時間の長さは等しく同じ

「ちょっと手伝ってほしいのだ」


 今日も今日とて、部室でいま読んでいるまんがの考察を良樹としていると橘先輩が神妙な顔をして俺たちの所まできた。


「なんすか?」

「どんなお手伝いです?」


 俺らが口々に尋ねると


「実は、今度の衣装のサイズ合わせがしたいのだ。着る人が後輩くんたちと同じぐらいの身長なのだ。だから試着をお願いしたいのだ」

「まあ、別にいいっすけど」

「へー。ちなみになんのキャラですか?」

「小説投稿サイトで人気の小説のキャラと最近続編が始まったまんがのキャラなのだ」


 へー。まぁ、いいや。


「で、どれを着れば?」


 そう尋ねると先輩は、デカめ紙袋を俺と良樹に渡してきた。


「中を見ずにアッチヘ行くのだ」


 そう言って指を指した先には、カーテンが吊るされた簡易試着室が二個作られていた。


「先輩、仕事はやいっすね」


 ちょっと引きぎみに言うとえっへんとない胸を張る先輩。

 そのまま試着室へ入り、制服の上をぬぐ。

 えーと、袋の中身は……


「ちょっ。なんだこれ!!」


 あわててカーテンから顔をだすと先輩は、あらぬ方向を向いて口笛を吹いている。


「先輩、口笛吹けてないっす」


 げんなりしつつ、突っ込む。


「どうしたんだい?」


 隣から良樹の声が聞こえる。


「お前の衣装、どんな感じ?」

「えーと、普通の黒スーツみたいな感じかな?あ、ジャケットの裾は長めだね」


 なん、だと。良樹のは普通で、なぜ俺のは………。

 先輩をにらんでも目が合わない。


 くっ。


「もう、着替え終わったの?」

「いゃ、まだなんだが…」

「せーので出ようね」


 なに、女子みたいなことを言っているんだ。

 しかし、頼まれて承諾したからには着ないわけには…ぐぬぬ。

 試着室の中に引っ込み、もう一度衣装を眺める。


 くそっ。男は度胸と勢いだ!


 悪戦苦闘しつつ、なんとか袋の中身を身につける。


 …。

 ……。


「着替え終わった?せーのでいくよ」


 え、ちょっと、まって。心の準備が。


「せーのっ (なのだ)」


 パニクった俺はそのままカーテンの外に出る。

 良樹は、黒いスーツだった。

 細身の黒いネクタイに裾の長い黒いジャケット。

 ひと言で言えばよく似合っている。


 かたや、俺は。

 ピンクのベレー帽に、ピンクのワンピース。胸元には赤と白のリボン。

 しかもスカートのしたには白いフリルがふわふわしていて、所々に赤と白の線がはいっていたり、胸元とお揃いのリボンが付いていたりする。


 しかも、ご丁寧にお揃いのピンクのハイソックス。


「おー。可愛いのだ。似合っているのだ!」

「ぶっ。あはははは。ちょっ。似合っているじゃないか、ふははは」


 勢いで出てきたものの、恥ずかしくて耳まで赤くなる。


「だーーーっ。恥ずかしすぎる。脱いでいいっすか。いっすよね」


 しかし、そうは問屋がおろさなかった。


「もう少し裾を短くしてもいいのだな。あと、リボンが長いのだ」


 先輩が考察を始めたのだ。

 俺の周りをぐるぐる回る先輩と笑い転げる良樹。


「早く下校の鐘よ、鳴れーーー!!」

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