Act.8 蛭蠱 血穢 4
「ちがう!!アタシは確かに聞いたんだ!『彼女たち』がアイツらを『殺セ』って。…確かに言ってたんだ!!」
「それは無いよチーちゃん…。『水子』達はまだ人間的な感情が育まれる前に死んでる。…特に『恨む』何て複雑な情緒を精霊の様な存在の『あの子』らが持ってるはずが無いヨ」
「…だったら…どうして?」
「…。」
師匠は少し黙ったあと、口調を真剣な物に変え、厳しくアタシに指摘する。
「…お前の燃える様な不遜な怒りが、お前を守護する『水子』達を『呪い』、変容させ、『復讐の道具』として利用したというところだろうな。…自身の言葉が他人の言葉のように聞こえる…。まるで『ジャンヌ・ダルク』だな」
そんな…。だったらアタシは、利用され死んでいった『彼女たち』を、さらに利用して使い潰そうとしていたってことか…。
…偉そうな事言っておいて、あの『ヴァレンタイン家』のやつらと一緒なんだ…。結局のとこアタシは、目的の為に何でも利用し、自身の罪を棚に上げ、公然と復讐を宣う。最低だ…。アタシは何のために今まで…。
アタシにとどめを刺すかの様に、師匠が一言付け加え、アタシに問う。
「『血穢』、確かに『復讐』の動機は理解できる。最愛の義父が殺されたんだ。殺意が湧くのは当然だろう。しかし、その義父が死んだ理由が、『彼ら』が、ただ自分に正直に生きていたいという『願い』の先にあると『
「…だが、あらゆる不条理を押し付けられた事実を理由に、現実そのものが納得の出来ないお前の心が『呼び水』となって、別の『復讐の火』が再燃した。…血穢、敢えて訊こう」
「お前、ホントは嬉しかったんじゃないのか?義父が殺されて、そして『憎しみ』をぶつける都合いい存在が現れて…。それに、お前は最初から、怒る為に怒っているんじゃ…」
気づいた時には、師匠の胸倉をつかんでいた。言葉にならない『叫び』が喉につっかえて、嗚咽が出るばかりだ。『否定』も、『言い訳』も出てこない。…事実だった。アタシは喜々として、『カジモド』殺した。自らの鬱憤を晴らす欲望の為に…。そしてアタシは、『カミラ』を見逃した…それも自身の真っ当さを主張する、自らの欲望の為だ。
めちゃくちゃなんだ。アタシの、何もかもが…。アタシはただ、憎しみをばら撒きたいだけなんだ…義父さんの死を使って。
「だったら゛…ア゛タシは、どうしたら良がったん゛ですか…!?黙ったまま゛、泣寝入り゛…すればよかっだんですか!!?『彼女ら゛』みたいに゛!?」
アタシは涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で、懇願するように『師匠』に問いかける。
「そうじゃない…。復讐そのものを私は否定しない。だが、心が乖離した状態のお前を放っては置けない。…先ずは認めなさい。『私は自身の心の都合でしか行動しない』と」
「…そして決めなさい。『彼ら』をどうするのかを。自らの心を納得させる為に復讐を果たすのか、それとも、哀れな『彼ら』を救済するのかを」
「…迷いがあるからブレるんだヨ?『行動』も、『剣筋』も…ネ」
「少なくとも君の『
「どうしたいノ?」
「…許せないです!許したくないです!!…でも、それと同じくらい…」
「『救ってあげたいんです』…。運命に翻弄される『彼ら』と、アタシの中の『彼女ら』を…」
「『血穢』…君は本当に優しいんだネ…。フフ…『幽奈』も『妖廼』も、君を見習えばいいのニ♪」
「『水子』達が君に憑いたのが納得出来たヨ♪あの娘では無理だネ。もう諦めてる…」
「…よしチーちゃん?これで
師匠は敢えてアタシに問う。アタシの言葉で、そして『意思』で聞くためだ。…もう涙は流さない。アタシは本当の覚悟を決めた!!
「鍛えなおして下さい!誰にも振り回されない強さを手に入れる為に!アタシの願いを叶える為に!!」
「フフフ…よろしイ。でももういろいろと時間が無いから、思いっきりびしばし
もう振り返らない、諦めもしない!この穢れ呪われた血の『因縁』を、『業』をアタシが『祓うんだ』!!
「さぁ!!話も終わったし、あの『美しい青い星』に帰ろっか♪」
師匠はそう言うと、再びアタシを彼女の影で包み、飛ぶ様にしてアタシ達の『美しい青い星』に帰還した。
気付いたらアタシはさっきまでいた荒れ果てた公園の中心に立っていた。『カミラ』の存在はそこには無く。警察のサイレンの音が、静かになった公園に響き渡る。
師匠…。今夜は本当にありがとうございます。…貴方が居なければ、アタシは本当にただの醜い化け物であったでしょう。でも、もうアタシは大丈夫です!!
…ですから見てて下さい!アタシが『夜兎』の全ての因縁に決着をつけて見せます!!
第二章 『流血倫理』~BLEEDiNG ETHiCS~ 完
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