酒は飲んでも
「うい!それじゃ、おつかれしたー!おやすみなさーい!」
配信終了のボタンをクリックして肩の力を抜く。
よし、今日もいい感じに配信できたな!
いやぁー、久しぶりのホラゲだったけど、俺にかかればヨユーだったな!がはは!
「はあぁぁ、ふぅーー・・・」
いい感じに酔いが回ってきたな。
今日はお酒を飲みながら配信した。題して飲酒ホラゲ・・・まぁ、よくあるやつ。
「んっ、んんーーー」
アルコール度数は3%のお酒だけど、十分酔っぱらえる体質。
おい!今『ロリはお酒飲んじゃダメでしょww』とか考えただろ!俺はロリじゃないし、セイジンしてるし!
「こはくー、配信お疲れ様ー」
深夜にも関わらず、勝手に遥が俺の部屋に入ってくる。
いつもなら遥はもう寝てるはずなのに。
「んぁ?なんでまだ起きてるの?」
「映画見てたら気づいたらこんな時間で。せっかくだからこはくに構ってあげようかなって思って」
なーんだ、ただの夜更かしか。
「こはく、顔ちょっと赤いね。そういえばお酒飲むって言ってたっけ」
「んーー、美味しかった」
「そっか。お酒美味しかったねー。よしよし」
「ふみぃ・・・」
今は気分がいいから、ナデナデも許してやろう。特別だぞ?
「あれ?今日は大人しく撫でさせてくれるんだ?」
「とくべつ」
「やった。こはくちゃん、こっちおいでー。いっぱい撫でてあげるよー」
ベッドに腰かけた遥が膝の上をトントン叩く。
ここに座れと言いたいのだろうか。
「うぃっ」『ぽすっ』
まったく、しょうがないヤツだ。
サービスして膝の上に座ってやろう。
「んん~~!こはく可愛い!」
「うみゅぅぅ・・・」
たまには、遥に撫でられてやるのも悪くないな・・・
「・・・」
「みゅぁ・・・」
「・・・・・・」
「ちゃんとこっちも撫でろ」
頭頂部ばっかり撫でるから、遥の手を掴んで猫耳の根本に誘導して撫でさせる。
「こ、ここだよね?」
「うにゅ・・・」
遥にしては悪くない撫で方だ。褒めてつかわす。
「・・・・・・」
「はぁっ、ふああぁぁ・・・」
「・・・ねぇ、こはく?大丈夫?」
「遥は黙って、撫でていればいーの」
撫でたいって言ったのは遥なのに。なんで途中で止めようとするんだよ。責任取ってちゃんと撫でろ。
「ふみぃぃ・・・」
「・・・・・・」
「遥、いつもありがと」
「急にどうしたの?そんなに強いお酒飲んだの?」
失礼な。3%の果汁ハイだ。
「・・・もういい。満足した」
「えぇ?そんな気まぐれに・・・」
満足したら、体がポカポカして眠くなってきた。
『ぼすん!』
遥の膝から降りて、ベッドの上に大の字で寝転がる。
「こはくちゃーん?」
暖かい体に心地いい微睡が降りかかる。
目を閉じて穏やかな呼吸をするだけなのに、どんどん気持ちよくなっていく。
「んっ、すぅ・・・」
「ねえ、こはく・・・寝ちゃった?」
「・・・・・・」
寝てない。だけど返事するのが億劫で、何も言わずに寝続ける。
『パシャ!』
シャッター音。大方、遥が勝手に写真でも撮ったのだろう。
それよりも、今はこの微睡に身を任せていたい。
「おおー、こはくのほっぺたプニプニしてる」
「んんっ・・・」
何かに頬を突かれる。鬱陶しいそれから逃れようと頭を振る。
「ごめんごめん。ほら、なでなでー」
「すぅ・・・すぅ・・・」
慈しむように頭を撫でる手に、なぜか無性に安心する。
例えるなら、子どもを寝かしつける母親のような・・・
――――――――――
「くっ、あーー・・・」
やべ・・・寝てた。今何時?俺のスマホはどこだ?
「2時・・・ってことは、2時間くらい寝ちゃってたか」
運よく近くにあった自分のスマホで時刻を確認してみると、丁度深夜の2時を回ったところだった。
配信を終えたのが0時くらいで、それから遥が来て2時間・・・
んん?遥?
スマホに表示されている1件の通知。遥から何かメッセージが送られてきていると書いてある。
嫌な汗が背中に流れるのを感じながら、件のメッセージを開く。
「ぎゃあああああああ!!!」
少し服がはだけた猫耳少女が、ベッドの上で無防備に寝ている写真が表示される。
間違いない。この猫耳少女はつい2時間前の俺だ。
「ちくしょう!ヤられたッ!」
俺の寝顔を見られただけじゃなくて、いやまあ、それも十分ダメなんだけど、一番ヤバいのは遥のスマホから写真が送信されている。
つまりこの写真は遥が撮ったものであり、遥がクラウドにアップしてしまえば俺は手出しできないということ。
そして更に最悪なことに気が付いた。写真には一言のメッセージが添えられていた。
『壁紙にするね』の最悪の一言が。
「はるッ、遥あああぁぁああ!!!!!」
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