第20話:ブリーフィング
罠男に有効な対策は見つからないまま三日が過ぎた。
今日はクレアス達と一緒に狩りをする日だ。
冒険者ギルドのロビーの待合室で待っているとクレアスが現れた。他にも魔獣オタクのゲンゼンと色男のハインス。美人なマチルダに大女のセーラ。そして寡黙なクロトも一緒だ。
「コウメちゃぁーん」
そう言って近づいてきたのはセーラだ。そしてそのまま私を抱きしめる。そのおかげで顔がその豊満な胸に沈む。私は抵抗すらしない。別に悪い気がしないから。おっぱいは正義なのだ。その足元ではマチルダがケダマを無言で撫でている。よほど好きなのだろう。その顔がデレデレとしている。
「おいおい。いきなりそれかよ」
リーダーのクレアスが呆れ顔だ。
「いいじゃんね。コウメちゃんは可愛いから」
セーラが抗議する。当然マチルダも頷いている。クレアスが溜息を吐いて、みんなを改めてまとめ始めた。
「はいはい。それじゃあ打ち合わせを始めるぞ」
全員が頷き、それぞれ席に着くとクレアスが趣旨の説明を始めた。
「今回、戦う相手はゴブリンだ。それもかなりの数が群れている。恐らくだが王が誕生したのだろうと推測される」
私は首を傾げる。
「王?」
「そうだ。ゴブリン達の王。ゴブリンキングだ。名称は、まぁそのままであれだが、しかし群れの規模から考えるにかなりの力量や統率力が予想される。既に何名かの冒険者が犠牲にもなっているようだ。たかがゴブリンと言えども、数の暴力は侮れない」
全員が頷くのを見てクレアスは続ける。
「それから、近隣の村が一つ占拠されたらしいと言う情報も入っている」
ゲンゼンが頷く。
「となると村の開放からか?」
「いや、村の調査と開放には別のパーティが向かうそうだ。俺たちは王がいるであろう森の奥を目指す」
マチルダが手を挙げた。
「何だ、マチルダ」
「森の王を討伐しに向かうのは私達だけ?」
「いや、他に二組のパーティとの合同だ。一つは『紅の風』と言う名のパーティだ。そしてもう一つが『餓狼』というパーティらしい」
マチルダが首を傾げる。
「聞いたこと無いね?」
セーラも頷く。
「うん。ランクは?」
「それぞれパーテイランクは俺達と同じ銀級の三つ星だそうだ。『紅の風』の方は最近東方から流れてきた腕利きらしい。『餓狼』の方は最近星が三つになったばかりの新鋭だそうだ。ちなみにこちらの今までの活動拠点は王都だったらしい」
セーラが「うぇぇ」と舌を出す。
ハインスが手を挙げて質問を始める。
「それで? この面子の音頭は誰が取るんだい?」
「ランク的には、この街の近辺にも詳しい俺達なんだが……」
「なにか問題でも?」
「あぁ。どちらのパーティからも色よい返事は貰えていない。連携は難しいかもな」
「それぞれの言い分は?」
「『紅の風』からは実力の解らない相手の下に付く気はないとのことだ。『餓狼』の方は…… 田舎者の下には付きたくないそうだ」
セーラがまたもや唸り舌を出す。私も手を上げてみた。
「何だコウメ?」
「王都の冒険者ってそんなに嫌な連中なの?」
「あぁ…… いや。まぁ何というか」
口を濁すクレアスに変わってセーラが答えた。
「うん。嫌な連中が多いね。何かと王都以外を見下してさ。はん! あたしらからしたら、王都なんて言う生白い場所で育った、ヒョロヒョロのお坊ちゃん達に何が出来るのさってもんだね!」
そう言って鼻息も荒く文句を垂れた。
クレアスが纏めに入る。
「さて、だいたいそんなわけだ。連携は視野に入れず、お互い不干渉で行く。つまり狩りは早いもの勝ちだ」
これに全員が「おう!」と気勢を上げて頷いたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます