Act.8 蛭蠱 血穢 3

「ン~…とりあえズ、ここに長居すると、場所変えよっカ♪」


 師匠がそう言うとアタシ達のいる『暗黒空間』が蠢き始め、突然重力の負荷が高くなる。…から見るに、恐らく『暗黒空間』ごと高くシャトルのように飛び上がったのであろう。

 そのままの勢いで大気圏も一気に超えたのか、アタシに強くかかっていた重力が突然ゼロになった。アタシの足は宙に浮き、勢い余ってその場で空転する。初めての無重力の感覚と『幻肢の中で空転する賽子DiCE』のように延々とクルクル回り、目を回し吐きそうになるアタシを見た師匠がケラケラと笑う。


 暫くそうやっていると、再び重力がアタシに影響を与え始めた。地上に居たころより少ない重力と師匠のから到着地は恐らく…。


「お疲レー、チーちゃん!『月』に到着で~ス♪」


 師匠がそういうと、『暗黒空間』が徐々に晴れはじめ、アタシの視界にはアタシ達の元居た『美しい青い星』が輝いて見えた。その星のあまりの美しさに感動を覚えたあたしは、呼吸を忘れ、見とれてしまう。その壮大なスケール感と神秘性のおかげで、アタシの個人的な問題や、地上の問題のあれこれなどがとても小さく、しょうも無い物と感じるほどであった。


「どう?とっても綺麗でしょ?『』の星は♪」


「…『師匠』。貴方はやっぱり…」


「ご想像の通り、アタシは『人間』じゃないヨ?…遥か彼方、『外の宇宙』からやって来た『よそ者』ってとこかな?平たく言えバ♪」


「…チーちゃんに色々説明しようと思うと…ゴメンネ?ちょっと時間とるヨ」


「…。」


「『君達』からすると、もうだいぶ昔の話になるんだけどサ、私は昔、けどと非常に似ている場所で過ごしてたんダ…」


「その星にもちょうど『君達』と同じような『人間』と『文明』が息づいててね?面白そうだったから


「当時のアタシは、矮小ちいさなが全然わかんなくテ、『その星の人類』が知らなかった『知識』とか『術理』とか、『発明』なんかをプレゼントしてったら、急にどんどん『自滅』してっちゃってネ?…どうやったら上手くコミュニケーションとれるか思い悩んでさ、『アタシの事嫌いな人達』がアタシにを付けようとしてきて、させられちゃったんダ…」


「なんとか逃げおおせて身を隠したのが『この次元の星』だったんだけド、そん時にちょうど匿ってもらったのが君達の祖先の『血の女王MiNA THiSATO』と『夜兎』達だったんだよネ」


、色々と手厚くお世話して貰ったからすっかり彼らに、で当時の近隣諸国が『夜兎』の故郷を侵略しようとしてたから、でちゃちゃっとやっつけちゃったんヨ」


「それがとマズくってサー。『夜兎』の中で『私』を崇拝して世界を征服しようとする『過激派』が出て来ちゃってね。『夜兎』が勢力が完全に二分しちゃったんだヨ…」


「私が責任持って、しようかと思ったら『THiSATO』がって強情でさ…結局泥沼化して『内戦状態』にまで発展して、ただでさえ頭数の少ない民族だった『夜兎』が殆ど死んじゃったんだよネ…。あぁ!ちなみにこの時にアタシの扱う『術理』や『刀法』を『夜兎』がさせてったのが『百鬼葬死流』のになるヨ」


「…話を戻すけど、それで気が病んじゃった『THiSATO』が、自ら『服毒自殺』して『眠り姫』なっちゃってネ、『彼女の浄血』が無いとまともに生きれない『夜兎』は最初は彼女の遺骸からその血を拝領して何とか凌いでたんだけド…もう肉体が新たな『浄血』は出来ないし、すぐにしちゃうじゃん?…考えるまでも無ク」


「それで責任感じちゃってさ…つい『夜兎』に教えちゃったんだよネ…」


「…『人体複製』の外法とその『運用』の具体的方法についテ…」


 なるほど…。前の『血蒼』達の話と繋がって来たな。…ということはやっぱり…。


「師匠…じゃああの『』達は…」


「…チーちゃん。ホントは気づいてたんでしョ?あれは『蛭』じゃなくて『受精後一か月の胎児』の『水子』だっテ…」


 あぁ分かってさ!!…分かってたけど!!けどこんな…こんな事って…。


「実際に『複製』するにあたって、彼らのがそうさせるだろうネ…。『この段階なら、まだ魂は宿っていない』ト…」


 眩暈がする…。頭痛もだ…。…理屈はわかるさ、そもそもアタシ達は育てた家畜の肉を実際に喰っている…。でも何故だ?自身の周りに置き換わった瞬間、なんでこう、苦しく、悲しい…。


「…何で『彼女ら』はですか!?『血蒼』じゃなくて。…『浄血』があるのは彼女だ!」


「多分だけド、には君と違って『その器』が無いからだヨ。…消耗され、捨てられていった者達を憂うその優しい『心の器』ガ…」


「…それが良いか悪いかという話では無ク。ただ、『生者』か『死者』か、どっちに想いを馳せ、大切に思うかの違イ。でもとしてはネ?…チーちゃん。君に『夜兎』のノ。『血蒼』さんじゃなくテ」


 急にそんな事言われたって…。互いの言い分を聞けば、つまり結局誰もがってか…。クソっ…こんなの個人的な怒りで『復讐』を果たそうとしてるアタシが本当にみたいじゃないか…。

 項垂れて、頭抱える私に師匠は静かに続ける…。


「それと、ネ…心がしんどそうなところ、すごく言いづらいんだけどサ、…だから言っとくネ」








「…チーちゃん?『水子の霊』ってのは本来ネ…』


「…誰かをと思う事はあっても、誰かをって思ったりしないんだヨ?」
















「なん…だと…?」






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