第11話:二日目は買い物
朝。小鳥のチュンチュン、チチチという囀りで目を覚ました。
「うぅ…… 今、何時?」
モソモソと布団の中で身動ぎする。
「あぁ、そうか。時計が無いんだった」
そこで、はたと思い出す。そうだ。ウィンドウの環境に確か時間表記があったな……
思いついたら即確認。問題はこの世界に適応しているかどうかだけど。こればっかりは考えても仕方がないかと、一応の目安程度に考えることにした。
ちなみに現在の時刻は八時一三分とある。
「朝の八時かぁ」
うぅん。もう少し寝ていたいけど…… 仕事しなきゃなぁ。
何とかベッドから起き出して顔を洗うために、一階の井戸へと向かう。井戸の使い方は昨日、宿の丁稚に習ったので問題ない。ちなみにトイレの使い方もだ。
用を済ませた後は、朝食を摂るべく一階の食堂へ向かう。ポリポリとお腹を掻きながら。女子力? そんな物、豚の餌にでもしてしまえ。
時間帯のせいだろう。お客はほとんど居ない。
「朝食くださいな!」
「おう」
宿の食堂のおっちゃんが軽く請け負う。ちなみにメニューなんぞという気の利いたものはないそうだ。
おまかせである。
そうして出てきた朝食は、シチューと黒パンとマッシュポテト(のような食べ物)。味は昨日食べたが正直微妙だった。
食べられないわけじゃないが、わざわざ食べたいとも思わないその程度の食事。
しかし食べなきゃ勿体無いと、口の中にかき込んでいく。
「日本の食べ物が恋しいな」
そう思ったところで一つ思い出した。
「あれ? 食べ物や飲み物ってショップになかったっけ?」
というわけで調べてみた。そしたらありました。
企業とコラボしたジュースが数種類に、各種ミリタリー飯が。調味料にカレーが在るのもいい! 味気ない食事が、あら不思議! 絶品カレーに。ってなもんだよ。
「うは! これで勝つる!」
という感じで昼食は、どこの国のミリ飯を食べようかなとウキウキ気分で冒険者ギルドに向かった。
宿からはそこそこ離れていて徒歩二〇分ほどだ。トボトボと歩く。
「あーそうだ。日用雑貨も買わなきゃ」
口は軽くゆすいだだけなので、どうにも気持ち悪い。さすがにショップに歯ブラシはない。そんな事を考えながら歩いていると冒険者ギルドへ到着。
「たのもー!」
ドアをバァンと開け放ち、中へと入っていく。しかしギルド内は静かだ。昨日のガヤガヤとした雰囲気がない。
「あれ?」
疑問に思っていると、ちょうど手前の掲示板に昨日の受付をしてくれた女性が居た。受付嬢は私に気が付き、ニコリを笑い挨拶をしてきた。
「おはようございます。コウメさん」
「はよーございます。ねぇ何でこんなに静かなの?」
「はい。えっと3の鐘がなって間もない時間ですからね。だいたいこの時間はこんなものですよ?」
「ふえ? どゆこと?」
「仕事は早いもの勝ちなんです。だから皆さん我先にとギルドが開いた瞬間から入ってくるんです。この時間だと碌な仕事が残っていません」
「えぇぇ。じゃあ何? 私、今日はお仕事できないの?」
「うぅん。一応残った仕事はありますけど…… 正直あまりオススメ出来ません」
「何で?」
「街のトイレの汲み取りですから。やりたいですか?」
首を左右に全力で振る。
「でしょ? 今の時間帯だとそれぐらいしか残っていないんですよ」
「そんなぁ……」
がっくりと肩を落とすが、しかしそれならそれで他にやることがある。
「よっしゃ、じゃあ今日は買い物をしよう!」
という訳で予定変更で買い物をすることにした。買うのは主に雑貨類だ。受付のお姉さんに雑貨屋の場所を聞いて、さっそく向かったのだった。
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