真実はいつもひとつな少年

「やぁ、高羽。ちょっと再現の助手をしてくれないかい?」


 部室の扉を開けるやいなや、目の前に立った部長にそんなことを言われた。


「まぁ、いいっすけど、なんの再現をするんです?」

「先ずはそこに寝転がってくれたまえ」

「いゃ、まずなにをするかを教えてもらっても?」

「君はただ、寝ていくれれば、問題ない」


 そう言われてもなにをするかわからない状態で寝転がるのは…

 と、悩んでいる間にいきなり部長に手を捕まれる。


「へ?」


 次の瞬間には、視界には天井が写っていた。


 …何が起こった?


 視界に部長が入る。

 部長は、俺の腕をつかんで満足そうにしている。


「部長、何を」


 そこまで言ったところで部室の扉から良樹と橘先輩が顔を出す。


「あら、お邪魔だったかな?ふふ」


 おい、良樹。顔が笑っているぞ。


「わわわ、私は何もみていないのだっ」


 先輩、狼狽えるとこじゃないっす。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 とりあえず、二人に説明をするのだが、何故か俺はひっくり返ったままで、部長はいそいそと準備をしている。


「なるほど。それで、ひっくり返った亀みたにいなっているんだね」


 だから、そのニヤケ顔をやめろ。


「ふん。で?部長、なにするんすか?」


 ちらりと部長を見ると何故かテニスのラケットと小ぶりの発泡スチロールの箱をもっている。


「では、説明しよう。今日おこなうのは、このラケットと箱に入っているドライアイスを使う。」



 ラケットとドライアイス?どっかで聞いたな…


「コナンですか?」


 良樹の言葉にこれから行うことの予想がついた。


「そう。死体の下にラケット、砕いたドライアイスを挟んで引っ張っていどうさせるのさ」


 予想した答が帰ってくる。


 そういって、部長は、手袋をして箱からドライアイスを取り出し、床におき、その上にラケットをおく。


 何故かそこでストップした。


「部長どうしました?」


 良樹が問いかけると、


「…本来なら死体は動かないが、今回の再現では、動く事が出来るよな。よし、自分でこの上に乗ってくれ」

「死体、動いていいんすか?」

「今回の再現は、ラケットを動かす所の再現だ。かまわん」


 さいですか。


 のそのそとラケットのところまで移動し、寝転がる。


「これでいいっすか?」

「よし。では、死体は、動くなよ。そして、これでラケットを引っ張れば…」


 そういって、何を思ったのか、全力でラケットを引っ張った。


 いや、引っ張ったというよりは、引っこ抜いた。

 そして、俺は勢よく、壁に向かって転がった。


 ゴツン。


「痛ってーーー」


 壁に思い切りおでこをぶつけた。


「すまん。引き抜いてしまった。もう一度やろう」

「次は良樹でやってくださいよ!!」

「いや、高羽のが、丈夫だから君のが適任だよ」


 三人でわーわー話していると、チャイムが鳴った。


「諸君、そろそろ下校時刻なのだ」


 橘先輩が俺らの話に割って入る。


 そして一言、


「しかし、私もその輪の中に入りたいのだぁぁぁ!」


 そういって俺らに向かってジャンプしたのだった。

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