第3話:どっちへ行ったらいいのさ?

 とりあえず、能力に関しては安全を確保してから要検証だな!


 何が居るのか分からないような、森の中でやることじゃないから。


 私はククリナイフで藪を切り払いながら道なき道を進む。どこに向かえば良いのかもわからない状況なのだ。とりあえず森を出るという方向で適当に歩き出す。


 しかし思いの外、森は浅かったようだ。


 歩いて10分もしないうちに出られた。


 しかも地面には馬車の物らしき車輪が通った道もある。やった! これは運が良い!


 しかしどっちに行けばいいんだ?


 右か左かの二択だ。迷っていると、そこに左側の道の方から馬車がやってくるのが見えた。かなり距離があるが、どうやらこちらに向かって進んでいるようだ。


「うは! ラッキー!」


 私はその場で馬車を待つことにした。


 しかしそれにしても馬車の歩みは遅いな。


 結構な時間を待っていると、ようやく馬車が到着。私はその直前から手を振って笑顔で待っていたので、馬車も停まってくれる。


「やっほー。おじさん!」


 そう言って麦わら帽子をかぶっているオジサンに駆け寄ったのだが、おじさんを見てはたと気がついた。どこからどう見ても白人系の異国人なのだ。


 そんなオジサンと呼ばれた男が首を傾げる。


「reiakaiuo?」


 オジサンの言葉を聞いて私も首を傾げる。


「はい? え? 何? 言葉が通じない、だと?」


 戸惑っていると、やはりオジサンが意味不明な言葉を喋り始めた。


「どどどどうしよう! 言葉が分かんない!」


 私は、まさかの事態にパニックに。それを見たオジサンも困った顔をしている。


 しばらくオロオロしていたが一つの閃きを得た。


「そだ! 外国語だ! もしかしたらこれで!」


 私はウィンドウを開いた。それを興味深げに見下ろす御者のオジサン。


「環境。環境。……と」


 そうしてウィンドウの中の環境という項目の言語の欄を見る。それら言語を一つ一つ試していく。


「ハロー。ボンジュール。グーテンターク。オーラ。チャオ……」


 しかしどれもヒットしない。完全に困り果てる私たちだったが、それでも私は諦めない。オジサンに必死で色々試していく。


 その結果、エブレリアル語という謎の言語でヒットした。


「こんにちは!」


 これには困り果てていたオジサンも驚いた。


「おぉ! こんにちわ。何だ。突然!」


 私は言葉が通じた事に半泣きになりながら、オジサンに話しかけた。


「あ、あの! ここってどこ?」


 これにはオジサンが驚いた。


「あん? どこって…… そりゃユスターク地方だな」

「ユスターク地方?」

「おう。そこのヒエラと言う村の近くだ」

「ヒエラ?」

「おう」


 やはり日本でない事は、はっきりした。それならばと尋ねた。


「ヒエラ村はどっち?」

「ん? それならあっちだな」


 そう言ってオジサンは自分が来た方角を指す。


「それじゃあ、おっちゃんはどこに向かってんの?」

「おう。レスラエルというこの辺じゃ一番でかい街だな」

「私も行きたい! そこに連れてって!」


 私の言葉にオジサンは、少し考えて頷いた。


「うぅん。まぁ良いだろう。どう見ても物盗りには見えんし。話し相手になってくれるならいいぞ」


 そう言って気の良いオジサンは笑う。私はオジサンの気が変わる前にと、さっさと御者席に飛び乗ったのだった。

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