第3話

 同窓会はホテル内にある和食のお店で開かれた。みんな面影が残っている。三十歳になったとはいえ、急激に老け込むことは珍しいのかな。幸運だったのは大輔の姿が見えないことだった。大輔がいない安堵はすぐに消え、えりぽん、雪乃、さえちと再会できた喜びに侵食された。


「実は、結婚することになりました!」私が満を持して言った。

「マジ!」

「一号じゃん! おめでとう!」

「私らが遅いんだよ! 嬉しい!」

「まゆたん結婚かあ。式はどこでするの? 火星でも絶対行くから!」


 皆、それぞれの言葉で祝福してくれて嬉しい。ひとしきり結婚の話題で盛り上がったあと、みんな笑いつかれたのか手に持ったグラスに口をつける頻度が多くなった。


「てかさあ、おめでたい話のあとでなんなんだけど……」えりぽんが言った。「西森くん、亡くなったらしいよ」

「えっ」


 反射的にえりぽんに顔を向けた。


「なんか、葛西くんが言ってたんだけど、大学の同級生と登山したときに滑落? かなんかして助からなかったらしいよ」

「だから今日来てないんだ」

「今日来る予定だったの?」

「だってLINEグループに西森くんの名前あったでしょ」


 三人が盛り上がる中私が取り残されていた。登山のときに亡くなっていた? とすると私が一番最初に見た、あのアイコンのときに亡くなっていたということ? じゃああのフレンチとかオムライスのアイコンは何だったんだろう。大輔の両親か親しい人が変えていたということしか考えられない。冷水に浸されたタオルで包まれたような不気味な寒気が走った。


「まゆたんどした?」

「いや……」


 私が言葉を告げずにいると雪乃が割り込んできた。


「一応、付き合ってたもんね」

「そうだよね……。ごめんねまゆたん。話すべきじゃなかった」


 重たい空気が場を支配したあと、幹事が一次会の終了を告げた。それを合図に大輔の話題は打ち切りになった。

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