Act.9 『追憶』…狩人の流儀 2
ぶり返した感情のまま暴れ狂い、そのまま力尽きたアタシはその場で意識を失う。義父さんは力尽きたアタシを背負い、その足で自分のアパートまでアタシを連れ帰ったそうだ。
翌日になり、目を覚ましたアタシに、彼は慣れない手つきで黙っておかゆを作ってくれたっけな…。
全く塩気の無い、味気ないおかゆではあったが、アタシの人生の中での初めての本当の『施し』に、涙をこぼしながらそれを掻き込んで食べたのを良く覚えている。
それからは自然と二人で暮らす様になり、互いに憎まれ口を言い合いながらも、それなりに楽しい生活をしていたっけな…一年ほどは。
最初は義父さんの『仕事』については深入りせずに、下手くそな家事を手伝うという形で自らの存在価値を見出していたが、たまに怪我をして、碌な応急処置もせずに帰ってくる彼に対して、次第に不安になって来たアタシは、彼に「仕事を手伝わせてくれ」と頼んだのだが、その夜は一発彼に殴られて、その後に口をきいてくれなかったが。
しつこく頼み込んでゆく内に、彼も根負けしたのか、「地獄に落ちる覚悟はあるのか?」と一言アタシに聞いて来た。アタシにしてみれば、この世界そのものが地獄そのものであり、義父さんを失う方が恐ろしいと思ったアタシは『生きる術を教えてくれ」と彼に返事をした。
「才能が無ければ直ぐにでも辞めろ…」
と言って彼は渋々了承し、アタシその日から
最初は狩りの商売道具の整備や、彼自身のサポートから始まり、幸か不幸か、要領がよかったアタシは、すぐにでも『現場』に引きずり出された。
ここまでくると当然だが、彼の厳しさはさらに増し、些細なミス一つでも烈火の如く叱られるなんて事はしょっちゅうだった。それと並行して、彼が独自に開発した『近接格闘術』や、『兵法や理論』、『哲学』までを徹底的に叩き込まれた。
…ひたすらに扱かれ、生傷と疲労が絶えない生活が3年ほど続き14歳になり、ようやく最低限の事が出来るようになって、ある程度
「…血穢。次の仕事はお前がこなしてみろ…一人前になったかどうかテストしてやる」
「本当!?これでやっとアタシも一人前として認められるんだね!義父さ…いでぇ!!」
「なんども言わせるな。…俺はお前の『親父』じゃない」
「…すいません。…『先生』」
最早いつもの様に彼の拳骨を頭に受けたアタシは患部を擦りながら訂正する。
彼は『これだけ』は許してくれなかった。社会や第三者に説明する際は面倒だからという理由で『義父』という肩書を甘んじて受け入れてはいたが、アタシが彼を『義父』と呼ぶと必ず、こうやって殴られて、訂正させられた。
肉親がおらず、家族の愛情を潜在的に求めていたアタシの甘えを許さない事が、年若い娘を血生臭い
アタシが
テストに関していうなら、細かく話す必要も無く。何も問題も無く無事に仕事を完遂した。義父さんに認めて貰う為に、かなり入念に準備したんだ。当然の結果だった。
討伐した『V』の屍骸を燃やしてる時、『義父さん』がアタシにある事を問うた。
「…血穢。もし仮に、この世で生きてはいけない命…存在するだけで災いを振りまく『哀れな』の
存在がいたとして、社会がお前に助けを乞うた時、お前は『狩人』としてどうする?」
「…?『V』のこと?討つよ当然。アタシは『狩人』だから」
アタシはこの時、自信を持って『狩人』として100点満点の義父さんが求めていた回答を出来たと思ってた。…けどアタシの思いとは裏腹に、彼のリアクションは酷く切なそうだった。
「これはまだ、お前にはまだ流石に早かったか…。だがとりあえずは…認めてやろう。…よくやった」
「…?」
アタシが今、この過去の出来事を思い出したのは、義父さんがあの時,アタシに問うたこの問題について事があるからだ…。彼は恐らく、『V』や『夜兎』の性質と秘密も全部知っていたのだろう。
…そしてアタシは『答え』を出さなければいけない。『夜兎』や『V』、そして『アタシ』自身の今後について。
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