三、思案
せっかく理想の世界に目覚めたのだから、思う存分堪能したいし、華琉の恋路を見届けたい。
(……おそらく、この座学は
『桔梗仙郷伝』の三章辺りで、【
前提として、今この書院に座っている
そして、この座学は洞天仙会に向けてのもので、
もう既に、主人公・晏
(このまま
しかし、
何故なら、
(
また、
心の中では
(そんなの、愛おしくないわけないだろう……)
(なんて素晴らしい世界! 転生、ありがとう!)
数分の脳内会議を経て出た結論は、【洞天仙会の死亡イベントは絶対に発生させなければならないが、かといって自分も死にたくない】というものである。
方針が固まったので、今度は自分が死ぬのを防ぐ実際の方法を考えなければならない。
それは単純だ。奈落に落ちても妖魔に食われないほど強くなればいい。
(でもたしか、奈落の底にいる妖魔は、
もう泣きたい。方法は単純だが、全くもって簡単ではない。
これはなんという試練だろうか。
とはいえ、
(でも、それを実践できなければ話にならない……!)
この先に続く茨の道が想像され、
「今日はここまで。各々復習し、精神統一をして霊力を蓄えること」
そんな中、いつの間にか座学が終了したようで、
すると、それまで静かだった弟子たちが今日の座学について語り出し、書院が賑やかになる。
「
頭を使い過ぎて疲れ果てた
「食事を摂ったら、私の部屋に来なさい」
「はぁい」
食事の後だなんて、随分とお優しい男だ。
「
今度は
「はいはーい、わかったよ」
(
命にかえても
「本当に分かったのか……? まあいい。今夜は師兄にみっちり扱かれるんだな!」
「ちょ、
「はぁ? 着いてくるな! 俺は怒ってんだからな!」
「やだー」
そして、道中は口をきいてくれなかったが、宿舎に着くと「……明日はちゃんとやるんだぞ!」と言って部屋に入っていった。
「おおお……!!」
「柔らかいっ!」
ボロ屋敷の硬い床よりも何十倍も寝心地がいいとは、これはカミサマの恵みだろうか。柔らかい設定にしていてよかったと心底思う。
(どれどれ、俺の見てくれはどんなもんかな)
自分の容姿は、転生したと分かってからずっと気になっていたことだ。さて、自分が思い描いた
「おおっ! いいじゃないか!」
目の前に映る少年は、少し癖のある黒髪を上の方で結って、長めの後れ毛がふわりと左右に垂れている。
前世の
「髪は気に入ったし、超絶美少年だ……!」
そして、同じ名を与えたらか、なんとなく
歳は前世の
「けどちょっと腹黒そうだな、こいつ」
尻の跳ねたつり目がちな深紅の瞳。すうっと通っている鼻筋。桃色の上唇は薄く、下唇はややぷっくりとしている。
前世の俺はバカだ。この顔を引き立てモブに置いておくには勿体ないぞ。
「ああでも、一番は
(
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