第106話 ゆすらうめ 🍒



雨あがり佳き日の予感聖五月

前髪を五月の風のさはさはと


丸い目のひな鳥の巣や青葉風

犬のあと犬のゆくなり若葉風


遠山に真白な雲を噴きて夏

新樹光ものの生命の燦燦と


農耕の馬にも子あり子どもの日

木苺のしゆうじつ聴ける川の音


いまさつき泣いた目をしてゆすらうめ

たつぷりとひろげるましろ花しやうぶ


造形の極地や百合と薔薇の花

郭公や耳に記憶のわらべうた


犬の鼻ぬれてすこやか薄暑光

留まらぬ時のごとくに竹落葉


目の粗き布に刺繡や夏はじめ

花いばら衣からりと乾きけり


卯の花や社旗と国旗とへんぽんと

水滴の玻璃器に散らすさくらんぼ


跳ぶ水も親しき初夏の厨かな

人形を負ふ子をおんぶ緑の夜




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