蒙昧
@Yoyodyne
1
身体を刺す静けさに思わず身を捩った。
擦り切れた脳の灰色の部分が発火し存在を主張する。
過ぎ去っては消える過去が現実から切り離された思念が回転木馬のように流転しながら人格を拷問にかける。
思考感情欲望は規定された形式に従う。
人を神格化したところで人から形成されたものや自然がコントロールできるわけでない。
常に考えそれが無駄になり跡形もなく消える。
因果関係を無視し挟み込まれた文字列が新しい文脈に権威を伴った文脈に従うことを強要する。
元々言語には限界がある。人の想像信念感情を伝えるには言語は不完全すぎる。
だからといって、人工言語(エスペラント語のような自称自然言語の不自然な言語体系)は”エスペラント。虚構の派生シラブルを持った虚構の言葉を口にすると吐き気を催す。その言葉は冷たく、なんの連想も呼び起こさないくせに、言語のような「顔」をしているのだ。”
また人が死ぬ、人は人が死ぬのが好きだ、利他的感覚とは人が他者を楽しませるために死ぬことである。人は葬式のドライアイスの冷たさに悦びうち震える。人は自分が死ぬことを忘れるために他人の死を見たがる。大量死(それが人為的でも自然災害によってでも)も個人の死も単なる数字でありそれだけではない。それはまなざしに晒される事によって脚色されたナマの死に立ち戻ることのできない不可逆的な”死”である。
いや、本当にそうなのか?人の死をメディアから━身体の感覚的機能を拡張する━その場に居なくともそれを感覚(断片)的に知る━ためにその存在を容認するあの目に見えない処女膜━目の中に処女膜がありその処女膜は決して破られることのない”アノ”石の処女膜━得る情報は本当に現実味のある存在なのか?
人が死ぬことがどういう事かわからないのに人が死ぬ物語りを見ることで自身を安心させているだけではないのか?
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*ブレーキ音
[目の前で悲鳴が上がり身が千切れ折りたたまれ再構成された女の…若く瑞々しい女の死体になりつつある偶然のパッチワーク
死でも生でもない持続の一瞬を確かにその時私は見た。不完全な人間本性が融解し結合し心身ともに固体化すると同時に完全になる時…複雑に組み合わさったやや不明瞭なその顔は微笑みを湛えてた]
[白味を帯びた内蔵がこちらに顔を覗かせている。真っ白な脳はダラリとこぼれ落ち、今思い返せば、それが地面に落下した衝撃でパリンと砕けた瞬間を見た気もする。いや、このような鮮明に記憶として残っているのなら見たのと変わらないだろう。地面に突っ伏した脳は自分の状態が未だにわかっていないようだった。そのすぐ側でうねうねと意思を持ったかのように蠢く腸に思わず吸い寄せられるように近づいた]
[死んだ女の笑みがあらゆる影の中にあるいは∵の形状の中に見える。対向車のハイビームの中に桜の葉の集積の中に人混みの中に水面に映る撹拌された自分の顔の中に土嚢の中に蓮の花托の一つ一つの中に]
[「ある日突然自分の人生に空白が多すぎる事に気づきあなたは自首したくなる。」その日ただでさえ強いものに脅かされ痩せ細った領土を何一つ文句も主張も行わないがただ奪う自然から守るために無駄な抵抗を続けるために舗装された海岸で死に抗う無意味なジョグを続ける労働バプテストを横目に波の動きを見ていると━━その海は、波は砕け流れ踊りやさしくあざ笑い生物も無機物も等しく静止した深淵へ引きずりこみ身体を捏ねくりまわし食い尽くし永遠のために生を循環させる━━
老人が話しかけてきた。それはあまりにも寿命以上に年を取りすぎてるために年齢を重ねる事すら拒絶されそれ故に人であるはずの顔貌はほとんど辛うじてそれが老人であると理解する以上に認識することができなかった。
「狼狽えたあなたは地上の権力たる国家の暴力装置にその身体を卑しい欲望のために明け渡したい欲望に駆られる。」と老人は言う。「]
老人だと思ったものはただの銀の鬘を被った女型のマネキンだった。
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