第107話 逆さ富士 🏞️



ひたぶるな代掻馬の子連れかな

早苗田を奔るさざなみ逆さ富士


浮輪つけ置ける如くに水すまし

水馬のくるりくるくる植田かな


ががんぼのなんの符牒の動きかな

せせらぎに蟹の父子をさがしけり


拘泥を捨てれば哀れ(笑)羽抜鶏

郭公にこの世のまこと訊いてみる


老若の和気あいあいや溝ざらへ

道をしへ日の照る道を教へけり


夏蝶や羽を閉ぢればナノ単位

夏蝶の危ふき辺りふはふはと


木の匙で掬ふ蜜豆ザ・日本

白玉を浮かすボールの氷水


玻璃皿に鎮座まします水羊羹

大薬缶に冷ます麦湯や大家族


茄子紺を深めるための茄子漬

酒粕のなくてはならぬ胡瓜揉


網戸して想ひを隔てうたを詠む

眺め来し月のいくつや古茶新茶




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