第3話 「中華料理店」シンドローム(Chinese Restaurant Syndrome)とは
1992年頃、ボストンのある中華料理屋で食べた人たちの多くに、手指のけいれんが起こったことから生まれた言葉です。1986年当時のボストンでは、この中華料理屋は美味しいということで(日本人駐在員の間で)有名でした。私も日本からのお客さんの接待によく使用していたので、日本に帰国後知ったこのニュースで「ボストンの或る中華料理屋」というのが、すぐにわかりました。そして、このニュースによって、「なぜ美味かったのか」という理由がわかりました。化学調味料だったのです。週末、アメリカ合衆国発祥の地であるボストンを訪れた観光客が、中華街の中心にあるこのお店で美味い中華料理をたらふく食べる。すると、翌週、手指が痙攣するという現象が起こる。その後、「美味い中華料理屋と化学調味料の関係」がどこまで追及されたのかどうかは知りませんが、恐らく大いに関係があったのでしょう。
私はアメリカ滞在中、ニューヨークやサンフランシスコ、ラスベガスといった町で、日本食と並び中華料理をお客さんの接待に多く利用してきましたが、確かにボストンのかの店の中華料理には「化学的というか人為的」な操作があった、という気がします。
中華料理というのは(江戸前の寿司と同じで)気合いです。新鮮な材料を強火でサッと、炒めたり焼いたり揚げたり調理して、それをすぐにお客のテーブルに手際よく並べていく。料理人の気合いとウエイトレスの手際の良さ。これが料理の味付け以上に重要な要素なのです。寿司屋だって、たとえ高級店ではなくても銀座あたりの老舗へ行くと、ネタの良さ以上に板前さんの気合いと板さん見習いのウエイターの手際で寿司の味わいが引き立つ。これに比べたら、回転寿司なんてフェイクです。
この意味で、ラスベガスのシーザースパレスの中華料理屋などは、気合の入った本当の中華料理という気がします。本場中国で食べたことはありませんしこれからもないでしょうが、かなり、それに近いのではないでしょうか。ボストンのかの中華料理屋は、「アメリカ人を小ばかにする」くらいプライドが高い、気合の入った店なのですが、その故に、「アメリカ人なんか味がわからないさ」みたいな気持ちで、少々味の素を使いすぎたのかもしれません。
2024年2月21日
V.2.1
平栗雅人
中華料理パワーの波(中華料理シンドローム) V.2.1 @MasatoHiraguri
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