Act.10 亀裂と入門
『
病院の先生曰く、『暗魔』は本来ならば、
『妖廼』に関しては、そもそもアタシが最小限の力で意識を奪っただけなので怪我はなく、一応との事で検査だけを済ませ、今日中に退院する予定だ。
アタシは『暗魔』と『妖廼』の面会時間になるまでの間、病院の庭にある喫煙BOXで
「あら?血穢。こんなところにいらしたのね」
「あぁ幽奈、久しぶり。最近全然連絡付かなかったけど、『元気』にしてたか?」
「えぇ…まぁ…」
幽奈はそう言って曖昧な返事をする。彼女の顔をよく見ると、目にうっすらとくまを作っており、頬も少し痩せこけるてる様に見えた。恐らく、『血蒼』の護衛任務での心労が祟っているのだろう。それに『昨夜の件』もあったのだ、『彼女』には心配をさせてばかりだ。
「『先生』から事のあらましは大体聞きましたが…。それより、『貴方』の方こそ大丈夫ですの?その…『左腕』は?」
『戮さん』と同じような『呪布具』を巻いてあるアタシの左腕を見ながら彼女が言う。アタシはこれ以上彼女に心配をかけないように、自身の左腕を肩でグルグルと回しながらちょっとだけ大げさに『問題無い』と彼女に伝えた。
「あぁ、これに関して全然大丈夫だ!痛みも全然無いしな!!ちょっと動かし辛くなっただけさ!」
「…。」
空元気で誤魔化そうとするアタシに対して、なんだか微妙そうな顔する『幽奈』をを見てられなくなり、アタシは話題を無理理やり変えようとする。
「それより幽奈、なんでここに?アタシや妖廼が大した怪我じゃないって『師匠』から聞いてたんだろ?」
「えぇ、それで『妖廼』を病院から連れて来いと『先生』が…。以前の事と、これからの事で話があるとかなんとか…」
「…以前の事って『妖廼』が『血蒼』を蹴ったって言ってたやつか?」
「まさにそれですわ…。ハァ、どうしてワタクシの周りの人間はこうも自分勝手な…」
その時の事を思い出したのか、幽奈は自身の頭を抱えながら項垂れる。…しまったな。話題を明るいものに変えようと思ったのにこれじゃあ本末転倒だ…。
普段であれば、軽口を言い合う感じで済む事なのだが状況が状況だ。
アタシは気まずくなったこの空気どうしたものかと考えている時、丁度『妖廼』が院の入り口から出てきて、こちらに向かって歩いてきた。その表情は…伺えない…。
いつものように笑顔でアタシ達に駆け寄って来ないあたり、少なくとも機嫌は良くないみたいだ。
アタシは『
「妖廼。昨日はごめん!お前の気持ちを考えないで勝手な…」
アタシが謝罪の言葉を伝える途中、『
「…。」
彼女は無言のまま、アタシの左肩に添えた手を強く押した。…『退いて』という拒絶の意思をはっきりと乗せながら…。
自分のせいではあるものの、傷ついたショックで立ち尽くすアタシの横を、彼女は『他人』の様に通り過ぎようとした…。
その有様を遠くで見ていた幽奈がすぐさまアタシ達に近づき、妖廼に指摘の言葉を告げた。
「妖廼。確かに今回の件は『血穢』が悪いですし、貴方の気持ちは十分に分かりますけれども。…誠意ある謝罪をする相手に対してその『態度』はどうかと思いますわよ」
妖廼は幽奈の言葉でさえも、そのまま無視をしてそのまま歩き去ってゆく。アタシはいたたまれない申し訳無さの気持ちでいっぱいになり、その場で俯いてしまう。
そんなアタシを見た幽奈が励ましの言葉をかけてくれる。…本当に彼女には世話になりっぱなしだ。
「ハァ、血穢…。こんな程度のよくある喧嘩で、一々へこたれてる場合ではありませんわよ?」
「どうせワタクシ達は、これからもこんな喧嘩よくするんですから…フフフ」
「幽奈。…ありがとう」
「それは『妖廼』に伝えませんとね♪…気は乗りませんが、ワタクシが貴方達の仲を取り持ってあげますから、とりあえず今は、『暗魔』さんの『お見舞い』に行きなさいな。…これから彼に『修行』を付けて貰うのでしょう?」
「あぁ、あの人に『修行』を付けて貰って、アタシはもっと強くならなくちゃならない。『
「…『血蒼』と『妖廼』の事はワタクシに任せなさい。…でも、この借りは高く付きますわよ?血穢」
気付けば、幽奈が少しは軽口が言えるくらいには元気なってる様に見えるが、多分これは彼女の空元気何だろう…。でもこれ以上互いの気分を落とす訳にもいかないし、アタシも
「へっ、じゃあ『
「フフフ、貴方にしては上出来な『案』ですわね♪…でしたら、全部片付けたあとそれでお茶にしましょうか。…『みんな』で♪」
「あぁ、そうだな」
「フフ、ではワタクシはもう行きますわね。…妖廼ちゃんが迷子になる前に。…それでは御機嫌よう、血穢」
「おう、またな幽奈!」
アタシの別れの言葉に、背を向けながら手をひらひら振って答えながら、妖廼を追っていった幽奈を見届けたあと、時計を確認したら丁度『暗魔』との面会時間だったのでアタシは彼の病室に向かう事にした。
…申し訳ないけど、二人の事は一旦頼んだぜ幽奈!アタシは早く『
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