第7話  乱入

砲撃が着弾し、轟音が響き砂煙が舞う。

「刃、刃、刃!!」

キラリは無線に向けて叫ぶが返答はない。(結界はまだ残っているから死んでは無いはずだけど。問題はどこで復活するか。不意打ちじゃ捕まってもおかしくない。)

キラリは慌てて索敵装置の電源を入れ二人の居場所を特定しようとする。

「あれ?まだ反応が残って、って3人分。まさかっ!」

キラリは一つの考えに辿り着き後ろを振り返る。そこには玲の姿はなかった。しかし、玲の居場所はすぐわかることとなる。

砂煙が薄れ人影が見え始める。そこには二人を白い翼を大きく広げて守っている玲の姿があった。

「いつの間に〜。よかった~。」

キラリは安心して椅子に座り込む。


「姉さん、刃さん!大丈夫ですか!」

「ああ、助かったよ、玲君。ありがとう。」

「玲、よく動いてくれた。後は私がやるからすぐに基地へ戻りなさい。」

そう言い麗奈は立ち上がる。

「どこへ行くつもりですか!?まだ怪我は完全に回復してないじゃないですか。」

「今から本部を強襲する。怪我は向かってる間に治る。刃は動けるなら生き残りをやれ。」

「それなら失敗作の自爆型飛行機に乗ってって下さいよ〜、本隊長。ぶつければビルを半壊させれるぐらいの威力はありますよ〜。」

「わかった、今すぐ準備して。」

そう時間も経たずに小型のジェット機のような物が基地から出てくる。

「ぶつけるだけで勝手に爆発するんで巻き込まれないようにだけは気をつけてくださいね〜。」

「ああ。」

「本隊長!そこまでする意味はあるんですか!」

「そうだよ、姉さん!十分じゃないか!」

「二人は何いってんのさ〜。総司令がいない今、どうにかして東司令から隊の存在の許可について言質を取らないと。今がチャンスじゃない。」

「そういうことだ。玲ごめん。」

そう言い残すと麗奈はジェット機に乗り飛び立っていく。

「刃さん、姉さんを追いかけちゃ駄目ですか?」

「すまないが一人にはさせれない。私についてきてくれ。生き残りを殲滅させ次第追いかけようと思う。」

「わかりました。」

二人も決断を行うとすぐに行動を開始する。

「敵の位置は私が教えるからね〜。とりあえずそのまま真っすぐ行けば3人いるよ〜。」




「司令、砲撃で仕留めきれなかった模様。現在、九十九本隊長がこちらに向かってきております。対処できる人員がいませんがいかがするのでしょうか?もはや作戦は失敗のように思えますが。」

「まだだ。二次作戦に移行する。ひとまず大型シールドを展開しろ。来るぞ。」

ジェット機がビルへと激突する。ビルには穴が空き、凄まじい衝撃が管制室に届く。

「直撃した四階から六階は守りきれませんでした。すでに一般職員は避難させていたので犠牲は出ていません。しかし、ここからどうするのですか!?誰が彼女の相手を!及川本隊長と巴音城本隊長は回復していませんし牙煌本隊長は武藤隊員と交戦中なんですよ!」

麗奈はビルの5階に入り込んでいた。

「このような場合に備え念のため呼び寄せてある。の男をな。」

「まさかっ。」

モニターには麗奈に対峙する一人の男が立っていた。男は組織の戦闘スーツを身にまとっておらず、武器すらも持っていなかった

「あれは、西本部司令官の九条兼伍くじょう けんごさん?!!」



「よぉ、俺の相手してくれるんだってな。」

九条兼伍は腕を伸ばして準備運動をしながら麗奈に聞く?

「こう動くことも読まれてたようね。」

麗奈は忌々しそうに呟く。

「あ?まぁいい。お前には遠慮がいらないらしい。久々に手加減なしで戦えるとはな。お前には感謝しとこう。」

兼伍の雰囲気が変わる。全身から凄まじい量のネメルギーが漲り放出されていく。麗奈はその変化を察知し相手が只者ではないことを理解する。

「私も手加減する必要なさそうね。」

「ああ、とことんやり合おうじゃないか!」

「草薙神剣」

麗奈は武器を生成し地面を踏み込み、一気に間合いを詰める。

影火滅デスト・ロイ

刹那、麗奈の身が爆発に包まれる。即座に麗奈は退けぞり距離を取る。

「今のは前座だ。大したダメージにはなってないはずだ。」

麗奈は自分の体を確認するが、その言葉通り大した怪我はなかった。それがわかるとすぐに剣を構え直し再び斬り込みに行く。しかし、麗奈は空を斬ることとなる。兼伍の姿が消えたのだ。

(一体どこに?気配がまったくしな、、、)

金属音が鳴り響く。不意に出現した兼伍の奇襲の一撃を間一髪で受け止めたのだ。

「今のを受け切るのか。想像以上に面白い。」

「いつの間に武器を。」

「ふっ、余裕そうじゃねぇか。」

再び兼伍の姿が消える。麗奈は全神経を集中させ目を瞑る。寸時に気配を察知し兼伍が完全に現れる前に剣を振る。この行動を想定していなかった兼伍は背後にふっとばされる。麗奈は兼伍の周囲に大量の剣を召喚し追撃する。しかし、剣は兼伍の体に刺さらなかった。全ての剣は刺さる事が出来ずに折れてしまったのだ。

「戦闘に必要なのは強靭な肉体だ。お前もそう思わないか?」

「化け物の気持ちは理解できない。」

麗奈はそう言葉を返すも内心穏やかではなかった。

(ただの剣じゃ傷一つ付けれないなんて。となると草薙神剣でやるしかないか。それなら、)

万能万鎖ばんのうばんさ

麗奈は長い鎖を生成し草薙神剣に先を巻き付け固定する。鎖を振り回し兼伍へと狙いを定める。

「おいおい、長さが足りねえんじゃねぇか?」

麗奈はそれを無視し凄まじい速度で鎖を放つ。

「伸びろ。」

「うおっと。」

鎖が勢いのまま伸び兼伍の頭へと草薙神剣が届こうとする。兼伍は上半身を仰け反らせ躱す。

「落ちろ。」

その瞬間、鎖は伸び切ったまま垂直に地面へと叩き突かれる。鎖が直撃する寸前、再び兼伍は姿を消す。鎖は地面を破壊し穴が開く。

「隙ができてるぞ。」

麗奈のすぐそばに出現し拳を振るう。不意を突かれた麗奈は左腕で拳を受ける。

「くっ。」

麗奈の左腕の骨が砕ける。追い打ちをかけるように兼伍は麗奈を蹴り飛ばす。

「刺せ。」

その瞬間鎖が再び動き始め兼伍の肩を草薙神剣が貫く。

「いいじゃねえか。盛り上がってきたぜ。」

貫ぬかれたことを気にもせず笑いながらそう言う。草薙神剣を無理矢理抜き素手で砕き鎖ごと麗奈の方へ投げつける。

「怪物め。」





暗い空間に人影が一つ。優雅に座りながら何かを見ている。

「やはり、今が一番の好機だろうか。」

独り言が空間に小さく反響する。

「調子はどうかな、”狂者クレイジー”?」

空間にもう一つの人影が入ってくる。

「邪魔をしに来ないで頂きたい。今いいところなのですよ。」

「知ってるよ、さっきまで私も見てたからね。それより、やるなら今なんじゃないかな?まで時間は大して残ってないけど大丈夫そ?忘れたとは言わせないよ。」

「忘れてなどいないですよ。今まさにやろうと思ったところでして。そちらも約束は果たして頂きますよ。」

勿論ね。それ言いたかっただけだからもう帰るよ。バイバ~イ。」

また人影が一つに戻る。

「くそっ、好き勝手言いやがって。まあいい、目的のために多少の変更はすでにやむを得ない。さて始めようか。」





《裂け目発生、裂け目発生。》

突如サイレンが鳴り響く。

「あれは。」

「おいおい、流石にでかすぎじゃねぇか?」

そこには通常サイズの裂け目の十倍以上はある裂け目があった。そこから大量のネメシスが地上に降り立つ。



裂け目のすぐ真下にピンク色のツインテールの小さな少女が浮遊している。その周りを既に何度か出現している5体の機械人型ネメシス・推定9級が囲む

「はいはーい。君たちも好きに暴れてきていいよー。最初はそういう作戦らしいからねー。ということで解散ー。さてとー、私も好き勝手しちゃおー。」

そう言い少女も地上へ近づく。

「この辺でいっかなー?さーてと。」

少女は住宅街のほんの少し上あたりに浮かび、前方を見渡す。直後、少女の前方の人間や建物含めた全ての物体が弾ける。十秒も経たずに少女の前方はわずかに塵や残骸が舞うだけの更地へと変貌する。それを見て少女はニッコリと笑い言う。

「あーはっはっはっ、たーのしいー。あははははは。」



彼女の名は”享者ワンダー”という。

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