第2話
「…………!?」
誰かの声が聞こえる。意識が徐々に浮上していくにつれ、謎の声はハッキリとしていく。男らしい声が聞こえる。他にも話す声が沢山聞こえる。俺は確かトラックに轢かれたはず。でも体は痛いと言うより重くて動かない。あんな大きなトラックに轢かれたんだからもっと痛いはずだろ。と言うか体が綺麗に残らないと思うんだが運良く残ったか? 最悪だ。生きる意味もないのに生き残るなんて。死なせてくれよ神様。
なんて心の中で文句を垂れながらも起きようとするが、意思と反して体が全く動かない。まるで石化したみたいに硬直状態だ。何処か動かないかと模索しているとさっきの男の声が不快な程に大きく聞こえた。
「おい、大丈夫か!」
細く瞼を開くとぼんやりとした茶色い何かが映る。何だろうと思いながらも、まずは声を出そうとするが「うっ……」と小さい呻き声しか出なかった。だけどその呻き声が聞こえたのか男は俺の意識が戻ったことに気がついたみたいだ。
「おっ! 意識が!」
嬉しそうな弾んだ声がすると、周りの騒めきも大きくなる。そんなに俺のことが面白いのかも知れないが俺は見せ物じゃないし、とっとと救急車呼べよ。徐々に「死なせてくれ」という思考から「この苦痛から解放してくれ、たとえ生き延びようとも」に変化し始めた。それはいいことなのか分からないが取り敢えず解放されたかった。今後のことは後で考えればいいと。だけど周りは変わらない。誰も俺の気持ちを1ミリも感受することがなく、動けない時間がただただ過ぎていく。辛い、死にたい、解放されたい。ネガティブな思考がぐるぐると脳内を駆け巡っていると突然体が浮いた感覚がした。一瞬驚いたがやっと助けが来たのだと安心した。肩の力を抜くと俺を抱える誰かの力が少し強くなった気がした。5分? 10分? 時間の感覚が分からないが長いような短いような時間揺られ続け、何処かで止まった。木の扉の開く音がして少しすると柔らかな地面に俺は置かれた。
「う〜ん、彼は人間のようだが。取り敢えず治療をしてから様子を見るか。」
女なのか男なのかわからない中性的な声が言った話的にこの人が多分医者だと思う。だけど、どこかこの医者の話に違和感を持つ。
『人間』
実際にそうなのだが普通は言わないだろう。だってみんな人間なんだから。胸のモヤモヤを感じながらもこれでやっと動けるかも知れないと思い、俺は眠りについた。
きみであって、キミではない 青 @Aonosekai_
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