第12話:消え入りそうな生命

 雑貨屋で日用品を店員に見繕ってもらい、宿に戻って荷物を置いた。現在時刻は一〇時を少し回ったところ。


「時間、余っちゃった。どないしよ」


 少し悩んだ末に、街の外へ出ようと考えた。ゴブリン程度なら何とかなるし、キャッシュも欲しいからだ。


 街の外へ出るべく準備を始める。とは言ってもククリナイフとハンドガンを装備するだけだが。


 確か東の門から出た先が森だと聞いた。


 というわけで、東の門へ向かって進む。


 その途中で薬を扱う店を見つけた。森に行くなら虫よけが必要かと中に入って、ついでに怪我をした時のために傷に効くというポーションも買ってみた。


 結構な値段がしたが、まぁかなり効果があると期待していいだろう。


 門から出るのは自由なので簡単に出られた。門を出た先を少し道なりに進むと、そこにはすぐに森が広がっている。


 さっそく森へと到着したので獲物を探して歩く。


 しかしククリナイフとハンドガンで大きな獲物など狩れるはずがない。それどころか狩りすらまともに出来ない。


 しかしそんなことは些細なことと気にしない。今日は様子見だからだ。


「ふんふんふーん」


 森を鼻歌を歌いながら歩く。ちなみに時折、ウィンドウ画面を開いてマップを確認するのも忘れない。マップには歩いた場所を含めた、その周囲の情報が円状に更新されていくからだ。これで森とはいえ迷う心配はない。


 マップの視界が拓けていくと共に、ある地点で赤い点が表示された。どうやらマップ情報には敵対生物のおおよその位置情報も記載されるようだ。


 レーダーに感あり。敵の位置が視認以外でも把握できるのはありがたい。正直、森を歩くのは慣れていないのだ。


 ソロソロと赤の表示エリアを目指して歩き出す。大体一五メートルほど歩いた所で、それが視認できた。


 緑色の肌をした一四〇センチそこそこの身長の小鬼。ゴブリンだ。


 丁度いい。敵は全部で五体。それが円状になって、小さな白色の獣を袋叩きにしているのが見える。


 その様子をじっと見つめる。どうやら袋叩きにあっているのは、白い小さな犬に見える。


 そっと木陰に身を隠しつつハンドガンを構えた。その距離は一〇メートルほど。


 これ以上はバレないように近づくことは出来ない。ハンドガンの威力が発揮されるギリギリの距離でもある。


 私は奇襲を仕掛けることにした。木の幹と腕で銃を固定して、身体を隠しながら一番手前に居たゴブリンの背中を撃つ。


 発砲音に驚いているゴブリンに更に攻撃をしていく。


 二体目の胴体に二発の銃弾を撃ち込んだところで、残ったゴブリンが反撃のために突撃してきた。


 残るは三体だ。


 私は一番手前のゴブリンの攻撃を大きく避けてから、その眉間に発泡。


 これで残りは二体だ。それに発砲音に驚いている。


 私はその隙きに踏み込み、その胴体。特に心臓があるであろう場所へ二発発砲した。


 これで残るは一体。そこで一旦弾丸をリロードして、残りのゴブリンを処理したのだった。


「ゴブリンぐらいなら何とかなるね」


 ゴブリンを倒した私は、先程までゴブリンが袋叩きにしていた白い毛玉の塊を覗き込んでみた。それはやはり白い子犬だった。あっちこっち怪我をしているし、何より痩せ細っている。


「この子……」


 今にも消え入りそうな小さな命。だんだんと弱っていっているのが分かった。私は迷うことなく、来る時に買ったポーションを二本使って手当をする。


 一本は傷に直接塗り込んでいき、もう一本は飲ませたのだ。


 すると子犬の呼吸がわずかに力強くなった。


 私は子犬を大事に抱えて「今日はもう帰ろう」と呟き、もと来た道を引き返したのだった。


 もちろんゴブリンの頭をかち割る作業もしたあとでだ。


 魔石の回収は大事だからね。

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