第21話:アサルトライフル
東の森とひとえに言っても、その実それは南東方面へと伸びているかなり広大な森だ。森の更に先には大小様々な山が連なっている。
まさに大森林地帯だ。奥には何があるのかは全くの未知の領域となっている。
ちなみにこの大森林地帯を迂回した先にはサバンナ地帯が広がっていて、そこには異種族が住んでいるのだそうだ。これは東方の民と呼ばれる、サバンナ地帯よりも更に東の地からやって来た異民族によって伝えられている話だ。
「異種族?」
私の疑問に答えたのはベンゼンだ。
「うむ。何でも人間のような獣だそうだ。獣人と呼ばれているな」
「へぇ。居るんだ? 獣人」
「ん。まぁあまり交流がないから、そうそう見れるもんじゃないがな」
「それは一度、見てみたいなぁ」
「そうだな」
そんな会話を交わしながら、森の浅い層を歩いている。もうそろそろ中間層と呼ばれる区域に入ろうかというところだ。
ちなみに私が今日、持参した武器はアサルトライフルと呼ばれる突撃銃だ。
その中から選んだのはSCAR-Lと呼ばれるモデル。
SCARにはLとHがある。これはLがLight(軽い)でHがHeavy(重い)の意味で銃身の大きさや重さの違いは使用できる弾の違いにも影響する。
Lightは5.56mmNATO弾しか使えないのに対して、Heavyは7.62mmNATO弾も使用できるのだ。
弾の口径の大きさはそのまま攻撃力だと思っていい。
特殊部隊のために生み出された代物で多機能性と汎用性を持つ。
本当はHK416というアサルトライフルを持ちたかった。
こちらのほうが性能がいいのだ。しかしゴブリン相手に勿体無いということで、こちらを選んだ形となる。
銃を胸の前に下げ歩いていると、さっそくゴブリンが登場した。
数は全部で五匹。
クレアスからの合図だ。私の戦力分析をするために倒せとのこと。
私はSCAR-Lを立ち射ちの姿勢で構える。そして三点バーストでゴブリンを狙い撃っていく。タタタン。タタタンと。
そしてそれは一分も掛からずに終了した。これにはクレアスは呆れ顔だ。
「おいおい。とんでもねぇ武器、持ってんな?」
私はニヒヒと笑う。
その間にマチルダがゴブリンの傷の形状を調べた。
「ふぅん、なんか小さな物質を高速で飛ばしているんだね?」
これに私は頷く。予備弾倉から弾を一発引き抜いて見せる。
「これの先端部分を飛ばしてんだ。後ろの部分を爆発させてね」
「なるほどね。とんでもない代物だね」
そう言って苦笑いをするマチルダ。クレアスが問う。
「俺達でも使えるのか?」
「うぅん、どうだろう? 訓練は必要かも。持ってみる?」
「あぁ、すまんな」
私は銃のセレクターと呼ばれる場所を操作して、安全にロックしてからクレアスに渡そうとした。すると銃がフワッと消えたのだ。これには私が驚いた。クレアスはあまり驚かず納得顔だ。
「消えた……か。という事はやはり譲渡不可か。なるほどな」
これに私が首を傾げる。
「何か分かったの?」
「あぁ。これは固有スキルに該当する現象だ。そいつだけに使える固有の能力とでも考えればいい。触ってみたかったがそうとなれば残念だ」
そう言って、あっさりと所持を放棄した。
私は再度、ウィドウのショッピングからSCAR-Lを取り出す。
「ナイフは大丈夫なのにね?」
「そうだな。でもまぁこればかりは、そういうものだと理解するしかない。さてそれじゃあ、そろそろ行くか。そろそろゴブリンのテリトリーだ。コウメの立ち位置は弓やクロスボウと同じ立ち位置だ。弓のハインスと一緒に行動しろ。いいな?」
「あい!」
「クロトは二人の護衛を頼んだぞ?」
「分かった……」
「オレとセーラとゲンゼンが前だ。行くぞ!」
そうみんなに指示を出して、再び歩き始めたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます