第3話
イストール帝国のペルーシア姫は王子ミケルトのことに好感を持っていたが、自分の夢は諦められない。
王族の生活には興味がなく、趣味の乗馬や害獣駆除のための狩りなどをしていたい。
弓の腕が狩人並みのペルーシア姫は、淑女らしからぬ活動的な女の子だった。
※※※
ミケルトに嫌われるように、ワガママ令嬢を演じることにした。
「まあ、あなた。こんなお茶をわたくしに出すつりなの。入れ直してちょうだい」
慌ててカップを下げようとしたメイドに、
「カップはそのままにして、新しいのを入れてちょうだい」
大きな声を出したので、喉が渇いたペルーシアは、勿体ないので下げずに置いてあったお茶を残さずに飲んだ。
お茶を入れ直してきたメイドは、置きっぱなしにしてあったカップが空になっている事を疑問に思いながら、カップを下げた。
「このお菓子は、わたくしの好みじゃないわ。あなた、いつになったらわたくしの好みを覚えられるの?」
お菓子を下げようとしたメイドに、
「そのお菓子はあなたたちが残さず食べなさい。わたくしにはショコラを持ってきてちょうだい」
「かしこまりました」
メイドな頭を下げながら、お菓子やお茶を粗末にしないペルーシアに困惑しながらも、好感を持ち素直に従った。
※※※
ラカン「お聞きになりました、お姉さま」
ソマリ「何かありまして?」
ラカン「イストール帝国のペルーシア姫はワガママらしいですわ」
ソマリ「まあそうなの。あの娘可愛いから、ミケルトに忠告しないといけないわね」
王族専用のサロンでミケルトの二人の姉は噂話に花を咲かせていた。
ミケルトが執務を終え夕食のため王族専用の食堂に向かった。
「ミケルト、イストール帝国のペルーシア姫には会いましたか?」
食事中の団欒で姉のソマリはミケルトに聞いた。
「いえ、まだ直接会っておりません」
「まあそうなのね」
もう一人の姉のラカンはミケルトに言った。
「メイドたちが言っていたのだけど、ペルーシア姫ってとてもワガママらしいわ」
ラカンは重ねて言った。
噂話の好きな姉二人にやれやれという顔をしていたミケルトに、
「まあ、わたくしたちの話を聞かないのね」
と、ラカンは拗ねた声を上げた。
「いい加減にしなさい。自分のことだ、ミケルトに任せなさい」
父王のラグドールは珍しく姉たちを制した。
「お父様の言う通りよ」
王妃のタマールも王の言葉を後押しした。
姉二人は真っ赤な顔でうつむいた。
「噂など気にしなくても良い。ミケルトのお妃だ。自分で判断しなさい」
「かしこまりました」
父王の言葉に賛成していた。
人の考えなど他人にはわからないもの。
本音を探るなど、本人に会い話もせずに、わかるはずもない。
夕食後、王や姉たちに内緒で母タマールの魔法で、ミケルトはネコの姿に変身した。
ミケルトは真っ直ぐにペルーシア姫の部屋へ行き様子を伺った。
ペルーシア姫の部屋には3人のメイドがいた。
ネコの姿のミケルトに気がついたペルーシア姫は、
「あなたたち、今すぐ下がりなさい」
と、きつい口調で命令した。
メイドたちが下がり気配がなくなると、
「まあ、可愛い子ね」
と言って、ネコのミケルトを抱き上げ自分の膝に乗せた。
心地よくいい匂いがするペルーシア姫の膝の上に抱っこされ、しばらく撫でられていたミケルトは、ウトウトしそうになり、慌てて彼女の膝から飛び降りた。
「まあ、もうお仕舞いなの。残念だわ。今度食べるものでも用意しておくわね。また、遊びに来てね。可愛い子」
ペルーシア姫は噂とは違う、ネコ好きな優しい女の子だった。
優しく撫でられた感触を思い出しミケルトは、ニヤニヤが止まらなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます