それいけ!

「ホラー、アタラシイかおヨーーー」


 お昼休みにさてご飯を食べようと購買部に行こうとしたところ、廊下の向こうから全力で走ってくる女子がいた。

 そして、その女子がよくわからない叫び声をあげていた。


 モーゼの十戒のように人がバーっと避ける。

 よく見るとその女子は、ミヤだ。

 なんだか嫌な予感がする。

 よし、ここは周りの人達に合わせて横に避けよう。


 しかし、避けるより早く、ミヤが持っていた物を俺に向かって投げる。


「うげっ」


 とっさに投げられたものをキャッチする。


 なんだこれ。あんぱん?


「NO!!モウイッカイやります!!なんでガンメンでウケトメテくれないんデスカ!!」

「はぁ?通り魔か。お前は!!」

「チガイマス。はい、モウイッカイ、ヤリナオシマショウ」


 はぁ?本当に意味がわからん。

 そして、ちょっと待て、周りからの視線が痛い。


「ちょっ。こっちこい」


 そのまま廊下の端までミヤを引き摺って移動する。


「なんだよ、人の多いとこでなにやってんだよ!!」

「ダカラ、『ホラー、アタラシイかおヨーーー』っていったじゃないデスカ」


 ん?手元には、あんぱん。そしてその台詞………。


「元ネタはわかったが、道の真ん中で、しかもあんな人が多いとこでやるんじゃない」

「デモ、デモ、やりたかったんデス」


 特に気にした様子もなく、明るくいい放つ。


「だからって、あんぱんを投げるのも間違ってる。しかも、俺になにも説明なく。それはただの通り魔だ」


 そこまで言われて悪かったと思ったのか、シュンと落ち込む。


 ちょっと言い過ぎたか?


「ワカリマシタ。つぎはモットうまくヤリマス!!」

「それはなんの宣言だ!!」

「デハ、オワビノシルシにそのアンパンをサシアゲマス」

「そりゃドーモ」

「それではマタ、ホウカゴに」


 そう言って嵐のように去っていった。


「なんだったんだ、あれ?」

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