第8話  享楽

「司令、いかが致しましょう、、?対ネメシス砲のチャージはまだですし、九十九本隊長以外の本隊長達はまだ戦闘できる状態ではないです。」

「九条と九十九の元に宮城を送って怪我を回復させろ。」

「了解です。」

 東はこの状況の打開策を出すために頭を回す。

(九十九のことはもはや仕方がない、総司令に判断を仰ぐとするか。武藤め、光己を奴にやられてさえなければまだなんとかなったものを。)

 麗奈と兼伍の戦闘中に光己は刃の追い打ちにより既にやられていた。

「南町、まだ能力は持つか?」

「はい、幸いと言ってはなんですがネメルギーを大量に吸収しているので。」

「今すぐ結界の範囲を裂け目の下に動かせ。既に犠牲者が出ている。迅速にだ。」

「了解!」

「兼伍、あの10級との交戦を頼めるか?」

「ああ、いいだろう。貸し一つだからな。」

「頼む。」

「司令、梢枝原隊長にも戦闘への迅速な参加を要請しました。すぐに向かうとのことです。」

「ああ、だがまだ足りん。ひとまずは大型を殺らなければ被害が拡大する。6級以下の隊員も全員出撃だ。学園にも要請を行え。」

「わかりました!」

 その時、司令室のモニター画面の一部が突然切り替わる。

「やっほ〜。皆大好き、キラリだよ〜。」

「何の真似だ。」

「戦力欲しくないですか〜、司令?今なら私がチャンスをあげてもいんですよ〜?」

「言いたいことは何だ。」

「本隊長に代わって要求しま〜す。この戦闘の援軍を九十九本隊も行ってあげますので我々の隊の存在を認めることを約束して下さい。司令の能力なら簡単でしょ〜?」

「わかった。隊の存在を認めよう。今戦闘への参加と総司令会議への出席を要求する。」

「え〜?そうきますか〜。でも、会議での私達への賛成はマストですからね〜。」

「それは私の能力がどの時点まで作用されるかによる。」

「まあ、とりあえずはそういうことで。じゃあね〜。」

 そう言い残すとモニターからキラリの姿が消える。

「司令、よろしかったのですか?」

「仕方がない。ここで人類が敗北するよりはましだ。少なくとも奴らは戦力という点だけで見れば信用できる。」



「本隊長聞こえます〜?」

「どうした?」

「本隊長も戦闘参加してもらってもいいですよね〜?今軽く司令と話しつけたんですけど。」

「構わない。あの10級をやればいいのだろう。」

 現在、麗奈は兼伍の治癒を終えた錦華隊隊員の宮城良将みやぎ よしまさの手によって回復中であった。兼伍は既に10級の元へ向かっていた。

「まあ、そうなりますかね〜。先に刃には連絡して近くのネメシスから倒すようには言っときました。」

「玲は?」

「一緒ですよ〜。」

「刃に死ぬ気で守れと言っておけ。」

「はいは〜い。」

 麗奈との通信を切る。キラリは相変わらずの麗奈のブラコンっぷりに呆れていた。

(そんな気にするほど玲君は弱くないと思うけどな〜。ま、いっか。それより私も仕事、仕事。)

 そう思い直しキラリは大型ネメシスへの砲撃を開始するのだった。



 玲は状況の激しい移り変わりに置いてかれそうになっていた。

「刃さん、このネメシスは相手の作戦とは関係ないですよね?」

「勿論だ。偶然、最悪なタイミングで裂け目が発生した。私はネメシスとの戦闘を開始するが君はどうする?まだ戻るという選択肢はある。君はまだ正式に隊員になった訳では無いし、ここは大人達に任せても問題ない。」

「いえ、一緒に戦います。」

 そう言い玲は能力を発動し姿を変える。

「よし、なら共に頑張ろう。ひとまず私達は9級ネメシスの討伐を目標に道中のネメシスを倒す。」

「了解です。」

 そう言い二人は速度を少し上げて進むのだったが、



「出番だ、”怒者アンガー”。あの男を殺せ。」

「ようやくか。待ちくたびれたぞ。」



 二人の目の前に新たな人型が降り立つ。顔には般若の仮面をつけ、その体は筋骨隆々のたくましい体をしていた。

「よお。」

「この気配、、10級!玲君、絶対に油断するなよ。」

「はい。ネメシス、貴様を悪と見なし正義の裁きを与える!」

 そう宣言し玲は髪と翼を白に染め使の姿に変貌させる。

「私に今生えてる両翼の天使の翼は悪意を向けている敵からの攻撃を全て防げます。後方支援は任せて下さい。」

「わかった。ではネメシス、この武藤刃が相手をしてやろう!」

「”怒者アンガー”だ。ネメシス呼びは腹が立つ。殴り殺してやろう!」





「あれー?なんか来たー?」

 ”享者ワンダー”の方へ兼伍は短剣を飛ばす。しかし、命中する前に直前で破裂する。

「よお、ろうぜ。」

「いいよー。私に勝てるかなー?」

影火滅デスト・ロイ

 ”享者ワンダー”と兼伍の間で爆発が巻き起こり、兼伍の姿が爆発による砂煙で隠れる。

「何か意味ある、これー?全然効かないけどー。」

「それは何よりだ。」

 兼伍は背後に現れ”享者ワンダー”に拳を叩き込む。

「痛ー。破裂しちゃえー、、、え?」

 振り返り能力打とうとするがそこに兼伍の姿はない。再び兼伍は裏を取り無防備な背中に蹴りを入れる。

「クソがっ。コソコソしてんじゃねぇ!!」

 ”享者ワンダー”は蹴られたことへの怒りで目を剥き、そう叫ぶ。

「急にキレるなよ。モテねぇぞ?」

「笑わせるわ。奈落不幸エンドレスアンハッピー

 兼伍は何か異変を感じ取り後ろへ退避する。

「ん?」

 兼伍の左腕にピエロのマークが光って付いていた。

「腕かー。ざんねんだねー。」

 そう言い終わると同時にマークが激しく点滅し次の瞬間、兼伍の左腕が弾き飛ぶ。

「さっき治してもらったばっかなんだがな。まあだがお前一人ならなんとかなりそうだ。九十九、だったか?」

 麗奈が戦場に到着する。

「また新しいオモチャが来た来た。それも女の子だなんてー。」

「あいつは強いのか?」

「まあまあ、ってとこだな。俺も久々に全力でやらせてもらうか。」

 そう言い残し兼伍は姿を消す。

「また、消えたー?」



 九条兼伍の能力は”影神ツクヨミ”という。その能力は自身のネメルギーを放出して爆発させることが出来る。それにより兼悟は特殊な物質を生成する。そして、兼悟はその物質への出入りが自由に出来る。そしてさらに、、、



 兼悟の体に周囲の全ての黒い粒子が集まり黒い靄がかかり始める。

「そういう感じねー。私も真面目にや~ろお。」

 ”享者ワンダー”はピエロの仮面を取り出しつける。

「草薙神剣、万能万鎖」

 麗奈も武器を産み出す。

「ふふふふ、愉しくなってきちゃったー。奈落不幸エンドレスアンハッピー!!」

「?」

「言い忘れてた。あれをくらうと体が破裂するみたいだぞ。」

「遅い、、」

麗奈の右足にマークが付き激しく点滅する。直後、右足が破裂する。麗奈は体勢が崩れ倒れ込む。

「またはずれだー。後なんで君にはマークが付かないのか、、げはっ。」

「仮面つけても強くなったんじゃねえのか。」

兼悟は笑いながらそう言い、意識が向いていない隙を狙って”享者ワンダー”を殴る。

「てめっ、、、」

喋らす暇も与えず兼悟は片腕で殴打を続ける。殴打の間を埋めるように麗奈も万能万鎖を操作し攻撃を行う。



「ぁぁ、”狂者クレイジー”?どうするのです?」

「”享者ワンダー”は調子に乗りすぎだ。最初から真面目に戦うか、後先考えずに破壊をしてくれれば良かったのだが。あれほど油断するなと言い聞かせたというのに。”哀者サデン”、助けに行ってきてくれ。私も大詰めの準備をすぐに始めるとする。」

「ぇぇ、わかりました。」



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「””本格的な戦いの始まり始まり””」

「ね。やっと”狂者クレイジー”が動いた。彼女は慎重すぎるんだよね。」

「””過ぎたるは及ばざるが如し””」

「その喋り方なんとかならないのかい?私も念のため行く準備しとこっかな。」

「””神君臨すべし””」

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「ぁぁ、”享者ワンダー”何と酷いことをされたのでしょうか。ぁぁ、可哀想に。今、助けますよ。」

「また10級か。」

裂け目から新たな人型が降り立つ。悲しい顔をした仮面をつけており体の所々に角が生えている。

(大智の野郎の言う通り、今回はネメシスが何かしらの目的を持って動いてるようだな。じゃなきゃ、タイミングが不自然すぎる。)

「〜大粒の涙がポロリ〜」

上空から大量の岩が降り注ぐ。

「仕留めきれなかったか。」

「よくもやったな、テメエ。私の顔を傷つけやがって。もう調子には乗らない。絶対に殺す!!」

「ぁぁ、我々の目的のためとはいえ殺さなければならないなど。何と悲しいことであろうか。」

「九十九お前戦えそうか。」

「援護ぐらいなら。お前は私の盾にでもなっとけ。」

「ふっ、この俺に盾になれ、か。贅沢なやつだ。わかったからちゃんと働けよ。」

「ああ。」



二人が戦っている最中、

「刃さん!刃さん!大丈夫ですか!?」

倒れ込み意識を失いかけている刃に玲が声をかけ続ける。

「大したことなかったな。無駄に時間かけやがって。」


玲と刃の戦闘が始まった時まで時間は遡る。

























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