第101話 花りんご 🍎



引き結ぶ仔犬の口や筆の花

首傾げ驚いてみる仔猫かな


連翹の黄はのぞみの黄色にて

空の底深みを増せる花ミモザ


トラックの牛が見てゐる花林檎

雪やなぎはるか雪嶺よびかはす


雨あがる兆しの光ねこやなぎ

猫柳わづかな風もよろこびて


くつきりと影と一対ひこばゆる

老幹の曾孫のごとくひこばゆる


隣る世でも本名でよし濃山吹

山吹を庭に散らせる山家かな


パソコンのアラビア表示夏蜜柑

をんなてふ厄介棄てむ夏柑剥く


藤棚に弾くマンドリン風すこし

気怠さをまてあましたる藤の昼


あれはもう遠きむかしや桃の花

ずいぶんと歩んで来たり春星へ


春雷や念には念の返し縫ひ

看板の小さき憲法記念の日




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