Smoke Dope
ディーラーは大抵一学年に2,3人は必ず居た。いなくても周りに聞けば調達元なんていくらでもあるほどウィードはありふれていた。
最悪ディーラーを知らなくても不良のたまり場に行けば簡単にありつけたし、すこし考えて行動すれば誰でも手に入るというのが実情だ。
これでまだ2000年初頭なのだから、合法となった今は変わりに変わっているのだろう。
SNSはあったけどまだそれほど普及しておらず、基本連絡はSMSか電話だった。レイザーのパカパカ携帯が最新だった時代だ。
まずディーラーに希望する量を伝え、在庫があると指定の場所で待ち合わせするよう返答がある。
ストリートで出回っているようなインディカ種のメキシカンシュワグは基本グラム$15、ダブ$20、エイトボール$40、ハーフオンスで$60ほど。
金のない俺たちクソガキたちはいつもシュワグのダブかエイスを割り勘して買っていた。
交渉が成立して住所を教えられるとそれをメモに取り、まだ手軽なGPSのない時代だったからMapquestで住所を調べ、最短ルートを調べて車を走らせた。
アメリカは15歳で仮免が取れるし、車を持っているやつが仲間に居れば急に遊びの行動範囲が300マイルほど広がる。ディーラーのもとへブツを買いに行く出発の時がなんともドキドキして楽しかったものだ。
基本我々は10人前後で固まっていたので移動するときも基本車二台か三台で、会いに行くディーラーが知らない大人でもギャングでも怖いという意識はなかった。しかし新規開拓はいつもトラブルがあった。
指定の住所でブツの交換を行うのはいつも緊張した。特に夜に行うディールは喉から心臓が出るほど緊張した。警察のおとり捜査かもしれない。パトカーが見ているかもしれない。ギャングに拉致られるかもしれない。相手が銃を持っているかもしれない。いろんな考えが頭をよぎる。
顔なじみのディーラーから買うならそうでもないが、新規ディーラーや日の浅いディーラーに怪しい場所を交渉場所に指定されるとやはり不安は付きまとう。
だからこそブツを交換する際は大人数で赴くのだが、場合によってはディーラーのの車の中に一人だけ入れと言われたり、ディーラーの家の中に入ったり、ディーラーがいるクラブやバーの中に入ったり、代表者が単独で調達を行わないといけない面もあったのでなかなかトリッキーだった。
こちらがガキだからと偽物やただの雑草を売りつける輩もいるので、舐められないようブツについての知識と交渉の技術をもっているやつがフロントに立ってディールするのだが、それは別の話。
当時俺たちにはメインのディーラーが二人いた。
ジャラルは中東出身の不良で高校を退学になりGEDをとりながら板金屋で働くクズだった。彼の周りの人間もやっかいで、こいつから調達するといつも面倒に巻き込まれたが、在庫の量とディーラーとしてのフットワークの軽さは満点だった。何時だろうが金さえ払えば届けてもくれる。
こいつは売買の味を占め、高校二年の終わりにメキシカンギャングのディーラーになり、夏休みが終わるころには中古ではあるもののベンツのC230を乗り回すほど稼いでた。しかしそこから彼の転落は始まり、コカインの売買が学校にばれて退学になり、さらに商品に手を出してしまいギャングに追われ、ある日突然連絡が取れなくなった。
もう一人のディーラーのマークはジャラルよりさらに年上で、マニュアルのIS300が自慢の小太り男だった。ジャラルと比べると在庫の量もフットワークの軽さにも問題があったが、彼が持ってくるネタはファイアなものが多かった。基本怠け者のアホで、時間通りに動くことはないものの、ネタの質が良いということで彼がジャラル失踪後のメインとなった。
マーク以外にも優秀なディーラーはいたが、我々はマークで「足る」を知った。なぜなら売買に真面目なディーラーは基本ガチ犯罪者が多かったからだ。
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