第4話:異世界
道を行く。
道と言っても舗装されているわけじゃない。剥き出しの草の剥げた地面が続いているだけの道だ。おかげで馬車の乗り心地は最悪だ。
道の右手側には私が居た森が広がっている。どうやら運良く、森の入口付近にいたようだ。
結構大きな森らしい。
道の左手側には原野が広がっている。道の先には地平線が広がっている。どうやら目的地ははまだまだ先のようだ。
「オジサンは、街に何しに行くの?」
「おう。この後ろの荷物を売りに行くところだな」
そう言って荷台に乗っている緑色のゴロゴロとした実を指した。
「何これ? 瓜?」
「おう。ズンキュリという瓜だな」
「ふぅん。美味しいの?」
「うぅん……」
そう言って首を傾げるオジサン。思わず私も首を傾げる。
「美味しくない野菜を売りに行くの?」
「あはは。今年は豊作でな。村では消費しきれないし、捨てるのも勿体無い。なら売れれば儲けものという感じでな。それにこれ単体では大して美味くはないが、スープに入れるとまぁまぁイケるんだぞ?」
「ふぅん…… 瓜ねぇ」
確かにウリ科の植物はそれ自体はあまり美味しい物じゃない物が多いかなと納得する。
そんな他愛の無い会話をしていた私達の前に、ひょっこり右手の森の中から緑色の肌をした子供が飛び出してきた。
馬が驚いて竿立になり、そして馬車が止まる。
馬車が止まると、今度は待ってましたと言わんばかりに、森から更に緑色をした子供がワラワラと出てきた。
その数全部で六匹。最初のも合わせれば合計七匹の緑色の肌をした子供たちだ。それにオジサンが驚く。
「ゴ、ゴブリン!」
私は単刀直入に質問した。
「悪いやつ?」
「あ、あぁ。こりゃまずい」
そう言って、荷台に乗っていた棒を構える。先の方が二股に別れているピッチフォークと呼ばれる農具だ。
それでゴブリンを一体、突き刺さした。その一体が「ぎぃいい!」と悲鳴をあげる。
オジサンはそれでも構わずピッチフォークを我武者羅に突き立てまくっている。しかし一塊だったゴブリンはバラけてオジサンの攻撃から逃げ回った。
「手伝うよ」
そう言って私は馬車かり飛び降りて、ヒップホルスターに収まっているハンドガンを手にとった。
「コウメちゃん! 気を付けろよ!」
オジサンの声に私は軽く「あいあいさー」と答え、さっそく手近にいたゴブリンと相対した。するとゴブリンが嫌らしく笑う。
「うえぇ。気持ち悪ぅ」
ただでさえ醜悪な顔がさらに醜く歪む。その言葉に反応したのか、ゴブリンが飛び掛かってきた。私は、それに対して至近距離から発砲。パンと言う音と共に眉間を撃ち抜いた。
紫色の血が辺りに飛び散って、そのゴブリンは地に倒れた。私は思わず顔をしかめる。ゲームのときよりリアルになった感覚が、飛び散った体液の匂いを感じ取ったからだ。生き物を殺すっていうのは、あまり気持ちのいいことじゃないね。
だが今は、戦闘中だ。
なので嘆いたり悔やんだりは後でやればいい。生きてこそだ。
そんな感想が出てくる程度には、まだ心に余裕がある。ゲームで実戦さながらに戦っていたのは伊達じゃないようだと自己完結。
私はさっさと他のゴブリンを倒すことにしたのだった。
※
※
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危なげ無く他のゴブリンを倒した私に、オジサンがピッチフォークを片手に御者席から降りてきた。
「どしたの?」
「おう。ゴブリンの頭の中には魔石と呼ばれる石が入っているんだ。それは多少だが金になる。取っていこう」
そう言ってオジサンは近くにあった石で、ゴブリンの頭をかち割り始めた。その様子に私。思わずドン引き。
「うへぇ。まじですか……」
そんな私にオジサンは、情け容赦なく仕事を振った。
「ほら。コウメちゃんも!」
げんなりするが、しかしこの世界で無一文の私からしたら、この収入は大きいかもしれない。だから仕方なしにオジサンと一緒にゴブリンの頭をかち割るのだった。
しばらく黙々とゴブリンの頭をかち割った私にオジサンが言う。
「これはコウメちゃんが倒した分な」
そう言ってオジサンは四体分の黒っぽい石を渡してきた。よく分からない肉片が混じっている、
「あ、ありがと」
自分が、かち割った分も合わせて合計5個の魔石とやらを、自分のポケットに放り込んだのだった。
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