちろんです白凪さま」
様ってなんだ。私は君にとって一体何者なんだ
「ふふっ、これからよろしくね。ゆらちゃん」
「はい!葵さま!」
やったーとガッツポーズをしながらその場で足踏みするゆらちゃん。なんか幼い子の面倒見てるみたい。妹とかできたらこんな感じなのかな
そういえば応援してるってなんのことだっけ。
⭐︎
告白イベントをこなした次の日からゆらちゃんは私たちの元を訪れていた。
「えり紹介するね。昨日手紙をくれて私たちと友達になりたいって言ってくれた双葉由良さん。ゆらちゃんって呼んでいいって」
「はわわ、葵さまから紹介していただけるとはとても嬉しいです!」
なんかこの子大げさだよなぁ。
まぁ、そう言うお年頃なのかもしれない。
「かわいーねゆらちゃん。私のこともえりでいいよー」
「はい!英理さんよろしくお願いします!」
えりはさん付けなんだ。
やっぱりなんで私に様つけるんだ?
「膝の上乗せてあげよっか?」
えりがニヤニヤしながら問いかけている。
早速ゆらで遊んでるな。
「の、のりま、のりません!」
「ちょっと迷ってるじゃん」
うむうむ、微笑ましい気持ちになるなぁ。
美少女と美少女の絡み合いは見てて心が安らぐ
。私も少し悪ふざけ乗ってみるか
「それじゃあゆらちゃん、おいで」
手を広げ構えてみる。ほらほら私が抱擁してあげるよ。私の体結構筋肉質だけど側はムチムチで柔らかいから触り心地いいよ。
「はぅ、葵ママさま」
ママ様って、またなんか変なの増えたよ。
ゆらちゃんは私に抱きついてくる。主に胸に顔を押し付けている。可愛いから許すけど。
娘ができるとこんなかんじなんだろうなーとか思っていると、突然ゆらちゃんが飛び跳ねた。
「ぴぃ!」
わ、びっくりした。どうしたんだろ。
なにやらえりに謝っている。なんかしちゃったのかな。
「あおちー、私も抱きついていい?」
「え?うんいいけど」
えりが私に抱きついてくる。今回も先ほど同様胸に顔を押し付けている状態である。私ハーレムしてない?美少女と抱きつけて嬉しいです。
でもさっきよりちょっと恥ずかしいかも
「えり、ちょっと恥ずかしいよ」
「すーはー これはクセになりそー」
いや、吸わないでください。私は猫じゃないので。それにえりにされるとなんだか心がゾワゾワするかも。これが母性ってやつ?
いや、なんか違うかも
「はい、お詫びにわたしにも抱きついていいよ」
えりがそう言いながら腕を広げている。
いいんですか?それでは失礼しますね。
私はおそるおそる胸に迫る。
「ん、これは落ち着く」
なんというか顔面でボディタッチしてるみたいでなんともいえない気持ちになるけど、率直な感想これは確かにクセになりそうである。
えりの程よく肉付きのいい体と発展中である胸にダイブするのは正直かなり気持ち良い。
自分の胸より他の人の胸の方がやわらかく感じる気がするのもあるかもしれないね。
あ、えりまた赤くなってる。恥ずかしいのかな
「かみさまありがとうございます」
なにやら神様に感謝してる声が聞こえるが気にしないでおこう。
こうして私とえりの間に新しい友達が増えたのであった。
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