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時計が正確に時を刻むあの一瞬が恐ろしい、生きていることはぼくの肉体を含めて自然にとっては錯覚にすぎないんだから、だから錯覚だとホントの意味で気づき、ただ意志や思念というものが肉体となんの関わりのなく、狂いなく針を刻んでいる状態の時にぼくは死んでいるのであって、そこから戻れなくなること、今しか考えられなくなること、時計が狂い過去を指し未来に飛ぶその反復が一切経験できなくなること、それを怖がることは馬鹿げているとわかってるから恐ろしいのだ、
生きるためには言葉はほとんど必要とされていない、一切話せなくても生きるには不自由を感じるかもしれないが、事欠かない、抑圧に対する反撥だけが、生だから、それが、なくなってしまえば、生命活動の是非に関係なく死んでいる、問題は死ぬことじゃない、生き返らないこと、生の連続のある一点一点から乖離して飛んでいく持続としての生≡死は、無作為に他人がスイッチを押すように、挟み込まれ、外科的に生を切り刻み、刻み込んだ当人たちはこう言う「力を尽くしたのですが、残念です」「いや、終わらせてくれてありがとう」また一秒、経験の形態、被造物である日、時、分、秒を剥ぎ取ってもぼくを引き回す時の矢が残る、各思考や知覚が切り抜かれ、バラバラにされ、貼り付けられる、分裂を強要された時代、分裂が模範の時代、どうして、デタラメの意味、デタラメの文は、隣の文と本来まったく関係がないのに、統辞的に正しいなら、意味を汲み取れる、産み出したぼくは全然そんなの望んでないのに、望まれず産まれた子供たち、その一人、そんなの言うまでもないでしょ、目の前の死んだ虫の詰まった弁当箱、ぼくのちっぽけな、無限小の羞恥心が、それは嗤われ罵られ、そうやって非人間化すれば、暴力も震える、間違えた、振るえる、だって、ただ人の形をした動物だから、実際にそう、そうってなんだろう、なんで当たり前のようにぼくはあらゆる出来事を同じ箱の中に入れられるんだ、そういう体験をするまで気づかなかった、腐った牛乳を頭からかぶって、わざわざ腐らせていただいて、お手数おかけします、ぼくは周りにつられて笑った、笑われものと笑うものの一致、笑わせるものの苦痛をいつも考える、周りからの期待、そしてそれはすぐ失望に変わる、に応えようとするプレッシャー、ライバルへの嫉妬、そんな状況よりずっといい、ずっといいって思うけど一瞬なんでもない時に思い出してしまうことがあって、時々どうでもいいって思えなくなる、この前、っていってもぼくには時間を把握する能力に恵まれなかったらしくてxxxx年xx月xx日xx:xx:xxを埋められない、いや、時間は存在しない、時間は存在しない、そんな感じになって、ありもしない脳圧が高まる機運を感じたんだけど、たまたまその時鏡で自分の姿を見たんだけど、ぼくが写ってるのにまるで別の誰かみたいだった、身体を間借りして宿主喰い尽くした寄生生物、けど、けど、あまり考えたくないから、この便利な逆接を乱用させてもらう、このお断りを入れないと、誰かぼくの頭の中を直接観察している存在が面食らうかもしれない、ぼくの作文だけ先生の気に召さなかったみたいで赤ペンで落書きされてたのを、今思い出した、鳩が豆鉄砲、現代的なアスファルト道路の上にいる鳩と豆鉄砲持った子供、小学校低学年みたいだ、後ろ姿で顔なんて見えないのに、悪意まみれのニタニタ顔がわかる、生唾飲み込んで見守ると、いつの間にか開けた車道が教室に変形して、鳩は膨張して人へと形態転倒してった、豆鉄砲はロケット花火にモダナイゼーションされて、エアガンのバレルをむき出しにして切り詰めたプラスチックのパイプを2本ガムテで巻いて止めて着火のための穴を下部に開けられた、無邪気な悪意の精髄、ああ、あの頃のありきたりの日常がまた始まってそれを考えないようにするけど抵抗できなくて、うんざりすると同時にぼくはこうやっていじめられて虐待されるのがすきだったことも思い出した、第一に必要されてる、第二に生きているって、実感できたから、その生が外界の刺激の強弱によって現実の確実性も変動するっていうのが、この生が直感によって始まって感覚によって条件づけられた幻想に過ぎないっていう一つの根拠になってるんだけど、
今のぼくの年齢は何歳なんだろう、無害な思い出にどんな顔して浸ってるんだろう、そんなの知ってても意味のない数字だよ、いい歳こいて、肉体を現在に置き去りにして精神は過去を彷徨ってる、うまく言い表せない、
独断してる間は自分を帝王だと思えた、一人しかいない帝国のひとりぼっちの帝王、認識にタクトを振るってつなぎ合わせ、メスを振るってバラバラにする、
蒙昧 @Yoyodyne
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