二十五、秘術
──まただ。以前はこの夢をよく見ていた。
鬼火が揺れる暗闇の中に立っている夢。足元の水面に反射する自分は、妖魔王の姿に変わっていた。
妖しげな鬼火は
そして、『解放しろ』とでもいうように体内に巡る魔力が熱く疼くのだ。
「妖魔王! 悪いが、俺が器に転生した以上おまえを復活させる気はないぞ! 恨むならカミサマを恨むんだな!」
すると、全身を縛り付ける熱の膜はゆるゆると剥がれ落ちていき、呼吸が楽になっていく。
『"
この調子でいけば、
◇◇◇
夕暮れ時。
「師兄、いきなりですが師兄の術を俺に授けてくださいっ!」
昨夜は言い訳をあれこれ考えていたが、結局正直に
「秘術?」
突然のことに
「えーとあれです、"滅火の術"です! この術を教えていただきたいです!」
「滅火の術……私が父から受け継いだ仙術だ。なぜ知っている?」
「えーと……」
疑わしげな
(それは俺が作った術だから……とはいえないな)
「あーえーと、ちょっと小耳に挟んだというかなんというか……師兄お願い!! 俺に教えてください!!」
怪しむ
いつになく切実な
「そうだな……君に武器を譲った時も強い術を教えて欲しいと言っていた。金丹ができてからと思っていたが、君は特殊だからな」
そして、
(チョロい!! チョロすぎる!!!)
でもそれだけ、自分のことを信頼してくれているのだろう。それは嬉しい。
「
「いいね。
「火狼族……」
火狼族とは
「まずは君の霊気の流れに合わせて、私の霊気を送り込もう。目を瞑りなさい」
「はい」
すると、
原作でも同様にして、
これにより、治癒、仙術や知識の伝授など霊的な結び付きを作ることができるのである。
(リラックス、リラックス……)
しかし、十秒ほど経った後、
「……
「え?」
緊張してはいたが、強ばっていた自覚はない。むしろ、霊気を受け止められる体勢を整えていたつもりなのだが。
「ふむ……これも妖魔王の力なのだろうか。霊気の道が固く閉ざされている。他人の侵入を警戒しているのだろう」
「えっじゃあ俺は無理ってことですか!?」
「いや……他にも案はあるのだが……」
対して、どうしても伝授して貰いたい
「なんでも大丈夫です! お願いです!」
「……わかった。嫌だったら私を殴りなさい」
「なぐ……?」
そして
「へっ!?」
「静かに。もう一度目を閉じて」
突然、
(ん、んんん???)
何が起こっているのか分からないが、とりあえず指示通りに瞼を伏せる。
「っ!?」
その瞬間、
(あ、案ってそういうこと!?!?)
かぁっと顔に血が上り、思わず目を開けてしまいそうになる。だが、これは修行の一貫だという理性のおかげで
そこには、彼の修行の蓄積や仙術の知識などが凝縮されていた。
数十秒が経った後、
「これで、私の霊気に記憶された術の型や知識は、既に君の中に取り込まれたことになる。あとは他の術と同じように修行を積んでいけば、"滅火の術"を使いこなせるようになるだろう。ただし、この術は霊力の消耗が激しいから、一度の戦闘につき一回だけにしなさい」
「わ、わかりました。ありがとうございます……」
しかし、
(なんで
「すまない。こうすれば、直接霊気を送り込むことができると思ったんだ」
「あ……いえ! 助かりました! 全然嫌じゃなかったですしむしろありがたいというか……って何言ってんだ俺!」
ひとりで顔を赤くしたり青くしたりする
「師兄のおかげで寿命が伸びました! ありがとうございますっ!」
「ああ……」
(これで
前世から情事に縁がなかった
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