第7章:突然の告白
『本当にあの時はダメかと思ったよ。』茜は昔話に少し含み笑いを浮かべながら、浩一郎のほうを見た。『それは本当に大変でしたね。林巡査は・・・犯人はその後どうなったんですか?』浩一郎は当然の興味として質問してみた。
『もちろん警察はクビになって何か月か服役したみたい。事件が事件だから接近禁止命令も出て、今日までアイツに会うことはなかったよ。』茜はいつものあっけらかんとした表情で、昼食の伝票を持ちながら言った。
『あ、割り勘で。』浩一郎は急いでそう言った。『たまにはいいよ。奢ってあげるよ。』茜は愛想の悪い店員を呼び止めてお会計を済ませた。浩一郎は一つだけ気になったことを言いにくそうに茜に尋ねた。『例の彼氏さん・・・智一さんとはその後どうなったんですか?連絡はされたんですか?』聞いちゃ悪かったかなと思いつつも浩一郎は聞かないわけにいかなかった。
『いや、それからめっきり。まぁ、蕎麦ばっかり連れていかれても困るしね・・・』明るく話す茜だったがどこか寂しそうな眼をしているのを浩一郎は見逃さなかった。『茜さん、こんなタイミングでどうかと思うんですが・・・僕と・・・お付き合いしてもらえませんか?』浩一郎は雑踏の中でもしっかりと聞こえる声で茜を呼び止めた。
『え!?えっ!?冗談でしょ?』茜の返答は当然にも思われた。ただ、振り返った茜が見たのは真剣な表情で顔を赤らめた浩一郎の姿だった。『いや、僕、茜さんは前からすごい先輩だなって思ってましたし、美人だし、男勝りなところもとても素敵だなって思ってました!好きです!付き合ってください!お願いします!!!』
突然の中華街での告白に茜は動揺したが、浩一郎のまっすぐな目を見て了承した。『ほんとですか?やったー!』浩一郎は初めて契約が取れた時以上に喜んでガッツポーズを見せた。『じゃあ、今週末浩一郎君のウチに行くね!蕎麦以外でお願いね!』茜はまた急ぎ足で歩きながら言った。『え、僕の家ですか?実家ですよ?』浩一郎は尋ねた。
『だって、私の家はさっき話した通り、ある意味”曰くつき”だからさ。』まぁ、確かに色々なことがあったことを考えると、茜が言うことも無理はないなと浩一郎は感じた。こうして、キャリアウーマンの茜を射止めた浩一郎は午後の営業現場に向かい、茜の駅の掲示板に纏わる思い出したくない話は終わった。
・・・はずだった・・・・
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